『WORK・SHIFT ワークシフト』リンダ・グラットン,プレジデント社
一年以上前に就活を終えた友人に勧められ、買ったまま放置していたこの本を、今日やっと読んだ。
感想は、
「いろいろな意味で読むのが辛かったが、為になることも一部あった」。
が、長過ぎる。序章と1章を読んで、8章に飛んでも良いと思う。繰り返しが多いのと、具体的にどう働き方を「シフトしていくか」のハウツー的な部分は8章以降に厚いので、そこだけ読めば十分にこの本の主張はつかめるだろう。
「いろいろな意味で読むのが辛かった」というのは、基本的に自分がこの手の自己啓発本が嫌いだからと言うのが一番大きい。エビデンスに基づいているのか疑問の残る部分や、提示されているデータが不十分な印象を受ける箇所も多々見られた。また、そもそも本書を一貫する「未来を予測する」という点に対しての(なんともいえない)不信感があった。著者はうさんくさい会社の社長とかではなく、ロンドンビジネススクールの教授だし、パットナムやギデンズなどの社会学者の本や、心理学者の知見も引用されていて、自己啓発本の中では学術書に近い部分もあった方だと思うが…。
例えば、「都市化が進行する結果、故郷を離れ、知人が少なく、地域のコミュニティの一体感が乏しい都会で生活する人が増々増える。それが人々の孤独を生み出す大きな要因になる」(p112)という素朴すぎる(?)見解などなどにいちいち躓いていた。
本書の主張は、超簡略化すれば、以下の三点だと思う。
①生き残るための専門知識を身につけよう。
②人的ネットワークを意識的に作ろう。
③自分自身について理解しよう。(特に幸せの軸)
言われていることではないか…というのが私の率直な意見だった。
本書では、度々、「働き方の未来コンソーシアム」というロンドンビジネススクールでの受講者が書いた「2025年の労働者のある一日」というエッセーが紹介される。そのエッセーにわたしは割とウンザリした。この「働き方の未来コンソーシアム」は、いわゆる超有名なグローバルに展開する企業の幹部たちが参加した(p22)ものであるため、偏った、超優秀な人のみ当てはまるような未来予想図なのである。つまり、「こんな働き方ができる人、超一部なのでは???」という疑問で頭がいっぱいになった。
本書では、グローバル化や情報化が進展することで働き方の変化が起こること、そしてその変化に乗り遅れないようにすることの重要性が繰り返される。本書で示されているような働き方のシフトが本当に起こるとすれば、日本は相当その流れに遅れそうだと感じる一方で、そのような「ワーク・シフト」は実際どれほど妥当性があるものなのだろうか。本書では度々「グローバル化でますます世界中の人があなたの仕事を奪うようになる!」ために、上記に示した3つのシフトを行うことが推奨される。専門性や人的ネットワークの重要性が今後増すことは理解できるが、現在の仕事のどれだけの部分がジェネラリスト的で、専門的でないのか。(その部分は議論されていない)現在の日本の仕事の大部分がジェネラリスト的な仕事だとすると、それらの仕事は、すぐに「世界中のもっと優秀な誰か」に取って代わられるだろうか。他国の人材の方が低コストで雇えるなどではい限り、なかなか起こりえないのではないだろうか…。