スポーツ界から「The Earth Matters」の発信を!

ホームランをナイスキャッチ!!

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喜んでベンチに戻るルイス選手。

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でも、どこか変だね…せっかくのファインプレーがかすんで見える…


これは現地時間9月14日にシアトルで行われたアスレチックス@マリナーズのダブルヘッダー第2試合での出来事。視覚的な問題のせいでかすんで見えるわけでもない。カメラがくすんでいるわけでもない。本当にかすんでいるのだ。そして、これは、霧の類のものではない。大気汚染物質なのだ。原因は、ここのところアメリカ西海岸で止まらない山火事の影響である。ちなみに、ここT-モバイルパークの屋根は開閉式で、この日は大気の問題で屋根は閉めて行われたが、それでもこんな空気だ。アスレチックスの選手の中にはこの大気下でプレーすることに不満を言う選手いたとともに、アスレチックスのメルビン監督は、MLBからの情報開示がないことに不満を述べていた。

次の日のジャイアンツ@マリナーズ戦は、中止。理由は、この写真の霞み具合が示すとおり、山火事による大気汚染だ。airnow.govによるシアトルの大気汚染指数は、233(very unhealthy)とのことだ。

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この大気汚染を引き起こしたのは山火事。では、その山火事を引き起こしたのは、もう数多くの研究が示す通り、地球温暖化である。もうあちこちのサイトで観ればわかることでここでは簡潔に書くにとどめるが、流れを概括すると以下の通りになる。

温暖化により高温で乾燥する→人為的な要因がなくとも自然に発火しやすくなる、あるいは落雷によって森に火がつきやすくなる→山火事になる→高温、乾燥のためにどんどん燃え広がる…負の連鎖が続く…

この山火事の魔の手、その背後の地球温暖化の魔の手が、ついにスポーツにまで直接的に災いを起こすようになってしまった。

スポーツがいつまでも行える豊かな地球環境を守ることは、持続可能な社会や経済発展に直結する。逆に言えば、スポーツができる環境を守ることが、持続可能な地球環境のバロメータや目標となり、その中心的な信条がSDGsとなるはずである。この観点から、スポーツ界も、こうした地球温暖化、環境問題に対してもっと「The Earth Matters」の声を発していいと思うが…少なくとも私が思うに、そうはなっていない。

2020年、アメリカで起こった大きな社会的ムーブメントの1つが「Black Lives Matter」。これはもはや誰もが知っていなければいけない社会的常識なので、詳細についていちいち書くのは略するが、簡単にいうと、歴史的に社会的地位が低かった黒人の地位向上、さらにすべての人種の公平・公正を求める社会的運動と言える。この運動、もはや大多数の企業、さらにスポーツ界も見過ごすことはできなくなり、社会的インパクトを与えている。スポーツ界からでは、NBAはプレーオフで常にコートに「Black Lives Matter」を表示し、かつてNFLのキャパニック選手がとった「国歌斉唱中膝をつく」ことを積極的に支持するようになった。また、テニスの大坂なおみ選手のように、黒人の犠牲者名をマスクに書くなど、「Black Lives Matter」を積極的にサポート、自ら発信する選手も現れている。

これと同じくらい、今の気候も危機的なのだが…少なくともスポーツ界をみると、「Climate」「Earth」に関しては、まだそこまでの危機感は伝わってこない。グレタ・トゥーンベリさんのアクションを受けて自ら気候変動に対するスタンスを強力にアピールするチーム、選手は、まだ見えてこない。いや、細かいところでは徐々にやっているはずなのだが。

なぜなのか???「Black Lives Matter」との違いは以下になるか。

1)社会的インパクトの問題
「Black Lives Matter」は、警官の暴力による黒人の死亡という事件が、社会的にインパクトを与えた。一方、地球温暖化・気候変動に関しては、山火事などによる災害の犠牲者は出るが、マスコミのネタになりやすい喫緊の「事件性」は低い。

2)戦略的目線が先に立つ
スポーツ選手目線では、「Black Lives Matter」は、試合でのプレーとは直接的な連関性のない社会運動として考えることができ、純粋に自分の信条に沿って意思を発信すればいい、と思える。一方、試合の中でのプレーの環境や暑さは、対策を十分に行うことで相手に優位に立つためのいわば「戦略」として捉えられる。そのため、目先の気象条件に関しては戦略的目線が先に立ち、地球温暖化・気候変動という本質的なところまでどうしても思考が及びにくい。

3)「順化、対応する」アスリートとしてのマインドセット
暑さなどの厳しい環境に対しては、アスリートは簡単に「休む」「逃げる」ことはできない。そのため、ここにどう順化、対応するかをまず考える。一方、「Black Lives Matter」のような社会運動は、そもそも順化、対応という行動では手の届かない領域になる。


この気候変動は進行すれば、「山火事でMLB、NFLが中止になった」という事態がさらに増え、選手のパフォーマンス低下、スポーツの安定的な運営に影響が生じる事態が懸念される。本格的に悪影響が生じてどうにもならなくなる前に、早くスポーツ界が地球温暖化をもっと本格的に自分事として捉え、「The Earth Matters」をアピールすることが求められよう。

(参考)


https://www.thescore.com/mlb/news/2021987

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