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だから弱いままなんだよ6:スポーツ科学の限界

今回はスポーツ科学やエビデンス”だけ”を
信奉する人に”だから上手くいかないんだよ

”つまり、だからサポートしている
アスリート達のポテンシャルを
最大限引き出せないんだよ


という事を書いていきます。

またまた挑発的なブログなので
そういう事が無理な方は
また別のブログをどうぞ。

一つはっきりさせたいのは
”エビデンスは大事!”という事です。
エビデンスは必要です。ですが、
エビデンスはツールの一つ
でしかない!という事です。

ここを間違えると”エビデンス”に
ないからやらない
見向きもしない
挙句の果てには他人をバカにする。
こんなおかしなことが始まります。

いや、エビデンスがなくても
自分なりに行動して
結果を出さないといけないのが
プロフェッショナルでしょ?

そんな事を言ったら
科学的エビデンスに乏しい
ラクロスやスカッシュでは
結果が残せません。

2023年の世界大会では
ラクロス男子日本代表は
支配的なパフォーマンスで
世界を驚かせました。

でも、ラクロスのエビデンスは
本当に少ないです。


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数字の向こう側:スポーツ科学と医学研究をより深く見る

優れたものを追求する中で、
スポーツ科学と医学の分野は
絶えず進化しており、

最新の研究とエビデンスを得るために
絶え間ない探求が続けられています。
この科学と医学への探求が持つ意図は
高尚なものです。

体の調子が悪くなり、
医療機関に行った時に
メディカルスタッフの知識が
'70や’80年代で止まっていたら
どうするでしょうか?

やはり専門家にはアップデートされた
知識が要求されます。

(原理原則はもちろん変わりません。
自分もつい最近に1965年の論文からヒントを
得ました。但しアップデートは
し続けないといけませんね。)

しばしばイノベーションと
科学的エビデンスの誤用は
紙一重の部分があります。
(コンディショニングといった
和製英語みたいなもんですね。)

特にWinter(2008)と
Higginson and Munafò(2015)による
スポーツ科学と医学の研究への批判は、

科学的「エビデンス」のみへの依存が、
その妥当性のシステム上、
そして個人での精査なしに
引き起こされる問題と落とし穴に
光を照らしています。

ポイント:
本当にその”エビデンス”は
”エビデンス”として
成立しているのか?

https://stand.fm/episodes/660e9544d8ff77eb87059eef

「有意」という用語の誤用と乱用

研究結果に「有意」という言葉が
しばしば現れますが、
多くの人がこれを表面的に
受け取っています。

しかし、Winter (2008) がいうように、
統計的文脈における有意性は、
実際の応用や現場で活用できる
というわけではありません。

そして、パフォーマンス向上に
役立つというエビデンスがあることを
宣伝文句として使っている
スポーツドリンクに関して

精査したHeneghan et al., (2012)も
そのことが言及されています。

https://x.com/coach_saki/status/1775749946056364463


この区別は、単に人間のパフォーマンスと
健康を理解するだけでなく、
この知識を実際にアスリートのケアと
結果を真に向上させる方法で
適用することを最終目標とする
スポーツ科学と医学において、重要です。

実際に研究では
”有意な結果がでた”という風に
出たとしてもEffect Size (d)が
書かれていないことも多いです。

もちろん研究の内容によって
書かれていないことも
あるのかも知れませんが

”有意”だけどどれくらいの
効果があったのか?
という事が書かれていなければ
判断のしようがありません。

ポイント:
”有意”だけが
リサーチを見る際に
必要な事ではない!


サンプルサイズが少ない研究のジレンマ

このエビデンスに関して問題は
さらに複雑で、

Higginson & Munafò(2015)が
科学的エコシステムを検証した所、
新規性とサンプルサイズの少ない研究の公開に
偏っていることを明らかにしています。

多くの研究は、
しばしば小さなサンプルサイズと
探索的な性質が特徴であり、
誤解を招く結果、再現性がない、
または完全に偽の発見であるという
結論に結びつく結果となっています。

これは、確かな科学的証拠に基づいて
日々の業務をしていこうとする
プラクティショナーたちにとっては
非常に問題です。

但しエリートアスリート達のデータに
なればサンプルサイズが少ないのは
当たり前になります。

他の高価なものと同じで
数が少ないから希少な価値があります。
考えても見てください
皆がみんなプロ野球に行ける
Jリーグに行ける
MLBに行けるとなったら
それに価値はないでしょう?

なのでエリートアスリートのデータは
それだけで意味があるものなんですが
やはりそれだけでは科学は
進んでいきません。

https://stand.fm/episodes/658ab90b0a7ebc6975d37ac8

ポイント:
n数を気にしつつ
リサーチの対象が
誰であるのか?を
常に意識する。

データを超えた人間

しばしば提示される
「科学的エビデンス」は、
多くの場合緻密に作り上げられた
実験と統計分析の産物です。

しかし、このエビデンスが
人間の多様性、複雑さ、
そして予測不可能性を考慮せずに
実際の現場へ使われたら
どうなるでしょうか?

