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少年とパンク

「グッとくる一節集」第2弾は THE BLUE HEARTS の「NO NO NO」よりこの歌詞を紹介します。

戦闘機が買えるぐらいの はした金ならいらない
NO NO NO…
笑い飛ばせばいいさ

THE BLUE HEARTS 「NO NO NO」

ぼくは中高一貫のいわゆる進学校に通っていました。
そこでは中学に入学するとこんな話を聞かされます。

「1年浪人して大学に進学すると、浪人しなかった場合と比べて生涯賃金が1,000万円下がると言われている。だから君たちは現役で進学できるよう今からしっかりと勉強するように」

子どもから大人に変わろうとするサナギのような時期に、この話は夢も希望もないように感じられ、なかば絶望感さえも与えるものでした。
もちろん生きていく糧となるお金は尊く、それを得るための努力も尊い。でも、この話には決定的に何かが抜け落ちている

思春期、ぼくは「自分はどんな人間になれるのか?」ということに本気で悩んでいました。
お金持ちになりたい、安定した生活がしたいと望むことは自然で悪いことではないけれども、それだけでは満たされないものがあるんじゃないのか?
どんな人間になれば本当に幸せだと言えるんだろうか?
自分はこの社会の中で自分の幸せというものを見つけられるのだろうか?
そんなことを考えていました。

戦闘機が買えるぐらいのはした金ならいらない

当時のぼくの胸をこの一節は激しく揺さぶりました。
「戦闘機が買える金額」と言えば普通は誰もがうらやむような額です。
それをはした金だと言い捨てる。それよりも得たいものがあるという心意気を迷いなく突きつけるこの歌詞に感激した当時の少年は「大人になっても賢く生きることより楽しく生きることを選んでいいんだ」と思えました。


大人として社会人として、賢く正しく生きることはひとつの理想かもしれません。
でも、その理想だけでは語り切れないのがきっと人生です。
私たちが生涯をかけてでも得たいもの、本当に心から欲しているものは、きっとどんな大金を積んでも買うことができないもの。そんなことを思い出させてくれるこの歌がぼくは大好きです。