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組織改革。忘れがちなマインドの使い方の変革

先日、知り合いのコーチとそれぞれの活動について話をする機会があった。

彼とはバックグラウンドは異なるものの、同じ頃にコーチとして活動し始めたという気軽さもあって、夕食を食べながら話をしようということになったのだ。

彼は大学で博士課程まで進んで心理学や認知科学を学んでおり、人の心に関する知識量が豊富であることから、私は彼がコーチングをどのように捉えているのかにとても興味があった。

一方、彼からすれば、私は長年ビジネスの世界で生きて来た人間であり、組織の中で繰り広げられるドラマの一主人公であり、観察者であった事から、話を聞いてみたい対象だったのかも知れない。

色々と話をする中で、やはり私は長く会社で働いていたので、組織やチームにコーチングを活かせる場面をあれやこれやと頭の中で思い出している自分に気が付いた。

いま改めて企業が置かれた環境を考えてみると、ますますデジタル化と通信の高速大容量化が進んで情報の流通速度が格段に上がり、一人ひとりが扱う情報量は膨大になって、それが組織に変革を迫っている。大量の情報の中から自らのビジネスに役立つデータを抽出し扱いやすいように加工して、いち早く商品やサービスに反映させる事ができた企業が生き残る。

そんな年々厳しくなるビジネス環境に対応するために、組織構造を変えてみたり、データサイエンスやプログラミングを学ぶなどの社員教育に力を入れたりして、なんとか競争力を高めようとしている。

でも、ひとつ重要な要素が欠けていないか?

組織内で働く人たちのマインドのことである。マインドが変わらなければ、組織改革も社員教育も期待通りの効果が得られない。

いくら経営幹部が、時には外部コンサルの助けを借りて、きらびやかなネーミングの改革案を作成し実行しようとしても、現場で働く社員のマインドが変わらず、上からの命令や指示に従うだけのHave-toの状態のままでは創造的回避が働いて、改革は骨抜きになるだろう。

だから、マインドの使い方をアップデートする必要があるのだ。

コーチング理論には、これまでに取り上げて来たコンフォートゾーンやスコトマ、さらにエフィカシーやブリーフシステムなど根本的な問題解決に応用できるコーチングの概念がいくつもある。

例えば、事業活動に甚大な影響が及ぶ問題に直面した時、経営幹部はIQを高く保ち、目の前の具体的な一つひとつの事象にばかりとらわれるのではなく、抽象度の高い思考で、顧客や協力会社、従業員やその他のステークホルダーの利害を全て考慮に入れた上で、何らかのディシジョンを下さなければならない。

またこの経営幹部、そして会社全体が、必ずこの難局を乗り切る事が出来るという高いエフィカシーを維持していなければならない。さらに自分には常にスコトマがあること、だから逆にスコトマの中にまだ知られていない解決策があるはずだと知っておくべきだろう。

一緒に問題解決に奔走する部下たちは、彼らの通常のコンフォートゾーンの外での作業を強いられており、パフォーマンスが下がってしまっているかも知れない。上司であるあなたは彼らのエフィカシーを上げるようサポートする事で、本来のパフォーマンスが戻ってくるよう働きかけができるだろう。

コーチングは本来コーチとクライアントの1対1で行われるもので、組織全体に直接働きかけするメソッドではない(コーポレート・コーチングという枠組みはある)。でも、組織の中で、特に経営幹部がコーチングを通じてマインドの使い方を習得すれば、組織のパフォーマンスを上げるのに役立つというのは理解されると思う。

そしてさらに、マインドの使い方を知った組織人には、家庭があり、自分が住む地域での生活があり、趣味や社会貢献での人との繋がりがあるのだから、日常のなかで自分と関わりを持つすべての人たちにポジティブな影響を与えることができるだろう。

こんな風にコーチングが組織の活性化はもちろんのこと、広く社会にも役立つと感じたことも、私がコーチになろうと思った理由のひとつである。

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