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Impression【成長を支援するということ③・思いやりのコーチング】

ただ傾聴するだけではなく「言葉」を駆使し、対話をして、時には助言も行い、責任あるサポートを実施する。
そして、相手のインスピレーションを誘発する。
そんな「感情の伝染」による共鳴状態をつくること。
それが、良いコーチの「Standard」とも言えそうです。

とした前回はこちら。

今回の三回目からは、いよいよ「思いやりのコーチング」本丸に入っていきます。

☆コーチ自身の「勇気」が問われるということ

あるプロジェクトの案件の時に、事あるごとに僕に絡んでくるコーチがいました。その人の主張の一つに、

「金を払っている会社がクライアントなんだから、コーチとして会社が望む結果を出すべきだ」

という主旨がありました。
これは個人の主張、考え方なので、僕は基本的に無視していました。そもそもですが、会社の「目的」はどのように提示され、どのように「解釈」されるのか? このコンセンサス(共有)を自己流で行われても困るというものです。

本書ではこのようなコーチの態度を【誘導型】という言葉で規定してます。実際、このコーチの方は本書で指摘している通りに、自身の経験や専門性に基づいて相手が何をするべきか、指導するべきかをコーチと認識し、そのように行動していました。

そして、初回こそその「改善」による効果が主張されましたが、期間の中で段々と成果が行き詰まっていき、クライアントから変化が生まれなくなっていきました。そうなんです。本書でもエビデンスとして書かれていますが、こうしたアプローチによる行動変容は6割、7割が失敗に終わってしまうのです。

本件でも僕が心理的安全性の構築を丁寧に行い、時間を使うこと対し、プロジェクトリーダーは最初こそ「他の方と差がついてしまうかも」というフィードバックをしていましたが、2か月もたつと「あの人のチームが行き詰っているのはなぜだろうか?」と僕に相談をするような状態になっていました。
 
これがまさに「誘導型」と「思いやり」による進捗の違いだなと感じています。

そう。
 
会社が想像する以上の答えを出せるのは、この「思いやり」のコーチングなのです。
 
その為には、何よりもコーチ自身が「勇気」を持ってこのアプローチを実践していく必要があります。ここにこられている方には、ぜひこの「勇気」を持って実践をしてもらえればうれしいです! 応援しています!

というわけで、ここからは本書における「思いやりのコーチング」における5つの発見へのアプローチを見ていくとしましょう。

☆5つのディスカバリーとは?

本書では5つのディスカバリーとして
 
1・理想の自分
2・現在の自分
3・学習アジェンダ
4・新しい行動の実験と実践
5・共鳴する関係と社会的アイデンティティ・グループ

を提示しています。ただ、ここで僕がコーチとして日本の方々と関わる際には、2番の現在の自分から始めることが圧倒的に多いということは伝えておきたいと思います。

日本の教育システムにおいては、学ぶ者にとって指導者がとても攻撃的で、否定的な態度をとることが幼少期から続いてしまうからです。この結果として、私たち日本人は「理想」「夢」といった物事を語ることをとても苦手としてしまいます。「現実」「目先の結果」を出すことに一杯一杯になってしまい、こうした意識が「誘導型」のコーチングを生み出す温床になっているのかもしれませんね。

ただ、いずれの順番にしても重要なことは違い(Gap)を可視化するということです。

今、現在の私。
これからこうありたい、こうなりたいという私。

この両者の違いを可視化、言語化し、脳に認識させることが欠かせません。
そしてそのためにコーチは、無意識化に沈んでいる未来像を引き上げてくるために、様々なアプローチをしていくことになるわけです。

欧米の方々にはこうした「理想」を描き、表現する脳の中の回路が出来ているケースが多いので、直球で「あなたの理想は?」と聞いたらすぐに何かを伝えてくれることも多いでしょう。

しかし、日本ではそうはいかないことが圧倒的です。
なぜなら、幼少期からこうした回路をつくってこなかったことがむしろ圧倒的ですし、それ以上に否定され、トラウマのようになってしまっているケースすら少なくないからです。

ですので、こうした「理想」にアプローチをしていくうえでは丁寧に、本当に小さなステップから始めていく必要があるわけです。ない回路を要求すれば、相手は自己防衛反応を示すしかありません。結果、その場をしのぐ為の「嘘」や実現可能な何かを「出来ないふりをして」語ってきたりもします。

そんな回避を目的としたその場しのぎの何かが出てくるのはクライアントにもコーチにも不幸なことです。ましてやお金を出している会社が望んでいることなのか?ということは改めて客観視する必要があるでしょう。

*というところで、続きます。
実践の部分も含めて次回に向かいます!


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