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『品の正体』 第一講 品の鑑定

『品』の正体


 さて、今回から、『品』について、その『正体』のお話をして参ります。

 古今東西、世の中には実に様々な『品』があります。

 今回の『品』にまつわるこのシリーズでお伝えしたいことは、これら『品物』だけではなく、『品位』『品格』といった『物』以外の『品』を定義するときに必要な要素とは何かを検証していくことにあります。

 その『要素』が『品』の『正体』を解き明かすカギとなっているはずです。


 『品物』に込められた『品位』の裏には、一体どんな『正体』があるのでしょうか。


 それでは、第一講、今回は『鑑定』という立場から『品』の正体を見ていくことに致しましょう。

第一講 品の鑑定


 『鑑定』を、より一般的な言葉でいえば『品定め』になると思います。『品物』を定める。それに必要な要素とは何か。この辺りの定義から『品』定めを始めたいと思います。

 『品』を定めるには、それ相応の『目利き』というものがございます。


 なんでも鑑定団「お宝鑑定」の鑑定士、その肩書きには、鑑定ジャンルとして様々な領域があります。


 中島誠之助さんの焼き物・茶道具、北原照久さんのレトロ玩具をはじめ、その他、日本画、西洋画、彫刻、アンティーク、古文書、近代工芸、甲冑、古式銃、和時計、絡繰り細工、版画、楽器、カメラ、ハリウッド映画、着物、染め物、観賞石、化石、刀剣などなど。


 番組にはレギュラー鑑定士4名のほか、50~60人の鑑定士が名を連ねています。


 鑑定士は当然のことながら「品定め」に必要なスキルを身に付けていなければなりません。『品物』の鑑定ということのみに限定すれば当然のことでしょう。


 そして、自他ともにその『目利き』の鋭さを認められなければなりません。


 『品物』の場合は、ただ今ジャンルをご覧いただいたように、文化に根差す歴史、伝統、慣習への『価値付け』が「品定め」に関与するのは間違いないようです。


 簡単に言えば、『品定め』とは有形文化価値判断ということになるでしょう。


Ⅰ.無形文化の『鑑定』

 一方、『品位』や『品格』はどう鑑定していくか、それらは『品物』と異なる視点で判断する必要がでてきます。

 無形文化伝承による価値判断はどのように『鑑定』していくのでしょうか。

 文化的継承によって培われてきた形無き『品位』のようなもの、あるいは正当な形無きもへの『価値』基準を定めるには、どのような捉え方をしていくべきなのでしょうか。

 無形の『品』について、たとえば『無形文化財』のような、『財産』としての価値付けをどのように決定するのか、というのが、今回の『品』の正体シリーズ前半の見どころでもあります。

