ひきこもることすら許されない社会

 コロナ禍。今年に入り、ひきこもりに関する相談に変化が出てきました。

 これまでの相談の中心は、男性。年齢とすれば、30代~40代が多い状況がありました。それが、8050が大きく取り上げられるようになり、50代、60代の主に男性の相談も増えてきました。そして、昨年の10月頃から女性の相談が増えるようになり、今年。20代~30代の前半の男性の相談が増えてきました。

 これまでの相談と何が違うのか?これまでは、部屋に、家に籠り続ける本人をどう出すかという相談が家族から多く寄せられました。それが、今は家から追い出したい、追い出してしまった本人をどうしたら良いかという相談が家族から何件も立て続けに来るようになりました。

 70代、80代の親御さんは、家制度の影響もあり、家族で支えるという意識が強く(逆に外に家の状況を見せるのを嫌う)、最後まで家族がみるという考えから、親が支えられなくなった後の本人の生活をどうしていくのかということで、7040、8050といった言葉と共に社会問題化しました。

 10年度、今の50代、60代の親御さんが今の70代、80代の親御さんと同じような対応を取るかといえば、違うように感じます。

 50代、60代の親御さんの世代。子どもとの関係は「友達親子」に代表されるように、上の世代に比べ、関係が近く、親子の境界も曖昧な状況があります。上の世代に比べ、離婚している家庭も多く、一人親という場合も一般的になっています。上の世代のように、経済的にも支えることは難しく、7040、8050になる前に支えきれない状況が見られるようになります。

 コロナ禍の影響もあり、親の仕事も不安定になったこともあるのか、親が子どもへの援助を断ち、子どもを追い出したい、一人でやっていってもらわないと困ると相談に来る親御さんも増え、なかには援助を一方的に切り、住んでいるところを追い出され、路上に出されてしまった事例も出てきました。

 そのような変化に対して、既存の支援機関が対応できれば良いですが、既存の支援は家族がいること、家族の支えがあることが前提で行われているため、その前提がない本人に対して、何もできず、結果として支援機関に相談したけど、ダメだったと本人からSOSの連絡が来ることも多くなりました。

 ひきこもることすら許されない社会。日本も欧米のように、ひきこもりがホームレス化するのではないかと心配になります。

 就労か、今では居場所がひきこもり支援で言われていますが、それが家族がいること、居ることができるホームがあることを前提にしているように感じます。今、必要なのはホーム。ハウジングファーストが、ひきこもり支援に求められている。今年に入っての急激な変化を受け、そのことを改めて感じます。


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