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ソニーの経営企画部で3年半働いて学んだこと|オープンゼミ

みなさんこんにちは。立教大学経営学部で「国際経営論」を専門に学ぶ尾崎ゼミです。今回は、10/22(木)にゲストスピーカーを迎えて開催したオープンゼミの様子をお届けします。

予定が合わずに参加を断念された方や、ゼミの二次募集で尾崎ゼミをご検討いただいている方、将来のキャリアについて考えている方のお役に立てれば光栄です。

ゲストとしてお越しいただいたのは、ソニー株式会社の経営企画部でご活躍なさっている尾崎ゼミOB(17卒)の藤田直生さんです。ぜひ最後まで読んでください。

尾崎ゼミに入った経緯

少しイレギュラーですが、僕は2年の秋学期から尾崎ゼミに入りました。もともとラクそうなゼミを選んだのですが、あまり刺激が無く、2年の春は物足りなさを感じていました。

そんな中、真剣にゼミを選んだ友人たちは充実しているように見えました。尾崎ゼミの人と仲が良かったので話を聞くと、ゲーム理論についてのディスカッションなど面白そうなことをしていて羨ましく思いました。

そこで、所属していたゼミを辞め、夏休みに先生と連絡をとりました。それからオフィスで面接していただき、晴れて尾崎ゼミの一員になったのです。

尾崎ゼミに入ってからは、頭を使う機会が本当に多く、脳味噌が汗をかくような感じでした(笑) とはいえ課題が大量に出るわけではないですし、楽をしようと思えばいくらでも手抜きができます。

そのため尾崎ゼミを一言で表すなら「頑張れば本当に多くのことを学べるし、やる気がなければ何も得られないゼミ」ですね。

卒業後のキャリア

2017年に大学を卒業し、ソニー株式会社に入社しました。きっかけの一つは3年次のゼミ合宿で、シンガポールにあるソニーのアジア太平洋拠点を訪問したことです。

立教大学大学院の国際経営学コース(MIB)を修了したOGから、アジア圏でのマーケティングについてお話を伺い、面白そうな会社だと思いました。

ソニー株式会社とは

1946年に設立されたソニー株式会社は、ゲーム・音楽・映画・エレキ・半導体・金融など多角的に事業を展開し、1490社にのぼる子会社群を構成しています。

2019年度の売上高はおよそ8兆円で、その1/4をエレキ事業が占めています。しかし、営業利益に着目するとエレキ事業の構成比は10%まで落ち込みます。このことはエレキ事業の利益率の低さを物語っており、私も含めエレキ事業に携わる社員は危機感を募らせています。

またエリア別の構成比が最も高いのは日本で、アメリカ・欧州・中国・ASEAN諸国と続きます。しかし日本の構成比が底上げされた背景には、国内のみで展開している金融事業があり、現場の肌感覚ですが、中国とASEAN諸国の市場には数値以上のプレゼンスがあると思います。

上記の通り、世界を股にかけてビジネスを行っているため、職場環境もグローバルと思いきや、同僚は日本人ばかりで、僕自身驚きを感じました。もちろん海外拠点には外国人もいますが、ソニーはみなさんの想像以上に日本人が動かしている日本の会社です。

経営企画部の仕事

経営企画部の主な仕事は、研究開発 → 商品企画 → 商品設計 → 調達 → 製造 → 物流 → 販売 → サービスと連なるバリューチェーン全体の定量的なデータを管理することです。PLの数値や現場の声を参考に、さまざまな意思決定を行っています。

経営企画部で働くメリットは、企業活動全般を俯瞰できることです。反面、現場との接点が薄く、自社の事業に対する自己効力感のようなものは得にくいと思います。

僕はこれまでテレビ&ビデオ事業で商品企画から調達に、デジタルイメージング事業で販売に深く関わってきました。

テレビ&ビデオ 事業部

テレビ事業部では、国ごとにビジネスの採算をシミュレーションし、事業活動の方向性を決定していました。簡単に言えば、テレビをいくらで作って、いくらで売るのか考える仕事です。そこには様々な変数が絡んできます。

いくらで作るかということに関していえば、サプライヤーや受注数によって部品の単価は変わってきます。そのため、商品設計や蝶達のチームと連携し、必要な量の部品を最も安く確保できる方法を探っていくことが不可欠です。

それに対し、いくらで売るのかを決定する変数には顧客の嗜好や購買力、シーズナリティなどがあります。国によって文化も物価も商戦期も全く異なるので、そうした違いに細心の注意を払いながら価格戦略を策定します。

デジタルイメージング 販売会社

今年8月、国内の販売会社に異動し、デジタルイメージング事業の担当となりました。より顧客と近い場所でニーズを学ぶためです。

カメラの事業部から製品を取り寄せ、販売数やキャンペーン、プロモーションを決定するのですが、ここでも考慮すべき変数が数多く登場します。

競合のニコンやキヤノンが販売する製品や展開するキャンペーンによって市場の構図はガラっと変わりますし、身近な例だとアメトークの家電大好き芸人という企画に取り上げられて飛ぶように売れた製品もあります。

