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大人の遠足を楽しんできました。群馬県立館林美術館『大森暁生展』を堪能した夏の一日。


2024年の9月頭、現在の私は一応フリーランスのコーチという肩書はつけることができるものの、あくまで一応であって、実質的な活動量や気持ちとしては「何もしていない人」です。

この8月は体調がいまいちだったこともあり、東京に引き籠る毎日だったのですが、「動きたい」という気持ちがむくむくと育っていました。9月になって朝晩ようやく涼しさを感じるようになって、重い腰を上げる気になりました。

というわけで、つい昨日行ってきました群馬県立美術館へのお出かけについて、ここに記録を残しておきたいと思います。また行きたいと思う場所だったので。備忘録として。



美術館に行くのは好きです。東京に住んでいるメリットを生かして、都内にある美術館にはできるだけ行くようにしています。美術館にずらりと並んでいる様々な展覧会のチラシを眺めるのも好きです。館林美術館を知ったのは、どこかで手に取ったチラシからでした。


霊気を彫り出す彫刻家
大森暁生展


ああ、この猫さんに触ってみたい、と思うような木彫りの作品が目に入ってきました。猫じゃなくてクーガーだったのですが。太めの手足と、木彫りなのにもっふりとした毛並みを感じる胴体と、鋭い眼光が気になりました。

作家さんの大森暁生さんのことは存じ上げなかったのですが、チラシの裏に載っていた他の作品もとても魅力的で、これは行ってみなくちゃという気になりました。

群馬県館林市に向かうのは、初めてのことです。ちょっと遠いだろうなと思いつつ調べて見ると、地下鉄の東京メトロと東武線が繋がった路線上に館林駅があることが分かりました。館林美術館はそこからバスに乗って辿り着くことができます。

大人の遠足だな、と思いながら行ってみることにしました。


整然とした自然の中に佇む美術館


新宿近くの自宅から館林美術館に辿り着くまで、だいたい2時間半から3時間といった感じでした。検索するといくつかの行き方が出てきますが、私は一番安いルートを選択しました。日比谷線経由で久喜駅まで出て、そこから東武線に乗るルートです。接続がスムーズでした。

館林駅から美術館までは、多々良巡回線バスに乗って向かうつもりでしたが、結局タクシーを使いました。館林駅に辿り着いたタイミングが悪かったのか、次の巡回バスが来るまで40分待つ必要があり、さらに館林駅から美術館まで30分かかることが分かったからです。

タクシーだと所要時間は10分弱で、1600円でした。200円の巡回バスに比べると割高ですが、1時間ちょっと時間の節約ができたので、まあ良しとしました。


美術館正面
水に囲まれた建物


辿り着いてみると、広い広い芝生と水に囲まれた建物が美術館でした。美術館自体も広々しているのが傍目から分かり、建物に入る前から感動しました。

この日の関東地方は久々の晴れでした。日差しも強く、眩しくて、気温も上がり、暑かった。外に長く居るのは厳しい日でした。外の雰囲気を堪能するのはそこそこに、美術館の中に駆け込みました。



美術館の建物中に入った途端、生き返るような涼しさでした。そして、とても静か。広い広いロビーにはあまり人はおらず、平日に来て良かったなと思ってしまいました。

直ぐに受付の方が親切に声を掛けてくれました。一般の大人料金が820円だったかな。安いですよね。都内の美術館の入館料は、軒並み2000円越えなのに。大森暁生展のチケットを購入すれば、館内の展示全てを見ることができるようでした。


展示室へ向かう途中


美術館の中から眺める自然の景色も素晴らしかったです。展示室へ向かう途中の廊下を歩いているだけでも、目に飛び込んでくる景色に圧倒され、癒されます。ああ、来てよかったなあ。展示を見る前からそう思いました。




そして、いざ「大森暁生展」の展示会場へ。

そこには、彼らが待っていました。彼ら、と呼ぶ以外に適当な言い回しが思い浮かばない彼らが、静かに待っていました。


カラスの舟
エレファント
森神
クーガー


息をひそめて、彼らを見て回りました。とりあえず一周。

まあ、美術館なので当然ではありますが、静かなのです。私も足音を立てないように、息をひそめて、そっと静かに見て回りました。

彼らは置かれた、というより、そこに佇んでいる、という気配がありました。そういう気配だなと思う、ということは、チラシにあった「霊気」という言葉につられたのかもしれません。


不思議な展示空間
みんな静かに、そこに佇んでいる


まずは一周。

ささっと見て回りました。ひとつひとつ眺めるのではなく、ああ、いるね、ここにいるね、と何か確認して回るような心持ちでした。

あっという間にまた展示室の外に出て、美術館と自然が融合した景色を見てほっとしました。展示室にはない現実感がありました。


芝刈りしたばかりの芝生


美術館に到着したのがお昼前だったのですが、実はお腹が空いてきたのです。まあ、2時間半の旅路でしたからね。展示室は再入場が可能だったので、作品たちとはまたあとでゆっくり対峙することにして、とりあえずランチにしようとレストランに向かいました。

