見出し画像

(2) 反社会団体対策

さて、前の投稿で町の治安や雰囲気について書きましたが、やはり治安維持の観点で大切なことは、反社会団体との繋がりをいかに絶つかということでしょう。
実際、かつてのラスベガスは、最初のカジノ付きホテルであるフラミンゴが反社会団体によって建設されて以来、マフィア達の重要な収入源となり、その運営や権利争いのため、数々の違法行為がまかり通る。まさに毒花の楽園だったわけです。

こうした状況の改善のため、ラスベガスのあるネバダ州では、100年にも及ぶ苛烈な戦いの結果、反社会勢力の排除を成し遂げました。その肝はなんといってもカジノ事業者、従業員、その他関係者に対する背面調査です。ネバダ州では、もちろん、反社会勢力のカジノへのタッチを厳しく禁じているわけですが、カジノ事業者については、その会社はもちろん、株主、影響を持ちうる企業団体について、反社会勢力との関係を徹底的に洗い出し事業の認可を出します。調査は書面や公的な情報、会社近辺の実地調査に加え、面接も複数回行われます。その際には、合衆国憲法で保証されているはずの"黙秘権"も一切、認めないとか。むろん、こうした調査、審査は一度ですむわけではなく、カジノ事業をやっている限り、継続的な監査が行われます。

カジノ事業者、そのた関係各社の従業員については、その財務状況や犯罪歴はもちろん思想・信条・宗教、関連する組織や学歴等を本人、家族、親しい友人についてまで調べるそうで、それに加えて、その人の日頃の素行、つまり犯罪に手を染めていないかだけではなく、粗暴な人間であるとか、訳のわからない人間であるかなどを調査するようです。もちろん、こうした調査を州自体が行うのではなく、各事業者に行わせるわけですが、州はこうした調査、審査をカジノ事業者が正しく行っているかを監査するようです。

こうしたことは、私が訪問したネバダ州立大学ラスベガス校でカジノ規制を担当するバーランド博士ほかの方々から聞いたお話で、(一人で訪問して英語会談は辛かった。。。)これらを中心に様々な施策をとった結果、ラスベガスから反社の影は一掃されたとのこと。この方法はシンガポールでも取り入れられ、日本のカジノもこれを参考に様々な規制を施行していくことになります。

だからといって、じゃあ日本のカジノが全く安心かといえば、そこはまだ見えていないところも多く、今後の頑張り次第です。ラスベガスのカジノの調査、審査は警察以上の権限を持ち、実行力もある規正組織が大活躍ですが、日本のカジノ管理委員会にはまだ、そんな組織も権限もありません。当然、警察との協力ってことになり、カジノ管理委員会にも警察庁からの出向者が何人もいます。また、この背面調査を支援するITも、ここが私の大きな仕事の一つですが、データ収集の仕組みは持つものの、これをどのように分析していくのかという点については、まだ今後という段階です。

日本のカジノが本当に反社会団体の影響力を100%排除できるのか、すべてはこれからの努力とアイディア次第といったところでしょうか。

因みに、今、世間を騒がせているIRを巡る国会議員への現金受渡問題ですが、今のところ検察の聴取を受けたり逮捕された議員からの影響をカジノ管理委員会が受けたという形跡は見られません。IRを設置する候補地、参加する事業者については、カジノ管理委員会のほうでは全くの白紙です。まだ、どこからも申請がない段階ですから当然です。5人のカジノ管理委員さん達は、この1月から着任で、それ以前は全く関係のない立場におりましたし、その下の役人さん達は1,2年で移動してしまう人たちですから、この人たちに何をしてあげてもメリットはありません。それは、今取沙汰されている議員さんたちも同じで、なんの影響力もなく、IR整備法を見ても、中国企業に利するような条項は見つかりません。

とはいえ、今後はカジノ管理委員会も、所管する大臣、副大臣、政務官も事業者選択や場所の選定に無関係という立場はとれなくなりますので、一層襟を正さなければならなくなります。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?