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『採用内々定』も軽視しないで(その2)

しかし、それに対して私は次のように考えます。労働契約の締結は「申込みと承諾の意思表示の合致があれば、(書面でなく)口頭によるものでも可能」であり(しかも、本件使用者は『書面』まで学生に交付している)、そこに「内々定」と「内定」の双方いずれも、学生を採用するとの使用者による承諾の意思表示であることに相違ありません。

したがって、使用者による内々定の取消しが認められるには、内定取消しの場合と同様に「客観的・合理的理由」ならびに「(社会通念上の)相当性」が―使用者側に―求められることになります。
ゆえに、この両要件を充足しなければ、使用者による当該内々定取消しは違法・無効にならざるを得ないといえましょう。そうでなければ、学生の将来にとって重要な意義を有する就職活動が不安定なものになりかねないからです。

また、仮に労働契約の成立が認められない事案であっても、使用者が学生に対して採用取消しの事情を十分に説明せず、その経過も学生からして信頼を毀損するような態様での使用者による内々定取消し行為には、学生からする期待権侵害や使用者の契約締結上の過失といった信義則違反(民法1条2項、労契法3条4項)あるいは、権利濫用法理(民法1条3項、労契法3条5項)※②でもって、使用者への民事上の損害賠償が認められるべきです。

※②数字で処理しにくいケースで、使用者の行き過ぎをチェック。

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プロフィール

及川 勝洋(オイカワ ショウヨウ)
『地域連携プラットフォーム』に勤務の傍ら、某大学の研究所に所属。
複数の国家資格を有し、また『府省共通研究開発管理システム(e-Rad)』に登録され、研究者番号を有する研究者でもある。