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セカンドキャリアはできれば現状の外側に

日本人は長生きと言われて久しいが、まだ当分の間は平均寿命は毎年伸び続けるそうだ。それもあって人生100年時代と言われるようになったのだろう。以前なら60才で定年退職して年金生活者となり悠々自適の生活を送れるサラリーマンがたくさんいたが、今は50才前後からセカンドキャリアを目指して準備して、できるだけ長く働き続けようとの風潮だ。

将来の年金財政のことも心配なので、それはそれで悪いことだとは思わない。けれどもセカンドキャリアの目指し方、もしくはマインドセットと言ったらよいのかもしれないが、少々気になることがある。

早い人だと45才くらいからセカンドキャリアを真剣に考え始めるらしいが、やはり50才を過ぎ、定年まで指折り数え出した頃に急にセカンドキャリアを検討し始める人が多いのではないだろうか。50才を過ぎてようやく一からセカンドキャリアを考えるのでは遅いと思うが、現実が眼前に突きつけられないとなかなか自分事として向き合えないというのは人の性分だから仕方ない。でも、長年親しんだ場所を飛び出して、セカンドキャリアという新たなステージに向かおうとする時に陥りがちな罠があることには注意が必要だ。

これまでの仕事の進め方や職場環境、そして人間関係や生活リズムなど、自分を取り巻く慣れ親しんできた一切合切が、セカンドキャリアへ踏み出そうと意思決定していくあなたの前向きな判断や態度を阻害することがある。古いコンフォートゾーンに留まりたいという無意識の作用が強烈に働くのだ。

就職した頃は60才定年できっぱり仕事を辞めて隠居生活に入ろうと思い描いていたのに、先が見え始めた頃になって、65才もしくは70才まで働いた方がいいですよ、とルール変更を突きつけられたのである。人生後半の計画が大きく狂ったと感じた人も多いのでないだろうか。退職後にそれまでやりたくても忙しくて出来なかった趣味などに時間を割いて、新しい人との出会いも経験したいなどという、若い頃に想像していた願望が先送りされることになったのである。頭を切り替えて、もう一度別のステージで働くのである。

すでに蓄えが十分で金銭的に余裕あり、別に60才を過ぎて働く必要が全くないならいい。また逆に金銭的に余裕がなく、お金をどうしても稼がないといけないという切迫した理由がある人は、働くモチベーションが高いので、ここでは問題としない。

気になるのは、金銭的にさほど余裕はないが深刻な状況ではなく、やりくりすれば何とか暮らしていける、でもセカンドキャリアで働き続けた方がやはり安心だという人である。お金を稼ぐ意志も薄く、かといってそれほど不安な状態でもない。なんとなく働くモチベーションが低そうに聞こえないだろうか?

そんな中途半端な気持ちでセカンドキャリアを目指して成功するだろうか?楽しく働けるだろうか?人の心はとてもクリエイティブに出来ていて、本心で望んでいない状況に対しては、それを創造的に回避するように無意識が働く。できれば仕事はやりたくないという無意識の心があるなら、当然うまくいくはずがない。もう少しお金を稼いだ方が安心という理由くらいではパフォーマンスは上がらず、きっと楽しくもない。人生の後半にそんな働き方をしてもったいなくはないか?

だからまず、楽しくて仕方がない、心から望むセカンドキャリアとはどんなキャリアなのかを見つける必要がある。金銭的には切羽詰まっていないなら、社会に役に立つ、何か大事な機能を提供できるような自分に合った仕事を探すのがよい。もし金銭的なことが一番心配なら、ファイナンスを重視してとにかく稼げる仕事を探す。そして、それらの仕事で達成したいことをゴールとして、ゴールを達成した時の自分の新しいコンフォートゾーンをリアルにイメージしてみるのである。

セカンドキャリアを挑戦的で心から楽しいものにしたいのなら、本当は現状の外側に「やりたいこと」を見つけた方がよい。けれども、年齢を考えて大きなリスクは取れないと考えるのは当然なので、多少の妥協は仕方がない。いずれにせよ、一度きりの人生、楽しくありたいものである。


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