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【出題編】コピーライティング入門講座「織姫と彦星、愛のラブレター」

本記事は、「文章が上手くなりたい」「伝わる文章を書きたい」「自分の気持ちを、ちゃんとした言葉で伝えたい」という方向けの内容です。

天の川の畔に住む彦星が、再び織姫に愛を伝えるために送るラブレター。その文書を通じて、自然とコピーライティングについて学べる内容になっています。

「コピーライティング」って何?という方でも大丈夫。例文が出てくる前編の「出題編」(この記事です)と、文章の添削を行う後編の「回答編」に分かれます。ぜひ合わせてご覧ください。

数千年ぶりに織姫と彦星が
ふたたび一緒に暮らすことになったとしたら…

2023年も終わりを迎えようという今日、この頃。なんとなく、気変わりをした帝がお一人。名前は天帝、ざっくり言うと、織姫パパである。

「今まで、織姫彦星には年に一度の逢瀬のみ許してきた。しかし、最近、この罰を何千年も耐えてきた二人をそろそろ許していいような気がしている。……今日をもって、二人に課した制約を解除しよう。諸君は、彼らに伝令せよ!」

一目散に駆け出していく臣下たち。やっと、天帝からの許しももらえて、めでたしめでたし……と、簡単にいかないのがラブロマンスというもの。

天の川の東の端で、乙女が悩まし気に佇んでいる。

ところ変わって、天の川の西の端。そこには2024年の七夕を心の支えに、牛飼いの仕事に邁進する青年の姿があった。彦星である。天帝の臣下からの許勅状を手渡された彦星は目に涙を浮かべ、ぎゅっと両手を握りしめた。

「ここまで、長かった……」

早く、織姫を迎えに行かなければ。臣下に厚くお礼をし、身支度を整え、天の川の東側へ織姫に会いに行こうとした瞬間、郵便屋さんにかち合った。なんでも、速達であるという。

「こんな大事な時に……!」

アクシデントは一度に大量発生するのがお約束である。

宛名を確認すると、織姫の侍女の名前が記されていた。

「待ち合わせに関する連絡かもしれない」

織姫もこれからの結婚生活を喜んでくれているのだ。だから、連絡をくれたに違いない。逸る気持ちを抑えながら慎重に封を開けていく。文面を開いた。

そこに綴られていたのは、衝撃的な内容だった。

前略 
逢瀬の解禁をおめでとうございます。
織姫様も大変お喜びのご様子でした。

一方で、数千年に渡る制約からの解放に、
織姫様は不安を抱いていらっしゃいます。
いわゆるマリッジブルーに近い状況かもしれません。

織姫様の不安を和らげるためには、
彦星様からの愛のお便りが一番だと思います。
どうか、織姫様に一筆認めてはいただけませんでしょうか。

何卒よろしくお願い申し上げます。
草々

彦星は膝から崩れ落ちた。
相手は、数千年来の恋人。恋歌に感銘を受け、和歌をライフワークにしている、あの織姫様である。ありきたりで生半可な愛の言葉なんぞ通用するはずがない。

「どうしよう……」

かくして、二人の幸せな新・結婚生活は一通の手紙に託された。

愛のお便り(ラブレター)に悩む彦星…
そこに現れた救世主!?

ドン!ドンドン!ドン!
彦星宅のドアをしつこく叩く男が一人。

「おーーーーい、彦星ぃぃいいい、いるのはわかってるんだよ、出て来いよ、」

全く扉が開く気配がしない。

「おーーーーーーーい!!!やれやれ……腑抜け・泣き虫・ヘタレ・ポンコツ・ビビり!!」

ダン!ダン!ダン!家の中から大きな足音が響く。

「家の外でまで、そんな悪口言わなくてもいいじゃん!今、疲れてるんだよ、後にしてくれ」

「彦星が怒るのも珍しい……どうしたよ。この竹馬の友・文乃彦がご相談に乗るぜ?」

自信過剰・軽率・傲慢、そんな文乃彦だが彼にも特技はあった。
丸まった半紙がばらまかれた部屋を眺めながら、文乃彦は状況を把握していく。

「なるほど、織姫と結婚生活を送りたければ、恋文を書いて口説いてこいというわけだな、そして、彦星は困り果てていると」

涙目の彦星は小さくうなずいた。

「お前、なんで早く俺に相談しなかったんだよ~!俺といえば、町内会議で議事録を頼まれるくらいの文才として有名じゃないか。この文乃彦、頼まれましょう、織姫も心を震わす明文を書いてあげようじゃないか」

