「次に伊藤伸一厩舎で重賞を勝つなら俺しかいないでしょ!」を現実にした松岡正海さんが好き過ぎる
3月12日土曜日午後3時40分。
中山牝馬Sの馬券発売締め切りが刻一刻と迫る中、私は買い目を決めあぐねていた。
このレースには、応援している馬が1頭出走し、応援している1人の騎手が別の馬に騎乗していた。
応援している馬は、スマイルカナ。
見た目と名前のかわいらしさに惹かれ、2桁順位が続いた昨年も全レース応援馬券を買い続けた。
応援している騎手は、松岡正海騎手。
中山牝馬Sでは、約3年ぶりにクリノプレミアムに騎乗予定だった。
私の馬券を買う際の個人的なこだわりに、「1レースで単勝を買うのは1頭だけ」というものがある。
「1着になる馬を当てる馬券を複数枚買うのは、どうもスパルタンではない」と感じてしまうのである(うまンchu視聴者にしか伝わらない表現)。
時計が午後3時42分を指す。
考えあぐねた結果、私はずっと応援馬券を買い続けてきたスマイルカナの単複を買い、クリノプレミアムの馬券は複勝のみ購入した。
今レースから黄色いメンコを付け出したかわいいかわいいカナちゃんは、4角を過ぎた時点で馬群からズルズルと後退していった。
「カナちゃん……転厩して、メンコを付けて、距離も延長したけど、まだ駄目だったか……涙」と、私は早くも先頭争いから脱落した本命馬を涙ながらに見ていた。
すると落ち込んでいた私の目に、大外からピンク帽をかぶった緑に黒袖の勝負服がぐんぐんと伸びてきている光景が飛び込んできた。
それは単勝97.4倍の伏兵、松岡さんが騎乗するクリノプレミアムだった。
「もしかしたら、複勝当たるかも……!……ん?これは複勝どころか……!!」
私の中で、喜びより驚きの感情が勝っていく。
脳内を驚きに支配された私が呆然とテレビ画面を見つめていると、クリノプレミアムはミスニューヨークとアブレイズを追い抜かし、なんと1着でゴール板を駆け抜けた。
「おい私、単勝買ってねえじゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ゴール直後は、100円をケチったことにより、ほぼ万馬券に近い払い戻しを取りこぼしたことに意識がいった。
だが次の瞬間すぐ、私の心は晴れ晴れとした気持ちになった。
画面越しにもうれしさが伝わってくる、松岡さん渾身のガッツポーズが目に入ったからである。
「次に伊藤伸厩舎で重賞を勝つなら俺しかいないでしょ!」
松岡節と言うべきいかにもな発言を、現実にしてしまう。
私の推しはなんてかっこいんだろう。
馬券のことはすっかり忘れ、私はただひたすらに推しを称えていた。
勝利騎手インタビュー後に満面の笑みでWピースを繰り出すところも、いかにも「松岡正海」という感じで、私はこの人のことが好きだなあと改めて思った。
レース後、私はSNSで中山牝馬Sの情報や写真をとにかく検索しまくっていた。
その中でも一番感動した投稿は、松岡さんと伊藤伸師が笑顔で握手しているツーショット写真だった。
松岡さんとの関係性がうかがえる伊藤伸師のレース後コメントも、胸にグッと来た。
松岡さんのJRAの重賞勝利は、2019年の中山記念以来。
ウインブライトでの勝利を除くと、ショウナンアポロンで勝った2016年のマーチSまでさかのぼることになる。
それ以上に重賞勝ちから遠ざかっていたのは、伊藤伸師と栗本オーナー。
最近だとクリノガウディーがそこそこ活躍しているので、そんなイメージはなかったが、栗本オーナーの馬が重賞を勝つのは9年ぶりらしい。
そして伊藤伸師に至っては、11年ぶりの重賞勝利だったそうである。
私にとって競馬を大好きにさせてくれたのは、ウインブライトと松岡さんの人馬一体の騎乗だった。
ただのギャンブルだと思っていた競馬にドラマとロマンがあることを私に教えてくれたのは、まぎれもなく松岡正海だった。
そして競馬を好きになってから1年半弱が経とうとしていた今、ドラマチックなレースで、改めて競馬というスポーツの面白さを実感されてくれたのも、松岡正海その人だった。
ああ松岡さん、やっぱり私はあなたのことが好きです。
とりあえず今後は、好きな馬と騎手が出走していたら、「単勝を複数枚買うなんてスパルタンじゃない」とツッコむ心の中のシャンプーハットてつじを無視し、思考停止で該当馬分の単複を買おうと思う。
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