美術館にあるレストランって重要ですよね。雰囲気がいいと嬉しいですよね。ランチパスタを美味しく頂きました。エネルギーもしっかりチャージできました。


館林産ブランド「百年小麦」のパスタ





腹ごしらえをしたら、美術館周りを少し散策しました。・・・が、かなり暑くって早々に引き上げてしまいました。そうだ、群馬県って暑いのでした。

美術館の中に引き上げる前に、別館の「彫刻家のアトリエ」に立ち寄りました。館林美術館はフランスの彫刻家であるフランソワ・ポンポン(ああ、なんて可愛い名前なんだ!)の作品がそのコレクションのメインとしているそうで、この「彫刻家のアトリエ」は、ポンポンのアトリエを再現した建物です。


ヨーロッパの田舎へワープした気分


本館のメイン展示室にあるポンポンのコレクションは、残念ながら撮影できませんでした。もちろん見るだけでも良かったのですが、撮影したいというより、触ってみたいという気持ちを抑えるのが大変でした。

どの作品も動物がモチーフとなっており、大理石やブロンズで、とてもなめらかに仕上がっているんです。見た目通りになめらかなのか、冷たいのだろうか、触り心地を試してみたくて、つい手を伸ばしそうになりました。

別館の「彫刻家のアトリエ」には、作品のレプリカがあり、これには触ることができました。写真撮影も許可されていたのに、触るのに夢中でうっかり忘れてきてしまいました。アヒルの触り心地が気持ち良かった。




さて、再び「大森暁生展」の展示室に戻りました。

展示室に佇む彼ら、作品たちは、相変わらず静かにそこにいましたが、ところどころにある大森さんによる言葉のメッセージが、実はなかなかのボリュームの音量をもって主張していました。(実際には音は出てないです。)

私が無意識に写真を撮っていた言葉たちを載せておきますね。


大事なことはその職に就くという覚悟。
不安を他人の基準に合わせる必要はない
彫刻家という生業を通して、
日々が充実し、自尊心が保て、
そして人間関係が豊かになること。






そして改めて、ひとつひとつの作品と対峙してみました。今度はゆっくり、足を止めて、ひとつひとつ、見て回りました。



嘴とアシが鋭い
テーブルとお魚
元は棘は刺さってなかったのね
トルソの作品も多かった
お猿
金のキツネ
鏡を利用した作品
鏡に映り込んだクーガー


昨日は平日だったせいか、来館人数はかなり少なかったのだと思います。ゆっくり過ごすことができて良かったです。他の方も同じように感じておられるのだろうなと思います。展示室ではお互いある程度の距離を保ちながら、それぞれ作品鑑賞をしていました。

そんな中で、一番人が多く、長く、足を止めていたコーナーがありました。熊本県の動物愛護施設の写真と、その活動を取材した大森さんの言葉と、その施設の犬と猫たちの作品です。

他の作品と違い、ここの子たちからは温かみを感じました。実在している誰かの生き写しであることが分かる作品でした。この子は今どうしているのだろう、元気だろうか、幸せだろうか、泣いていないだろうか。見て回る人達がそんなことを考えているのが分かるようでした。


早くエリザベスカーラー取れるといいね
目が鋭いねえ、よしよしと声を掛けたくなった
思わず手を伸ばして撫でてしまいそうになった





さて、たっぷり作品たちを時間を過ごして満足しました。展示室からロビーに戻ってみると、ちょうど巡回バスの時間が近づいていました。14時近くだったと思います。

14時って早い気がするけど、順調に行っても東京に帰り着くのは夕方近くになるので、名残惜しいけど、そこで引き上げることにしました。

もう少しゆっくりしたいと思える空間でした。



ロビーから眺める外の景色


またいつか、気になる企画展の開催があったら行きたいなと思います。夏もいいけど、秋や冬はどうなんでしょう。春も気になりますね。自然の中にある美術館だから、四季折々色んな姿を見ることができるのだろうな。


睡蓮かな
秋空ですねえ


帰りの巡回バスは館林駅まで10分程度でした。巡回ルートを通るから、行きと帰りとでは所要時間が異なるのですね。ICカードを使おうとしたら、現金のみだったので要注意です。

館林駅の周辺は、日清製粉の製粉ミュージアムとか、正田醤油のお店がありました。美智子様のご実家に縁のある地ですね。電車の時間もあったので、駅周辺の散策はできませんでした。今度また機会があるかな。

14時頃に美術館を発って、自宅近くの駅まで辿り着いたのが17時になろうという頃でした。正味3時間。帰りの方が長かったですね。くたびれました。でも、大人の遠足を満喫したという思いでいっぱいでした。夏の終わりのイベントでした。

もう少し涼しくなって、秋をしっかり感じられるようになったら、今度は神奈川にある美術館に行くつもりです。秋の大人の遠足、これから楽しみです。


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