「……いいのか?」

「あたぼうよ!!ちょっくら一眠りして待ってな!」

口先だけかと思いきや、文乃彦の文才も意外に侮れないものらしい。
文乃彦は本当に、あっという間にラブレターを書き上げた。

親愛なる織女さま

わたしの臆病を、どうかお笑いください。
やっと天帝閣下のお許しが出たというのに
貴女の元へ向かうべき足が、どうしても言うことをきかないのです。
わたしは愚かな男です。貴女さまを放蕩の沼に引きずり込んだ男です。
ともに暮らせば、再び貴女を失望させないとも限らない。
許された喜びの中にも、一抹の不安を感ぜずにはいられないのです。
なんと不甲斐ないことでしょうか。
数千年の時を経てさえ、
貴女のご期待に応えますと、言い切ることが叶わぬのですから。

しかし、貴女はお忘れでしょう、
かじかむ指をあぶりながら、共に火鉢を囲んだ冬の夜。
汚れの染みついたわたしの手を、
貴女は笑うどころか、勲章と讃えてくださった。
自分の生まれを恥じていたわたしにとって、どれほどの救いとなったことか。
柔らかく、親しみの籠った言葉に、どれほど胸の詰まる思いがしたか。
生涯をかけて、この方をお守りしよう。
あの時、そう心に誓ったのでございます。

貴女を守るに、わたしはあまりに矮小です。地位も財力もありません。
お迷いになるのも当然でしょう。
待ってほしいとおっしゃるのなら、幾年でもお待ち申し上げます。
ですがもし、ともに歩むことお許しいただけるのでしたら、
わが恥、わが不甲斐なさもを振り捨てて、おともする所存でございます。
そして、叶うならば、織女さま。
わたしの背を支えてください。
わたしも貴女さまを、命尽きるまで、ずっとお支え申し上げます。

お返事をお待ちしております。

枯木逢春の心持ちで。 あなたの牽牛より

「俺ってば本当に最高、おい彦星、起きろ!手紙ができたぞ!」
文乃彦のされるがまま、彦星は目を覚ます。綺麗な机の上に一枚の手紙だけが置かれていた。

彦星はガラスを扱うようにそっと手紙を手に取ると、何度も何度も文章を目で追っていく。

「こんなに綺麗な文章を、こんなにすぐに……?」

「いいだろう?いいだろう?俺がこんな手紙をもらったら、きゅんきゅんだね」

文乃彦は満足げな様子で、この手紙がいかに素晴らしいかを延々と語ってくる。

しかし、彦星には漠然とした不安があった。

手紙を書きあげた文乃彦に対する〈やっかみ〉だと思われても仕方がないかもしれない。それでも、どうしても、この手紙を読んだ織姫が僕のところに来てくれるとは思えなかった。
まだ、なにかがきっと足りていないのだ。

「おい、彦星…?」

「なあ、文乃彦、この手紙、本当に織姫が望んでいる言葉が書けているのかな?」


文乃彦が書いた手紙に、彦星は合点がいかないご様子でしたが
読者の皆さまは、あの手紙を読んでどのように感じたでしょうか?

コピーライターはラブレターの代筆業が発祥ともいわれています。
「織姫が、彦星に何を求めているのか」「織姫は彦星のどんな言葉を待っているのか」
このあたりに注目してみると、何か気付きがあるかもしれません……!

貴方だったら、この手紙のどこが問題だと思いますか?そして、どこを修正しますか?

次回後編は、ラブレター添削のメイン回である「回答編」です!
プロのコピーライター・近藤智子さんに監修いただいた超充実回となっています。

お楽しみに!

後編(回答編)につづく…



本記事は、コンテンツ業界とマーケティング業界のコミュニティイベント「CONTENT MARKETING DAY2023」の関連企画です。
イベント期間:2023年12月4日~12月10日

伝わりやすい文章作成(コピーライティング)や、受け手の印象や行動を変える方法(マーケティング)について知りたい方は、ぜひご参加ください。参加無料、どなたでも参加登録いただけます。


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