「有意」の誤用に関する議論と、
研究のエコシステムへの洞察は、
両方とも研究内のシステム的問題に触れています。

しかし、私たちがサービスを提供することを
目指しているアスリート、患者、
および人口のデータと
その主題との間のギャップを
間接的に浮き彫りにしています。

エビデンスに基づく実践の原則の再確認

これらの議論の中心には、
エビデンスに基づく医学(EBM)
および実践の原則からの
基本的な逸脱があります。

EBMは、研究を実践に
統合することだけではなく、
その証拠の品質、適用可能性、
および目の前にいつ患者や
アスリートへの関連性を
慎重に、批判的に評価していく
プロセス、もしくは考え方です。

この繊細なアプローチは、
しばしば「有意」とラベル付けされた
発見を急いで
実装することによって、
我々が持つ専門知識と患者の価値を
犠牲にして影を潜めているようです。

人間要素を無視することの落とし穴

「科学的エビデンス」にのみ依存し、
人間要素を考慮しないことは、
いくつかの落とし穴につながります:

  • 過度の一般化:狭く均質なサンプルサイズからの知見を、個々の違いを認めずに多様なグループに適用することは、効果的でない、または不適切な介入につながる可能性があります。


  • パーソナライズの欠如:エビデンスに基づく実践は、研究、臨床の専門知識、および患者が持つ価値のバランスに基づいています。人間要素を無視することは、患者の価値観、目標、および状況を無視することを意味し、これらはパーソナライズされたケアにとって重要です。

  • 信頼の低下:科学的エビデンスに基づく介入が人間要素を考慮しない場合、アスリート達からの信頼の低下につながる可能性があり、これは実践者と患者の関係を損なう可能性があります。(これは自分も経験済みです。)

不確かな世界を進んでいく為には

これらの課題に対処し、
EBMの原則に再び合致するために、
現場の人間とリサーチャーには
いくつかのステップが推奨されます:

  • 批判的評価スキル:現場が研究を批判的に評価するスキルを持ち、方法論的に健全な研究と実装に限界を持つ研究とを区別する必要があります。

  • 再現性の価値:科学コミュニティは、異なる集団と設定で新規の発見の妥当性を検証するために不可欠な、複製研究により大きな重点を置く必要があります。

  • 継続的なアップデート:現場では、研究方法論と統計学を熟知し提示されたエビデンスの品質を識別する能力を高めるべきです。

人間要素の統合

スポーツ科学と医学の分野を
本当に前進させるためには、
研究と実践のすべてのステップに
人間要素を統合することが不可欠です:

  • ホリスティックアプローチ:研究の方法論的健全性を評価することを超えて、個々の人間の経験とニーズに対する知見の関連性と適用性を考慮することが重要です。

  • 人間が持つ複雑さとの対話:人間の健康とパフォーマンスの複雑さを認識し、受け入れること。これには、科学的証拠が何を伝えることができるか、そして臨床的直感と経験的知識がギャップを埋めることができる可能性がある事を認識する必要があります。


ポイント:

木と森を両方見る”目”を
養っていく。

参考文献


  1. Atkinson, G. and Nevill, A.M., 2001. Selected issues in the design and analysis of sport performance research. Journal of sports sciences, 19(10), pp.811-827.

  2. DiSilvestro, K.J., Tjoumakaris, F.P., Maltenfort, M.G., Spindler, K.P. and Freedman, K.B., 2016. Systematic reviews in sports medicine. The American Journal of Sports Medicine, 44(2), pp.533-538.

  3. Du Prel, J.B., Röhrig, B. and Blettner, M., 2009. Critical appraisal of scientific articles: part 1 of a series on evaluation of scientific publications. Deutsches Arzteblatt International, 106(7), p.100.

  4. Heneghan, C., Perera, R., Nunan, D., Mahtani, K. and Gill, P., 2012. Forty years of sports performance research and little insight gained. BMJ, 345.

  5. Higginson, A.D. and Munafò, M.R., 2016. Current incentives for scientists lead to underpowered studies with erroneous conclusions. PLoS Biology, 14(11), p.e2000995.

  6. Melnyk, B.M., Fineout-Overholt, E., Stillwell, S.B. and Williamson, K.M., 2010. Evidence-based practice: step by step: the seven steps of evidence-based practice. AJN The American Journal of Nursing, 110(1), pp.51-53.

  7. Skelly, A.C., Dettori, J.R. and Brodt, E.D., 2012. Assessing bias: the importance of considering confounding. Evidence-based spine-care journal, 3(01), pp.9-12.

  8. Welsh, A.H. and Knight, E.J., 2015. “Magnitude-based inference”: a statistical review. Medicine and science in sports and exercise, 47(4), p.874.

  9. Winter, E., 2008. Use and misuse of the term “significant”.

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