何かやりづらいと思ったら爪がのびていた
毎日の生活で何か文章を作成するときに一番使うのはパソコンのキーボードである。
これを書くのにもパチパチと音を立てながら文章を紡いでいる。
ボクはガラケーでメールを打っていた世代なので、スマホのフリック入力とやらを使いこなせない。
いや、ちゃんと使いこなせている人もいるのだろうから、そう言い切るのもいかがなものかと思うが、ボク自身はフリック入力をしないので、使いこなせていない。
LINEでメッセージを作るときはスマホの画面とにらめっこしながら、ひらがなを数回押して文字を入力する。
今やガラケーはなくなってしまったが、文字入力の仕方だけは生きている。
まあ、今の若い子はそんな打ち方はしないのだろうから、そのうちこの文字入力も廃れていくのかもしれない。
なんだかスマホは文字入力がしづらい。
このやりづらさはなんなんだろう……。
仕方ないから音声入力にしてみたけど、これはこれで間違って音声を文字にしてしまうことがあるのでちょっと面倒だ。
基本的にはキーボードを使って入力したいのだけど、専用のキーボードは高くはないが決して安くもない買い物だ。
とりあえず家にいる時は、パソコンからメールを打つことにしている。
LINEも同じようにしている。
問題は外出している時である。
外出時はパソコンはおろかキーボードなどはない。
だからスマホから直接文字入力してメールなりLINEなりを打たなければならない。
ああ、面倒だ。
てゆうか、なんか今日は特にスマホで文字入力するのがやりづらいな。
ん?
なんだ。
この引っかかる感じは。
画面を指で軽くたたくとなんかカチカチという音がする。
時限爆弾?
そんなわけないか。
ふと右手を見る。
働けど
働けど
我が暮らし
楽にならざり
じっと手を見る
気分だけは石川啄木になったような気になりじっと右手を見る。
あ。
爪が伸びている……。
ガラケーの時代は多少爪が伸びようが文字入力に支障はなかった。
技術の進化は便利さと同時に、このような問題点を試練として人類に与えるのかもしれないな……
などとちょっとめんどくさいことを考えてみる。
いやいや。
よく考えてみれば画面を軽く叩く文字入力はもう古いのだ。
フリック入力を習得すれば、爪の長さなど気にすることもない。
う――――ん……
考え事をしだすと何かを叩き出す癖がある二階堂さんのようにスマホを軽く叩きながら考えてみる。
カチカチと小さな音が鳴る。
やっと慣れたのにまた新しいやり方を学ぶわけ?
今のやり方で支障ないならそれでよくない?
思えばガラケーでメールを打つのも当初めんどくさがっていたボクである。
もしかしたら当時もカチカチと爪が当たる小さな音を立てて携帯電話のボタンを押していたのかもしれない。
慣れというものは恐ろしいもので、今では紙にペンでメモをとるかのようにスマホで文字入力ができる。
フリック入力も慣れたらできるようになるのだろうか……。
でも今は爪を切ることにしよう。
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