 そこで、『無形文化財』がどのような決定の基準であるかをみてみることに致しましょう。

文化財保護委員会告示第五十五号

重要無形文化財指定並びに保持者及び保持団体認定の基準

重要無形文化財の指定及び保持者の認定の基準を次のように定める。



昭和二十九年十二月二十五日

昭和五〇年一一月二〇日文部省告示第一五四号(行政機構の簡素化等のための総理府設置法等の一部を改正する法律(昭和四十三年法律第九十九号)附則第三項参照) 改正

第一 重要無形文化財の指定基準

〔芸能関係〕

一 音楽、舞踊、演劇その他の芸能のうち次の各号の一に該当するもの

(一) 芸術上特に価値の高いもの

(二) 芸能史上特に重要な地位を占めるも

(三) 芸術上価値が高く、又は芸能史上重要な地位を占め、かつ、地方的又は流派的特色が顕著なもの

二 前項の芸能の成立、構成上重要な要素をなす技法特に優秀なもの

〔工芸技術関係〕

陶芸、染織、漆芸、金工その他の工芸技術のうち次の各号の一に該当するもの

(一) 芸術上特に価値の高いもの

(二) 工芸史上特に重要な地位を占めるもの

(三) 芸術上価値が高く、又は工芸史上重要な地位を占め、かつ、地方的特色が顕著なもの

第二 重要無形文化財の保持者又は保持団体の認定基準

〔芸能関係〕

保持者
一 重要無形文化財に指定される芸能又は芸能の技法(以下単に「芸能又は技法」という。)を高度に体現できる者

二 芸能又は技法を正しく体得し、かつ、これに精通している

三 二人以上の者が一体となつて芸能又は技法を高度に体現している場合において、これらの者が構成している団体の構成員

保持団体
芸能又は技法の性格上個人的特色が薄く、かつ、当該芸能又は技法を保持する者が多数いる場合において、これらの者が主たる構成員となつている団体

〔工芸技術関係〕

保持者
一 重要無形文化財に指定される工芸技術(以下単に「工芸技術」という。)を高度に体得している者

二 工芸技術を正しく体得し、かつ、これに精通している

三 二人以上の者が共通の特色を有する工芸技術を高度に体得している場合において、これらの者が構成している団体の構成員

保持団体
工芸技術の性格上個人的特色が薄く、かつ、当該工芸技術を保持する者が多数いる場合において、これらの者が主たる構成員となつている団体

以上

 この辺りの『品』の定義も、やはり過去の歴史、伝統、慣習に裏打ちされた文化の流れを追っていく必要があるのでしょう。

 ご覧いただけるように、価値が高く重要な地位を占め、正しく体得し、高度に体現されたものという言葉が頻繁に出てきます。

 これらの価値地位体現体得という言葉の意味が、どのような要素から成り立っているのか、それについては法律的な文言からは伝わってきません。

 さらに、「高い」「高度」「重要」の度合いは何によって決定されるのか、それらの判断基準はどのような要因が関与しているのか。

 まずは、地位高度なども含めた価値基準について、そして、体現体得という言葉の意味合いについて、最後に「高い」「高度」などの形容詞の判断基準について検証する必要があります。

 しかし、そもそも、『品物』や『品位』を扱うジャンルとして無形文化有形文化という分け方がどうなのか、という問題もあります。

 基本的に価値とは、『品』の本質的な要素として『首尾一貫して普遍性がある』ということから考えると、このどちらにも関与するような分類をすることから、『本当の価値』が分かってくるはずです。

 ですから、無形文化、有形文化というジャンルの分け方の他に、次のような三つの分類を試みる必要があるのです。

Ⅱ.三つの側面

 『品の鑑定』には、三つの『側面』があり、さらに四つの基準となる『領域』があると考えています。

 まず、三つの側面からお話をいたしましょう。

一つ目は、最も分かり易い

『人(肉)の目』

のジャンルで『見えるもの・形あるモノ』『品』です。

二つ目は、

『知の目』

のジャンルで『見えにくい・形なきコト』『品』です。

三つ目は、

『心の目』

のジャンルで『見えにくい見えやすいに関係なく、形に影響されず、常に変化しないモノゴト』『品』です。

 文化の成り立ちとは基本的に、「モノ」「コト」、すなわち「モノゴト」が最終的な結果となり、様々な「もの=文化全体」が生み出されているといえるでしょう。

 特に、「モノ=有形文化に近い」はわかりやすいのですが、「コト=無形文化に近い」となると、その『品質』を決定するのは結構厄介になりがちです。

 結局のところ、その国の文化や、ある地域の仕来りや慣習などの異なる文化の素地を考慮して決定しなければならないということもあるでしょう。

 このようなことも踏まえて、ここでは、非常に簡単に「モノゴト」『品質』を解釈していく方法を考えてみたいと思います。

 「モノゴト」『品質』は、人の知恵と心によって成熟するものであると言えます。

 では、決定的にこの『品質』を定めることになる要素はいったい何でしょうか。

 世界のどこに行っても、変わらずに『品位』を保つために必要な最も大切な要素とは何でしょう?。

 それは、簡単なことなのですが、あらゆる場面で最も必要となるその要素とは、

『良心』

 に他なりません。

 世界中のどこでも、この『良心』最大の『品位』を保つために必要な普遍的ガイドではないでしょうか。

 では、『良心』を形作るものは何か、というところから、『品』の本質を考えていく必要があるでしょう。

 私たちは『品』という言葉の中に、すでにこの『良』という、文字を使っています。

 例えば『良品』というように、あるいはその逆で『不良品』という言葉もあります。

 まあ、『粗悪品』という言葉もありますが、これは、故意的に作られているような場合に使用する言葉です。

 私たちは『善悪』という熟語をよく用いますが、実は『善』の反対が『悪』ではありません。

 「モノゴト」を『善悪』として片付けると、大概の場合『悪』の根本を見落とし、自らが『悪』を生み出してしまうようなことになりかねません。

 このような二項対立的な発想ではなく、三項鼎立の考え方から「モノゴト」を発想していく必要があります。

 私が、『品』を決定する際に、三つのことを考えるように推奨するのには理由があります。

 『良品』と『不良品』を見分けるために、それをジャッジする立ち位置があるのです。それを知ることにより、さらに『品』の本質が見えてきます。

 つまり、『品』には、ステージステート、そしてレベルがあることを示しています。

(こころ)レベルで、
『品の水準』=『品位』

<あたま>ステートで、
『品の状態』=『品格』

[からだ]ステージで、
『品の段階』=『品質』

という『品』の法則があります。

これについては、また次回、第二講『品の法則』でお話を深めて参りましょう。

※このマガジン『品の正体』に連載されている他の記事はこちらから

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