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組織と個人はその都度最善の選択をしていく時代に!

最近ニュース記事を読んでいると、リスキリングに、定年延長や役職定年廃止、整理解雇の基準緩和、ジョブ型雇用促進など人材や人事に関する改革の話題がますます増えているように思う。それだけ、急速に世の中が変わってきているということだろう。私が社会人になった90年代と比べると様変わりだ。

組織で働くことへの期待も、随分と変わって来ているのではないだろうか?

学業を一旦終えて就職し数年経つと、仕事にも慣れ、組織全体のことが徐々に分かってきて、大体の人は仕事に対する面白みが増してくるというのは、今も昔も変わらない。

職歴に従って大きな仕事を任されるようになってくると、仕事が自分の能力をどんどん拡張してくれているという実感が持てる一方で、これが本当に自分のやりたいことなのかという疑問が湧いてきたりもする。現場の仕事は楽しいが、将来、管理職になった時の自分が想像できないという若手の声もよく聞いた。

いま勤めている会社や組織にいれば、とりあえず収入の見通しはついて、家族みんなが安心して暮らしていけると思えていた。ファイナンスと家族のゴールはまずまず達成できそうと一応予想が立った。

ところが実際には、入社後10年も経つと、この組織の中で自分はどこまでやれるのかという組織人としての未来もなんとなく見えてきて、当初の見込み通りには行かない懸念も出てくる。そのうえ、その間に組織自体も社会環境の変化に合わせて変革を迫られるから、これまでと同じような経営を続けることが出来なくなり、働く側に影響する雇用形態の変更というのも起こり得るのが現実だ。

言ってみれば、入社時に感じた、「この会社に就職できたことで将来の安心を手に入れた」、というのは錯覚でしかなく、結局、確実に保証されたものなどなかったことに、後々、気づくのである。

だから、この歳になったから言えることなのかもしれないが、就職する時も、就職してからも、何か状況の変化が生じた時には、都度、その時に知りうる状況や条件を考慮して、職業上の最善の選択をしていくという姿勢がとても大事だと思う。じっとそのまま同じ場所に居続けるというのは得策とは思えないのだ。

その時の指針がコーチングでいうところのゴールである。

ここでいうゴールは、一度設定したら達成するまで固定しておくものではなくて、違和感を感じたり、新しいゴールが見つかれば都度更新すればよい。組織に入ってからのゴールは、組織に入る前のゴールが更新されていていいし、組織に入ってからも経験を積んで学んでいけばその都度更新していっていい。

組織に入る前に、はっきりとゴールと言えないまでもそれに近いものがあって、就職先を決めているはずだから、組織の向かう方向性(組織のゴールと言ってもよいかもしれない)と個人のゴールが何らかの形で関連しているのだと思う。ところが、入ってみると、事前に思っていたのと違っているということもあるかもしれないし、組織のゴールは自分と合っていても、組織から与えられた仕事は合っていないということもあるだろう。多くの人は、ピタッと両者がマッチングするのは難しいと思っているのではないか。

しかし、世の中も変わってきていて、視野を広げて考えてみれば、組織のゴールと個人のゴールのベクトルをうまく合わせて行けるようになりつつあると思う。

その理由について、少し説明してみよう。

いま会社は単に売り上げを伸ばして利益を上げるということだけではなく、さまざまなステークホルダーに配慮しなければならない。元々そうあるべきだと思うのだが、貧困状態からの経済的な発展を遂げていく中では、ずっと金銭的な利益が第一だった。

ところが、最近は気候変動が喧伝されるようになって、いまでは労働環境の改善といった昔からあるものから、単なる社会貢献に留まらず、多様性への配慮や地球規模での環境保全などへも取り組む姿勢を示していかないと、組織は社会的制裁を受けかねない状況である。

つまり、その組織の中心的な活動、いわゆる本業以外の領域について対応していかなければならず、したがって、一つひとつの領域を担当する人材を組織の内外に求める必要が出てきたということである。

働く側から考えれば、どんな組織で働いていても、本業以外の領域に関わる可能性が年々増していると言える。もしくは、本業の中に、多様性への配慮や地球環境保全などといった要素を加味して業務を行っていく場面が増えていくということだ。

もちろん組織によって、対応すべき一つひとつの領域についてきちんと課題が整理され、組織対応の準備が出来ているところもあれば、全くの手付かずで、これから一から対応を考えるというところもあるだろう。けれども、一つの組織が、より多種多様な領域への対応を求められているのだから、一つの組織に一つのゴールと考えていた時代と比較して、そこで働く一人ひとりのゴールとのマッチングの可能性は高くなっているのではないだろうか?

もしそうなら、一人ひとりが持つ職業、ファイナンス、家族、健康、趣味、生涯学習、社会貢献などの複数のゴールと、組織が対応すべき様々な領域の向かうべき方向性(もしくはゴール)とのすり合わせをしながら、人材が採用され、配置されていくようになっていくのだと思う。そして、配置後、この組織ではどうやら両者のベクトルが合いそうにないとなったら、その個人は外へ飛び出していくのだろう。


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