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【犬噺#1】犬の「賢さ」ってなんだろう?

アホかわいい柴犬

 最近のTiktokでのお気に入りは、「散歩を全力拒否する柴犬」で投稿されていた一連の動画。
「散歩から帰るのを拒否」はたまに見かけるが、散歩に行くのがイヤで、飼い主さんが「散歩!」と呼び掛けたり、触ったりしたらウ~ッと唸ったり、顔だけダンボールに突っ込んで、「頭隠して・・・」状態になっている柴犬だ。

 実家で子どものときに飼っていた犬は散歩大好きで、私が学校から帰って散歩のために制服を着替える音を聞きつけては、大喜びしていた。
 だから散歩を嫌がる犬と、その子どものようなリアクションが面白かった。

 柴犬に限らずシベリアンハスキーなど、名犬よりもアホかわいい犬が見た目とのギャップもあってウケるようだ。

世界の賢い犬たち

  1994年にブリティッシュ・コロンビア大のスタンリー・コーエン(Stanley Coren)教授が出版した「犬の知性(The Intelligence of Dogs)2006改訂」に基づいた犬の血統別賢さランキングがよくとりあげられる(*1)。

 それによればランキングは、
 1位:ボーダーコリー
 2位:プードル
 3位:ジャーマンシェパード
 4位:ラブラドールレトリーバー
 我らが柴犬は、49位。
 
 確かに上位陣は顔つきも賢そう。でも本当にそうでしょうか?

「賢さ」の基準は牧羊犬としての適性?

 コーエンのテストは、コマンド(命令)の理解力や、覚えの速さを基準にしている。
 要するにこれは「賢さ」=「牧羊犬としての適性」という生活習慣をもった国のおっちゃんが考える賢い犬の基準にすぎない。
 ありがたく拝聴する必要はないと思う。

 欧米人が犬との係わりは、狩猟犬や愛玩犬としての起源をもつ。
 彼らの狩猟スタイルは、犬が群を作って獲物を探し、追い立て、主人が仕留めたあとに獲物を回収するというもの。

 ガンドッグ(猟犬)にはその性質によって役割分担があり、獲物を見つけるポインティング・ブリード(セッターなど)、獲物を追い立てるフラッシング・ドッグ(スパニエル、ハウンドなど)、そして撃ち落とした鳥を回収(レトリーブ)するレトリバーがいる。

 日本でも人気のゴールデン・レトリバーに代表されるレトリバーは、回収する(retrieve=レトリーブ)もの(retriever)という意味。
 主人が撃ち落とした鳥の落下地点を見定め、その位置を把握して、湿地などにもひるまず獲物を捕捉して回収してくる役割の犬だった。

 英国ではキツネ狩りがハントの主流だったので、小型のフォックステリアがキツネを探す頭脳労働担当で、追い立てるフックスハウンドは足が速いだけの賢くない犬、とのイメージを持たれがちだ。

 英国で行われていたスポーツとしての狩りは、ハンターが騎乗する馬に従う猟犬の群れ(パック)単位で行われた。
 猟の対象が鹿からキツネ、ウサギへと移行するにつれ、キツネ狩りのため足の速いフォックスハウンドや、ウサギ狩りに適した小型のビーグルが作出されてきた。

生活様式と共に変わる「賢さ」

 ワーキングドッグとして働く犬には、盲導犬など介助をするものや、麻薬探知などを行う警察犬がいる。
 最近では災害現場に駆けつけ、被害者を捜索する災害救助犬などがクローズアップされることも多い。

 人間ともっとも関わり合いの深い犬の好ましさ=賢さ、の基準は生活習慣によって移ろっていく。

 年頭に当たって今年以降の展望を考えれば、疫病に戦さ、いにしえならば災厄を祓うために改元すべし、となるような暗さに満ちている。
 こんな時代に、求められる犬の「賢さ」は「ユーモアをふりまく明るさ」であって、その基準から見れば柴犬は1位だと思うのですが、どうでしょうか?

(*1)Coren, Stanley (1995). The Intelligence of Dogs: A Guide To The Thoughts, Emotions, And Inner Lives Of Our Canine Companions. New York: Bantam Books. ISBN 0-553-37452-4.

#犬 #賢さ #柴犬 #ワーキングドッグ #介助犬 #災害救助犬

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