また同じ変数が製品によって全く異なる効果をもたらすこともあります。コロナ禍の外出自粛でカメラ市場が前年比の9割減まで落ち込みむ一方、テレビ市場は10万円給付の政策や、巣ごもり需要も相まって好調です。現在は、GoToトラベルに東京が追加されたことをうけ、カメラ市場も持ち直しつつあります。

ゼミでの学びとビジネスの交差点

Case1. ソニー・Samsung・LGの関係をゲームアプローチの視点で読み解く

ソニー・Samsung・LGの3社は共に世界的なテレビメーカーですが、そのビジネスモデルは全く異なります。サプライチェーンの垂直統合を進めるSamsung・LGに対し、ソニーの生産体制は水平分業型です。

具体例を出すと、テレビの製造原価に占める割合が一番大きい液晶パネルをソニーは自社生産していません。液晶パネル工場を持つSamsungとLGから調達しているのです。

コストの過半を占める部品を競合他社からの供給に依存する状況は、一見不利にも見えますが、3社を取り巻く環境は非常に複雑です。

液晶パネルを生産するには数百億円の初期投資が必要だと言われています。しかし液晶パネルの価格はダイナミックに変動するため、投資の回収には製品を安定的かつ継続的に受注してくれる取引先の存在が不可欠です。

したがって世界的なシェアの大きいソニーは競合であると同時に理想的な取引先でもあるのです。ここに3社の相互補完的な関係がみてとれます。

特に、今話題の有機ELパネルを製造できるのはLG1社だけです。LGはスケールメリットを働かせるため、ソニーとの取引に期待している訳ですが、ソニーのシェアがLGを上回ることもあります。

その場合、自社製品のシェア拡大に注力したくても、顧客であるソニーを優先せざるを得ないといったジレンマを抱えるケースも出てくる可能性があります。

Case2. 取引費用を下げるために部品を内製すべきか否か

製造業で常に議題となるのが「現在外部調達している部品を内製すべきか否か」というトピックです。

部品の費用内訳が不透明で適正価格が分からないことや、サプライヤーが自動車産業のニーズを優先するため、部品を安定的に調達できないことなどに端を発しています

しかし部品の内製はハードルが高いことも事実です。外部調達より安く部品を作れなければなりませんし、設備投資に対するリターンも考慮する必要があります。また、品質管理なども自社で行わなければなりません。

こうしたハードルをふまえても、部品の内製が議題に挙がるほど費用内訳の不透明さ、すなわち測定費用にかかる問題は企業にとって深刻なものです。

Case3. ブラジルのテレビ市場に見る、制度とビジネスの甘くて苦い関係

僕は昨年、ソニーのテレビ事業がブラジルで抱える問題の原因を究明するため、現地に赴きました。

ブラジルのテレビ市場を見ると、圧倒的な強さを誇る競合Samsungに対し、ソニーは苦戦を強いられていました。その背景にあったのが、ブラジルの貿易政策・産業政策です。

ブラジルで製造業を展開するには、部品の現地調達比率に関するルールを守らなければなりません。加えて部品の輸入に関する管理システムも非常に厳格です。

そのためシェアの小さいソニーが、圧倒的なスケールメリットを活かすSamsungに対して不利であろうことは容易に想像できます。

また、その他にもブラジルでビジネスをするには様々なルールに従う必要があり、うまく利用できるかどうかで結果は大きく変わってきます。

つい先日記事になっていましたが、ソニーはブラジルのテレビ市場から撤退することを決めました。

3年半働いて大切だと思うこと

1.小さな点と大きな流れ

会社で一個人が任される業務というのは本当に小さな点にすぎません。ただそれらの仕事は、会社の伝統や長い歴史、そして未来に向けた戦略に由来しており、会社を取り巻く環境に左右されます。

そうした大きい流れを意識して働くのと、ただ言われたことを作業的にこなすのとでは、長期的に大きな差が生まれると思います。

2.素朴な疑問を追求する

先ほどの話にも通じますが、自分が抱いた素朴な疑問とまっすぐ向き合うことはとても大切です。ニュースで良く話題になる例を出すと、みなさんも南極の氷河が急速に溶けていることはご存知だと思います。

この情報を額面通りに解釈しても「だから何?」という結論しか導けません。しかし、なぜ氷河が溶けているのか、氷河が溶けると何が起こるのかといった疑問を持ち、そこから発想を飛ばすことで数多くの洞察を得られるのです。

幸いなことに尾崎ゼミでは、「何故」と向き合うトレーニングを沢山させられます。これを面倒くさがらず真面目にやると、社会人になった時スタートダッシュを決められると思うのでぜひ頑張ってください。

3.ちょっとの生意気さ

会社に入ったら、自分の父親より歳上の人たちとも同僚になります。そんな中、年配の人々にびくびくしていたら身動きが取れません。

ソニーのような歴史の長い会社には形骸化した慣習がつきものですが、それに黙って従うのではなく、おかしいと声をあげられる勇敢さ、見方によっては生意気さが会社を良くしていくことにつながると思います。 

文:橋本世央

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