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+30%..ヨーロッパサッカーの拡大によるCO2排出増の懸念

 ヨーロッパサッカーは2024/2025年に試合数が増加することになった。これに伴い懸念されているものが、CO2排出などの環境への影響である。
 以下が、この懸念を取り上げているBBCの記事だ。(トップ画像もこの記事からの引用である)ここではこの記事の主要部分を取り上げて紹介する。
What could more European football mean for planet?
By David Lockwood & Matt Hickson
Editorial Sustainability Lead, BBC Sport

 BBC調査による、移動距離(試合会場間、ファンやチームの移動)、および移動によるCO2排出は以下のようになる。比較対象は2022/2023シーズンの実績、2024/2025シーズンの予測である。なお、現在進行中の2023/2024シーズンに関しては記載がない。決勝トーナメントの会場や移動距離が現時点では未定のためとみられる。

UEFA主催試合による移動距離やCO2の増加

 ファンや選手の移動距離が15億マイルから20億マイルに増加するのにつれてCO2の増加が予測されている。2023/2024シーズンの移動距離は、地球と月の間を4,000往復する計算だ。移動によるCO2の排出増は30.4%と予測されている。
 ヨーロッパサッカーは、各国の国内リーグとUEFA主催のカップ戦に分かれる。国境をまたいでクラブチームが対戦する後者は、各国のリーグ戦における前年のチーム成績などを反映して、レベルの高い方から、ヨーロッパチャンピオンズリーグ、ヨーロッパリーグ、ヨーロッパカンファレンスリーグ(※1)に分かれる。このCO2排出の増加は、UEFA主催のカップ戦の試合の増加によるものだ。その増加数は177。これが移動を増やし、CO2排出の増加につながるわけだ。
(※1:2024/2025シーズンから、頭のヨーロッパを取って「カンファレンスリーグ」に改称予定)

 実は、この数字は「まだ控えめ」な方だ。さらに増加する可能性がある。その理由は試算の前提だ。この試算の前提は以下のようになっている。
・試合会場の観客のうち5%(アウェイのファンに割り当てられる最低の座席数)が、対戦相手のホームの都市から移動してくる。
・移動は航空機のエコノミークラス利用前提
・150マイル未満の移動は計算に含まない(※2)

 会場の運営から排出されるCO2、ヨーロッパ外からのより遠距離の移動、メディアや関係者の移動、選手/関係者のプライベートジェットやビジネスクラスの使用は考慮されていない。これらを考慮すれば数字はさらに上がるはずだ。実際、BBC調査によれば、前期のチャンピオンリーグのノックアウトステージでは、29試合中26試合で、アウェイチームがチャーター機を使用したとのことだ。例外の試合のうち1試合はともにイタリア・ミラノを本拠地とするACミラン-インテルのダービーマッチで、そもそも移動が要らない試合だ。
(※2:アウェイの試合会場までの移動距離は平均1,000マイル。近距離に関しては列車移動の可能性はあるが、除外されている150マイル未満の移動は別として、列車移動はごくわずかとされ考慮されていないようである)

 UEFAは、2030年までのCO2半減、2040年までの実質排出量ゼロを義務付ける「スポーツ気候変動枠組み」に署名している。その一方、2021/2022年に前記「ヨーロッパカンファレンスリーグ」を新設するなど、ビジネスの観点から試合数の拡大を進めた経緯がある。これがCO2排出削減と矛盾するのではないかという懸念があるのだ。UEFAは、ファンの移動には列車やライドシェアの利用を促している一方で、スポーツ気候変動枠組みによる排出量削減に関してはファンの移動を対象外と考えている。
 この記事の結びでは、サッカーに影響する気候変動や極端な気候は、主に、小規模なチーム、低いレベルのリーグ、グラスルーツの選手にインパクトをもたらすとしている。つまり、格差が広がるわけだ。
 スポーツは気候変動の影響を受ける被害者でもあり、加害者でもあることを考えさせられる。大事なのは未来の子供たちが思い切って夢を持ってプレーできる環境を守り続けること。これにどう答えを出していくのか。

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