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雨にうたわれた文学、映画と音楽

文学や音楽、そして映画には《雨》は最高の舞台装置であり、場面転換のファクターとして数えきれない作品に登場する。前編でご紹介したように雨の情景は日本文化と深く結びついている。視点を広げて世界をみまわすと、やはり雨は文学、音楽や映画の装置としていろいろな役割を果たしている。とても全部はご紹介できないが、筆者が気になるそれぞれの分野の《雨》がキーファクターになっている作品をご一緒に楽しんでみたいと思う。


激しい南国の雨季…雨が舞台装置の重要な役割を果たす
サマセット・モーム「雨」


舞台は南洋のサモア群島。熱心な宣教師であるデイヴィッドソン牧師は、妻と共に任地へ向かう途中、伝染病の検疫のために島に停留することになった。医師のマクフェイル夫妻、そして自堕落な娼婦のミス・トンプソンも一緒である。島はちょうど雨季に当たり、太鼓を打つような激しい雨が屋根を叩き、滝のようなスコールが連日続く。デイヴィッドソン夫妻にとって、ミス・トンプソンの存在は我慢ならない。彼女は夜もお構いなく音楽をガンガン鳴らし、「商売」に精を出し、デイヴィッドソン夫妻に敵意に満ちた眼差しを投げかける。デイヴィッドソン牧師は、彼女を「教化」しようと熱意を燃やす。

ウィリアム・サマセット・モームの「雨」は、雨が物語全体にわたって重要な役割を果たす。まず、絶え間ない豪雨が物語の雰囲気を醸成している。雨の音や視界を遮るスコールが登場人物たちの心理的な緊張や不安を増幅させる。雨は浄化や刷新の象徴として知られているが、この物語ではむしろ登場人物たちの暗い感情や状況を際立たせる。さらに、雨の絶え間ない音と閉じ込められた状況が、登場人物たちの心理的な緊張を高めている。彼らは物理的にも精神的にも逃げ場のない状況に追い込まれ、雨がそれを強調する。

最後に、雨は登場人物たちの感情や行動の変化を際立たせる。特にミス・トンプソンの一時的な改心と再び堕落する様子が、雨の変わらないリズムと対比され、劇的に描かれているのである。「雨」は、自然現象としての雨を通じて人間の複雑な感情や葛藤を深く描き出す、モームの傑作である。


『言の葉の庭』: 雨の日の心の交流を描いた作品

新海誠監督のアニメーション映画『言の葉の庭』は、雨が特別な役割を果たしている。物語の始まりは雨の日に始まり、その雨が二人の運命を繋ぎ合わせた。主人公の秋月孝雄は、靴職人を目指す青年であり、雨の日には公園の東屋で靴のスケッチを描くことが日課だ。ある雨の日、そこには27歳の雪野百香里が現れる。彼女は雨の日になると、ビールとチョコレートを片手に静かに公園を訪れる謎めいた女性だ。

この特別な出会いが、二人の心を少しずつ通わせるきっかけとなった。雨音が周囲のざわめきを消し去り、二人が心を打ち明け合う場を作り出す。百香里は実は孝雄の学校の教師であり、職場での孤立やいじめに悩んでいた。しかし、その苦しみも雨の中で少しずつ解放されていく。

季節が移り変わる中、雨の日にだけ会う二人は互いに惹かれ合い、特別な絆で結ばれていく。しかし、百香里は新たな場所で新たな一歩を踏み出す決意をし、学校を辞めることを決断する。それぞれの未来が別れを告げる中、最後に二人はお互いの気持ちを確かめ合い、それぞれの道を歩み始める。

雨は『言の葉の庭』の物語の進行を深く象徴している。出会いのきっかけとして、心の交流の場として、そして変化と成長の象徴として、雨は登場人物たちの内面を豊かに描き出している。その静かな存在感が、二人の物語に深い感動を与えているのである。


繊細で深い情感こもったホセ・フェルシアーノの「雨」

ホセ・フェルシアーノの「雨」は、繊細で深い情感がこもった楽曲である。1986年に発表されたこの曲は、彼のアルバム『Me Encantas』に収められ、多くのファンに愛されてきた。歌詞は失恋や別れをテーマにし、雨が哀愁を象徴している。ギターリストとしても超一流のフェルシアーノ。その独創性ある歌声が、ラテンポップやランチェーラのスタイルで曲に深みを与えている。特にメキシコを中心にラテンアメリカ各地で人気を博し、彼の代表作として親しまれている楽曲である。

出展:Jose Feliciano[Rain] Live 1970 
YouTube作成者:Top100Guitarist
Listen to the pouring Rain Jose Feliciano - Live in Netherland May 1970, when his album Alive Alive - o! with this song, was nr 1 on the charts, Song was write by him and Hilda Feliciano, was top100 hit charts in many countries around the world, from Usa to Japan, from Australia to Spain, New Zealand, Canada, Sweden and Turkia where was nr.1 of the year!
1970年5月、オランダでのジョゼ・フェリシアーノのライブにて、「Listen to the Pouring Rain」が歌われた。この曲は彼のアルバム「Alive Alive - O!」とともにチャートで1位を獲得。作詞はジョゼ・フェリシアーノとヒルダ・フェリシアーノによって行われ、世界各国でトップ100のヒットチャートにランクインした。アメリカから日本、オーストラリアからスペイン、ニュージーランド、カナダ、スウェーデン、そしてトルコまで、特にトルコではその年のナンバーワンに輝いた。








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