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【GB400】イロイロあった夏の日

1999年の事なので、もう20年以上前の話。

その年の夏、
私は当時乗っていたGB400TTというバイクで、
東京から能登半島へ4泊5日のキャンプツーリングに出掛けたのです。


その4日目の事。
前日は輪島のキャンプ場に泊まり、
この日は早朝の輪島の朝市を覗いて出発。
休みはあと2日、今日は目的地を長野の小谷村のキャンプ場と決めて、
あとはただ走るだけ。

日本海沿いに新潟に向かう国道8号は、
交通量も多くまた流れも早く、疲労と眠気との戦い。
だるい、疲れた、眠りたい・・・。
たまらずコンビニで早めの昼食&休憩。

出発しようとヘルメットを被る。
すると、なんだろうメッチャ良い香り。

女性の香水の匂いかな?
誰かのイタズラなのか?
詳細は不明なれど、
満員電車でメッチャいけてるOLさんとおしくらまんじゅう。
ヘルメットの中はそんな状態。
とにかく、私の意識は一気に覚醒した!

富山から新潟へ。
道はまだ国道8号、信号待ちでふと目を前にやると、
前の車から小さい女の子がリヤのガラス越しに手を振ってくれた。
こっちも手を振り返す。
それで終わらなかった。
その子がずっと手を振ってくれてるから、
信号待ちの度、仮面ライダーの変身ポーズから、
ガオーの怪獣、招き猫。
運転席のお母さんにも笑われちゃったけど、
多分私が一番笑ってた。
体の疲れもどっか行っちゃった。

新潟から長野へ。
地図を頼りにキャンプ場を探すも、一体どこにあるのか?
果てしない山道を登りながら、通りすがりのおばちゃんに尋ねるも、
「あったっけなぁ?」という頼りない返事。
そのまま道を進んで行くと、ようやくたどり着く事が出来た。

先客は家族連れの一組が居るだけ。
ちょっと離れた所にテントを設営。

ここまでの道中に「奉納(ぶのう)温泉」という案内標識があり、
そこに行ってみることにする。
が、ここもかなりの山道。
人気も全く無くて、引き返そうかと思ったときに、
車とすれ違いちょっと勇気が湧いてきた。
そこはとっても渋い佇まいのまさに「秘湯」。
お風呂から上がって外に出ると、子供が竹とんぼで遊んでいた。
その光景がなんだか古い白黒写真を見ているようだった。
まるで昭和の30年ころに迷い込んだような気がした。

帰ろうとすると雨が。
目に入ったラーメン屋で食事を済ませ、
小さな酒屋で缶ビールを調達してキャンプ場へ。
先客の家族連れも既にテントの中。
私もテントの中でビール片手に今日の旅日記をしたため、
寝袋に入った。

・・・その青い夜の風や星
   すだれや魂を送る火や・・・

翌朝、水場で顔を洗っていると、
先客の家族連れの姿が見当たらない事に気が付く。
無論、テントも車もです。
まあ、私が寝ている間に出発した、としか思えないのですが、
まだ、朝の6時ですよ。
それに、寝てたとしてもテントを撤収したり、
車を動かしたりしたら、
静かなキャンプ場ですから、
多少なりとも音とか気配を感じたはず。
それが全く無かったのです。
なんだか腑に落ちない。
もしかして昨日私がみたのは幻?それとも・・・

雨は止んでいた。
風がざわざわ草を揺らす。
私はそそくさとキャンプ場を後にした。


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