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自分らしさ、探索はほどほどに


あやふやな「自分らしさ」

生き方について自問したり仕事のキャリアについて考える時に、「自分らしく生きよう」「自分らしい仕事に就こう」「自分らしく働こう」などと言ったりします。

私は「自分らしさ」という言葉を用いて、自分の人生を考えた記憶がありません。だから、何が自分らしいのかと聞かれても、答えるのに窮してしまいます。

それでもあえて言うと、私がコーチングを学んでから「自分らしい」と思うのは、現状の外側のゴールに向かっている時です。ゴールに向かって自分の頭と体を使って、多少のアップダウンがあっても前進していると実感した時に自分らしいと感じます。

これでは「自分らしさ」の説明になっていませんが、とにかくゴールに向かって前進している状態そのものが「自分らしい」という感じです。

一般的には「自分らしさ」というのは、自分の長所や短所、話し方や雰囲気、そして考え方や価値観などの特徴を全体としてまとめたものを指しているように思います。でも、その特徴はどれを取っても固定的だとは思えません。

たとえば、長所や短所と言っても、場面によって長所と言われるものが短所になったり、短所と言われるものが長所になったりするでしょう。内向的で社交的ではない性質を短所として指摘されても、一人でじっくり練らなければならないアイディア創発の場面ではそれが長所として働いたりします。また、人の話をじっくり聞けるのも内向的な人に多いかもしれません。

話し方や雰囲気といった容態は、その時に好きな俳優やアニメのキャラクターの影響で変わりそうな感じがしますし、学生が社会人になっただけでもすっかり変わってしまうことがあります。

また、考え方や価値観も、たくさんのことを学び、その学びが深くなってくれば、ある時大きく転換すると言った話もよく聞きます。

それくらい「自分らしさ」というのはあやふやなものではないかと思います。

強み < 心からやりたい

よく仕事のキャリアに悩む20代の人がSNSで「強みを活かせる仕事を見つけたい!」と投稿しているのを見かけます。それはそれで悪いことだとは思いませんが、あまり「強み」に固執せず、好きなことややりたいことを見つけることの方に重点を置いてほしいと思うことがあります。

ここでいう「強み」も先ほどの「自分らしさ」に含まれていて、あやふやなものです。

それに、本人が「強み」と思っている事が、実際にはそれほど「強み」になっていないこともあります。多少、周りの人よりも上手にできるとか、得意だとか言っても、他の人が後から努力しても追いつけない程の差を付けられているのかというと、案外、そうでもないのです。

それに、そもそも「強み」と言っているものが、自分が好きでやりたくて続けて来たから身に付いた技術とかセンスなら、「強み」というのは「好き」の結果であるので、そういう意味でも「好き」「やりたい」の方に意識を向けてほしいのです。

ところで、なんとなくという程度に「好き」で、人より多少上手に出来る事が「強み」になっているからと言って、それを軸に仕事を探したらどうなるでしょう。仕事が見つかって何年か続ければ、あなたはその「強み」によって大きく飛躍できるでしょうか?なまじ「強み」としてしまった事で、なんとなくしか好きではない仕事に縛り付けられてしまった結果、逆に自分を苦しめることになったりしないでしょうか?

そうならないように、あくまで「心からやりたい」「誰に止められてもやりたい」を基準に、仕事も仕事以外も選んでほしいのです。

コーチングの知識をもとに「自分らしさ」を考える

ここでコーチングの知識をもとにもう少し踏み込んで「自分らしさ」について考えてみましょう。

コーチングでは、「自分らしさ」は自己イメージに近いのではないかと思います。自分で「私はこういう人間だ」と思っているイメージと、「周りの人は、私のことをこういう人間だと思っていると思う」というイメージです。「自分らしさ」と言った時は、どちらかといえば自己イメージのポジティブな側面に焦点を当てているように思います。

自己イメージとはあくまでイメージであって、あなたの全てを表しているわけではありません。生まれてから成長していく過程で自分自身が経験してきたことと、周囲の大人やメディアなどから受け取った情報を自分が受け入れることで形成されたイメージです。あなたの過去を投影したもので、未来の途轍もない可能性は反映されていません。

けれども、一旦自己イメージが形成されると、それに従って自分を演じるようになります。自己イメージが基準となって、そのイメージに合った振る舞いをするように自己調整機能(セルフレギュレーション)が働き、本来の能力を発揮する自由を奪ってしまいます。

そして、そんな風に長い間自己イメージ通りに演じ続けていると、あたかもそれが変えられない自分、すなわち「自分らしさ」だと思い込むことになります。

そもそも「自分」もあやふや

ところで、そもそも「自分」とは何でしょうか?それを考えるために、ここであなたのことを説明してみてください。たぶん、こんな風に説明することになるのではないでしょうか?

 私の名前は、〇〇です。
 私のお父さんは□□、お母さんは△△です。
 私は何年何月何日に何県で生まれました。
 大学は東京に出て、〇〇大学を卒業しました。
 趣味はサイクリングで、食べ物はステーキが大好物です
 ・・・

多分、どこまででも続けられますが、普通は説明する相手との関係性の中で、自分が大切だと思うことの中でこの辺りまでを伝えておけば十分だろうということを説明します。

でも結局、あなたのことを説明するのに直接的にあなたのことを説明していません。自分以外のもので自分にとって重要なものから説明しています。

このように自分を定義するとなると、なかなか上手にビシッといかないのです。

しかも、何とかツラツラと項目を挙げて自分を説明できたとしても、趣味や好きな食べ物などは年齢と共に変わったりしますし、そのほかの自分を説明するのに使った内容も簡単に変わってししまうことがあります。どこまでいっても、あやふやなままなのです。

役割や機能に目を向ける

とはいえ、自分という存在は確かにありますし、学校や会社など社会の中ではたくさんの人と多様な関係を持ち、大きい小さいはあっても何らかの役割を果たしているという事実はあります。

両親との関係で言えば子どもという役割ですし、学校にいけば学生として学ぶという役割です。社会人として働き始めれば、世の中に商品やサービスを提供する会社や組織の中で役割が与えられ、その役割に応じた機能を提供しすることで役に立っています。

こんな風に、「自分」を突き詰めて考えてもあやふやだけれども、他者や社会との関係性に目を向けると大事な役割や機能がある。そして、その一つひとつがあなたを様々に定義してくれることにもなるのです。

だから、「自分らしさ」を自分の内側に探索するのはほとほどにして、「やりたい」を基準にして、人の役に立つ役割や機能を探し出して、それを実践することにエネルギーを使ってほしいと思います。



自己イメージについては、以下の記事が参考になります。


苫米地式コーチングの重要なトピックスを取り上げた記事群をマガジンにまとめました。


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