デンマーク教育・福祉を支える、対人支援の専門職「ペダゴー」を知る【2/2】
デンマークにおける対人援助の国家資格「ペダゴー」。
Change Makers' College 4か月コース 7期(2022年4月17日~)から、
この「ペタゴー」について学び、その日本における活かし方を共に探求する「ペタゴーコース」が始まります!
この特集では、「ペタゴーコース」のファシリテーターでペタゴーの資格を持つTrineが、ペタゴーについて詳しく語ります。
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☆この記事は、2022年2月に投稿した以下の記事の続編です。
こちらの記事も、是非ご覧ください!
学問の中でのペタゴー
ペタゴーの哲学、思想そして理論の歴史について簡単に紹介します。
ペタゴーの分野において用いられる概念の多くは、国際的にも国内的にも、心理学、社会学、人類学、歴史学、科学などからの影響を受けています。
ペタゴギー(教育学)の主なテーマが特に人文科学的であるとされる場合、教育史や教育哲学と密接に関連した教育学思想史といった歴史的視点が重視され、教育理論の教訓や、異なる国や文化における養育や教育の比較研究といった分野が含まれます。
テキスト批評や、解釈的・概念分析的な性質を持つ方法が好まれ、ペタゴギーを社会の一般的価値観において考えようとしています。
このとき、主なテーマは比較的限定的なものになります。
ペタゴギーが社会科学とみなされる場合、
主に経験的・統計的手法を使用することを説明し、評価することによって、アイデンティティを創造する内容が方法論的な関連をもってその背景に入り込みます。
このような専門的な理解によって、ペタゴーの理論が、社会の中での実践において、より大きく即時的な影響を生みます。
ぺタゴーの専門性
ペタゴーの専門性は、次の3つの側面に分けることができます。
・具体的な体験を与えてくれる、教育学的<実践>
・教育学的状況の観察に基づく研究結果を与えてくれる、教育学的<経験論>
・ペタゴーの概念や主張の解釈と体系化をしてくれる、教育学的<理論>
今日、ケア、学習、そして発達が重要な概念として強調されています。
しかし、社会の政治、文化、イデオロギーによって、数十年を通してその概念が大きく変化してきたさまを我々は見てきました。
多くの人は、形成、関係、包括、承認、遊び、そして遊び心のある学習がより重視されるようになったと主張するでしょう。
教育学分野の専門的な発展を通して、哲学や理論における多くの分極化がありました。
多くの場合、実践的な経験や批判的な思考・考察を通して自分自身の視点を決定するのは、各個人の問題とされています。
ペタゴーの哲学に影響を与えたひとびと
ルソー
ペタゴギーの視点について最初に語った哲学者の一人は、ジャン=ジャック・ルソー (1712-1778) です。
彼は、子供時代に自然に触れる権利が子どもにはあるということを強く信じていた人でした。
ルソーは、子どもを、自ら(子ども)の発達と知識の習得の源であるとみなすような、子ども中心の、反権威主義的な教育法を提唱していました。
今日、ペタゴーのスタッフたちは、施設において自由遊びや監督されない時間が多くあることには反対するかもしれませんが、子どもの年齢や能力に応じて、子ども自身の人生に影響を与える選択を自分自身でさせることは、ペタゴーのコミュニティの中でも強く支持されています。
ペタゴーの仕事は、子どもたちが自分自身の経験ができるように、子どもたち自身の世界の中において、その環境を整え、課題を作り出すことである、とルソーは考えます。
カント
ルソーの哲学に反対しているような人は、イマニュエル・カント(1724-1804)の哲学と、自らの運命を切り開く「主権者」の形成を扱った「ビルドゥングス(教養)概念」を支持することが多いようです。
人間は養育によって作られるものであり、自分の行動に責任を持てるように文明化され、エンパワメントされなければならない、と。
フレーベル
フリードリヒ・フレーベル(1782-1852)は、スピノザ、シェリング、ルソーの全体論的哲学に触発され、子どもの遊び、想像、物語り、そして幼稚園の家庭的で密接した、母親的性格に焦点を当てるようになりました。
フリードリッヒ・フレーベルは、グルントヴィやコルのフォルケホイスコーレの教えや哲学とともに、北欧の教育学モデルの発展に最も大きな影響を与えた教育者の一人とされています。
フレーベルは、人間の人格形成は幼児期と児童期に基礎づけられるとしました。そこで彼は、小さな子どもが専門家の指導のもとでのびのびと成長できるような保育所として、幼稚園を創設したのです。
1800年代に幼稚園の創設者であるフリードリッヒ・フレーベルが、教師が介入した遊びや想像力を前面に押し出したのに対し、マリア・モンテッソーリ(1870-1952)は、教師の介入や妨害なしに子どもたちに自分自身の感覚や自制心を好きに実践させ、幼児の養育に飛躍的な進歩をもたらしました。
その基本的な考え方は、「子どもと真剣に向き合う」ということでした。子どもは社会の中で重要な役割を担うべき一人の個人である、という考え方です。子どもは自分の周囲の物事を尊重し、学ぶ必要があります。他人だけでなく、子どもを取り巻く自然や環境も同様に尊重することが大切です。つまり、教育は完全に子供一人一人のために組織され、子供自身の自発性に基づいて行われなければならないのです。教師の役割は監督であり、インスピレーションを与えることであって、椅子と教師の側に立つことではありません。
フォルケホイスコーレの設立
同時にデンマークでは、グルントヴィッヒやコルの哲学が台頭し、それらが現在デンマークの成人教育の定番となっているフォルケホイスコーレの設立につながります。
フォルケホイスコーレとは、ピープルズカレッジや全寮制の学校教育の一種で、17,5歳以上の大人が参加できます。
フォルケホイスコーレの理念は、「子どもの発達に子ども自身が責任を持つ」というような、自然な成長についての考えに基づいています。
自由な成長や養育を支持しているのではなく、子どもの自由と自主的な活動、そして共同の管理者・子どもたちを鼓舞する指導者としての教育者の責任との間の、弁証法的な在り方を支持しているのです。
フォルケホイスコーレの目的は、成人の非正規教育の選択肢であるということ、個人の人生をより豊かにすること、公的に民衆を啓発すること、そして民主主義教育を提供することです。
個々人に、良い人生を送るための資源を与える ということに重点を置いており、これは今日、特に社会的なペタゴーの仕事(SOS)において中核的な価値観となっているものです。
近年のデンマークにおける、ペタゴー
デンマークでは、その後、上記の概念に関する研究と革新が行われ、ペタゴーのスタッフは、何十年にもわたって、子どもや大人の成長を助けようとさまざまな方法を見出してきました。
例えば、ジョン・ベルテルセン(1917-1978)は、1943年8月15日にエムドルップで最初の「ゴミの遊び場」を作った。彼は自分の教育法をscrammology(デンマーク語でskrammelpaedagogik:再利用品を使った仕事を指す)と呼び、スタッフもscrammologistsと呼んでいます。その時代は資源が乏しい、戦争の最中でした。そのため、ペタゴーは創造的に考える必要がありました。
今日、教育学の研究には多くの資源が投入されており、社会的相互作用への注目や、子供と大人の両方にとっての遊びの重要性が高まってきていることがわかります。
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