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【科学夜話#21】長寿遺伝子サーチュインを活性化させよう!

 わが家の長老猫、人間にして100歳のちびが元気になった秘訣のなかに、長寿遺伝子サーチュインに係わる、と(私が勝手に)考えていることがあります。
 サーチュイン(Sirtuin)とは長寿遺伝子または長生き遺伝子、抗老化遺伝子と呼ばれ、その活性化が長生きに繋がる遺伝子のこと。一度は耳にしたことがあるのでは?

 ぶどうに含まれるレスベラトロールが、サーチュインを活性化させます。
 しかし、「レスベラトロールが寿命を延ばすのではないか、と推測する科学者もいたが、そうした効果を示す臨床的な根拠はない(英語版Wikipediaより)」
 では効果はないのでしょうか? 長寿遺伝子の実際について、リポートします。

いらすとや より

猫も理解している「死」の概念

 ン十年前、初めて里親サイトを通じて、二匹の兄妹猫を譲渡してもらったときのこと。
 当時は、現在ほどウイルス病に関する知識が浸透していなかった。

 可哀想なことに、この二匹は猫白血病ウイルス(FeLV)に感染していた。
 今なら治療・予防法が進歩していて、致命的なハンデにはならないし、人に感染することもないので、ご安心を。

 しかし当時はそんなことを知るよしもなく、妹猫のほうは譲渡されてからすぐに発症してしまった。残念だが亡くなった妹猫の遺骸をダンボール箱に納め、その夜はなにもできないので安置しておいた。

 その夜、箱におもちゃを入れてやり、兄猫にも「最後だから、おまえも最後の別れをしておきなよ」と、連れて行こうとすると、ものすごく怖がって激しく抵抗したのだ。
 このとき私は、猫も「死」という概念を理解しており、怖れるのではないか、と思ったものだ。

 兄猫のほうは幸いにも発症せず、16年の天寿を全うしてくれた。

PublicDomainPicturesによるPixabayからの画像

「遺伝子を働かせる」ということ

 数年前バラエティ番組で、視聴者が「肥満遺伝子」を持っているかどうかを調べる、という企画があった。
「肥満遺伝子」や、ここで言う「長寿遺伝子」とは、特定の機能をもった遺伝子のなかで、その機能のある面を取りあげてつけた俗名に過ぎない。

「肥満遺伝子」と呼ばれるものはいくつかあるが、このときのは饑餓状態が続いたときに、通常は消化しない食物成分を消化できるようになる酵素遺伝子だった。

 この遺伝子をもっている、との検査結果だった女子高生が、ぎゃーと叫び「明日からダイエットしよ!」と宣言する。
 その子はスリムで、明らかに遺伝子は働いていない。
 ダイエットして人工的に饑餓状態を作れば、働いていなかったこの遺伝子が働きだして余剰の栄養を吸収する。

 ダイエットを止めた時点で、リバウンドするだろう。肥満遺伝子と呼ばれる所以だ。
 番組の流れから、だれかが不要なダイエットしちゃダメだよ、と注意するものと思っていたら、皆が笑い転げて終了した。

 特定の「遺伝子をもっている」ことと、「遺伝子が働く」ことは別である。我々がもっている遺伝子のほとんどは、休眠状態なのだ。

 長嶋、落合、野村と言った名選手の遺伝子を受け継いでいても、それを働かせなかった二世は、ぼんくらなのである。

イラストACより

サーチュインとは?

 サーチュイン遺伝子とは、サーチュインというタンパクを作る遺伝子のことで、人には7種類のサーチュイン蛋白がある。
 サーチュインは、人の遺伝子DNAを制御する働きがあり、遺伝子の修復を行って老化を防ぐ作用を行う。

 さらに老化やがんの原因とされる活性酸素を抑制したり、病原体ウイルスを撃退する免疫抗体の活性化など、さまざまな老化防止機能がある。
 身体機能だけでなく、神経細胞の喪失を防ぎ、脳の機能低下を防ぐ働きもある。

 まさに玉虫色の良いことづくめだが、こういう話は本当だろうか?
 
 サーチュイン遺伝子を活性化させるためには、カロリー制限をする方法がある。
 カロリー制限をして動物実験を行ったところ、ラットやアカゲザルで寿命が延び、加齢に伴う病気が抑制された。

 しかしカロリー制限して健康な体調を維持すれば、当然ながら健康寿命は延びるだろう。長寿化がサーチュイン遺伝子の活性化による「結果なのか原因なのか」は、判断しがたい。

 生物とは、極言すれば「DNAの保管箱」に過ぎない。
 サーチュイン遺伝子は、饑餓やカロリー制限によって活性化される。
 生物学的な意義を考えると、饑餓状態のように外部環境が悪いときは、生物個体を長生きさせておいて、次世代(子ども)DNAをできるだけ良い環境の時代に世に放つ。ということだろうか?

パブリックドメインQより

サーチュインを活性化させるには?

 猫でも「死」を怖がるように、死ぬのは怖いから長生きしたい。
 だからサーチュイン遺伝子を活性化させて、ご長寿になりたいがカロリー制限はいやだ。

 好きなだけ飲み食いして、サーチュイン遺伝子を活性化する方法はないのか? その期待に応えるように「レスベラトロール」が浮上した。
 レスベラトロールはブドウなどがもつポリフェノールで、サーチュイン遺伝子を活性化する。
 しかし、赤ワインでレスベラトロールを摂取すると、1日に100本飲まねばならない計算になる。
 逆に早死にしますね。

 ウチの長寿猫ちびは、子猫のころから好きなだけ飲み食いして、ぽっちゃり体形ながら20歳に至っている
 
 補酵素NMN(ニコチンアミドモノヌクレチド)は、サーチュイン遺伝子を活性化させ、実験動物の寿命を長くする。このように、酵素の働きを補完する補酵素と呼ばれる化合物は、サーチュイン遺伝子を活性化させる。

 ウチのちびは、子猫の頃から猫サプリとしての補酵素コエンザイムを摂っていた。むかしのサプリはフレーバー付けされていて、嫌う猫もいたがちびは貪欲だったから、平気で食べていたのだ。
 猫のコエンザイムと人のコエンザイムは化学構造がちがい、他種のコエンザイムを摂取しても効果はない。犬と猫は同じで、むかしは犬用にフレーバー付けされていたようだ。

 だからと言って、長寿に直結すると証明されるものではないから、お勧めはしない。
 サーチュイン遺伝子を活性化するためには、適度な運動とカロリー摂り過ぎに注意すること。補酵素コエンザイムを含む食物としての、イワシやサバなどの青魚、牛肉、豚肉、ナッツ類、鶏肉、しそなどを好き嫌いせずに食べる、ことなどが推奨される。

 月並みながら、むかしからの経験則は正しいようだ。

 サプリメントは、薬とちがって体内成分そのもの。だから何らかの原因でその成分が欠如したことで、良くない体の状態になったときに補給してあげれば、威力を発揮します。

 現代では、猫であれ人であれ食べ物の栄養管理が発達しており、偏食が過ぎない限りサプリが必須、ということはありません。
 私の場合、最初に譲渡された猫のウイルス病に気づかなくて、可哀想なことをした、と思っていたのでちびにはコエンザイムをあげていました。
 ちびが長生きしてくれたのは、それが直接の原因ではないでしょう。
 最初に引き取った保護猫も、賢かった妹猫は発症してしまい、アホだった兄猫は長命しました。

 ちびも能天気です。心労が少ないのが、人も猫も健康維持に一番かもしれません。

#長寿 #サーチュイン #長寿遺伝子 #レスベラトロール #コエンザイム

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