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去る人に涙する幸せ

 2024年9月24日、秋の気配を感じながら、プロ野球オリックスバファローズのホーム最終戦に足を運んだ。この日は特別だった。T-岡田選手、安達了一選手、小田裕也選手、長年チームを支えてきた彼らの現役引退試合だからだ。

 試合は残念ながら敗戦。しかし、彼らの最後のプレーは私たちファンの心に深く刻まれた。攻守にわたる輝かしい瞬間には、惜しみない拍手が響き渡った。

 試合後の引退セレモニー。お笑い芸人の岡田圭右さん、そしてなにわ男子の藤原丈一郎さんが涙を流していた。その姿に、私は不思議な「羨ましさ」を覚えたのだ。

 なぜだろう?

 2021年から本格的に応援し始めた私は、彼らの全盛期や苦楽を共にした時代を知らない。彼らが戦い続けた長い時間、熱心なファンが彼らにかけた想い。その絆を、私はまだ築けていなかったのだ。

 しかし、私にも涙を流した経験がある。それは、サッカー奈良クラブの元監督、林舞輝氏との出会いと別れだった。

 林氏は25歳という若さでGMに就任し、その翌年には監督に。2年間、クラブは試練に晒され、私自身の生活も困難な時期だった。そんな中で当時の奈良クラブの名物の一つ、林氏の試合後のレビューを聞きに、私はほぼ欠かさずスタジアムに通った。時には彼に叱られ、時には彼の言葉に勇気づけられた。

 だからこそ、彼が退団すると聞いた時、自然と涙が溢れたのだ。それは「寂しさ」だけではない。共に過ごした時間が、心に深く刻まれた証だ。そして、それが終わり、新たな章が始まるという感覚が私を動かしたのだ。

 人生で、このような人々に出会えることは、本当に幸せなことだ。去る人を涙で見送れる関係こそが、私たちの人生を彩る。そして、私もいつか、そんな風に誰かの心に残る存在になれたら――そう思いながら、スタジアムを後にした。

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