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台風14号の福岡市への影響:距離・規模に比べ小さかったのは?

 九州地方、中国地方を中心に各地に爪痕を残した2022年9月の台風14号。鹿児島県では暴風特別警報、宮崎県では大雨特別警報が出されるほどだった。宮崎県、山口県、広島県西部に被害が集まっているように見える。
 一方、私の住む福岡市では、率直事前の予報から恐れていたほどの風雨にはならず、被害も少なくて済んだようだ。台風自体は福岡県内を通過してむしろ至近を通っていたのに、不思議である。と思ったら、台風が通りすぎた後に、接近時と比べ風が強まったように見えた。その一方、周辺をみると、福岡市から比較的近いのに風雨がより強かったように見える。
 福岡市の風雨の規模や被害が小さかったのは、台風の目に入ったことのほか、地形の影響もあったのではないかと思う。

福岡市における気圧と風速、降水量の比較

 福岡市に関して、アメダスのデータをもとに、9月18日~19日にかけての気圧と風速、気圧と降水量の数値を比較してみた。なお、ここでの気圧は、海面上(0m)に更正した「海面気圧」である(※)。

福岡市における風速と気圧の推移比較(2022.9.18~19)
福岡市における降水量と気圧の推移比較(2022.9.18~19)

 福岡市では9月18日午前9時ころから気圧の低下が顕著になり、9月19日午前3時~4時ごろを底にして、上昇に向かっている。その一方、9月18日午後に上昇が始まった風速は17時にいったん低下、その後翌日1時にかけて上昇したが、その後は7時ごろまで低下傾向を続けた。この風速は午後に入り急上昇し、夕方まで前日の台風接近時を上回る水準が続いた。一方、降水量は18日17時~21時に増加、その後いったん減少したのち19日1時に10㎜を超えたほかは、顕著な雨量は記録されていない。18日の夕方~夜はだんだん風雨が強くなりかけていたが顕著な暴風雨までには至らず、19日午後は降水がほとんどないが風が吹き荒れる状態だった。

 19日の早朝を中心に気圧は970haを割り込みながら風雨の規模が小さかったのは、おそらく台風の目に入った影響とみられる。

 台風11号が接近したときと比較する。
●台風11号時
・最低気圧991.4hpa(9月6日4:00)最大風速16.8m/s(9月6日5:00)
 最大降水量7.0㎜(9月6日1:00)最大瞬間風速33.2m/s(9月6日4:40)
●台風14号時
・最低気圧969.2hpa(9月19日3:00)最大風速14.0m/s(9月19日12:00)
 最大降水量11.5㎜(9月19日1:00)最大瞬間風速28.7m/s(9月6日13:40)

 最低気圧は14号時が小さい一方で、一般に気圧と逆の傾向をたどるはずの最大風速・最大瞬間風速は14号時の方が小さい。また、最大の降水量も大きな差があるとは言えない。11号は朝鮮半島の南端をかすめて通過し、14号と比べ福岡市から距離があるにも関わらずだ。

周辺市との同期間の風速、降水量の比較

 一方、福岡市の周辺に目を移すと、福岡市より降水が多く風速が大きいところも目立ったようだ。以下、福岡市のほか、福岡市と緯度が類似し直線距離で80㎞内にある佐賀県唐津市(福岡市から約40㎞)、福岡県飯塚市(福岡市から約28㎞)、大分県中津市(福岡市から約75㎞)と風速、降水量の推移を比較する。

福岡市、唐津市、飯塚市、中津市における風速の推移比較(2022.9.18)
福岡市、唐津市、飯塚市、中津市における風速の推移比較(2022.9.19)
福岡市、唐津市、飯塚市、中津市における降水量の推移比較(2022.9.18)
福岡市、唐津市、飯塚市、中津市における降水量の推移比較(2022.9.19)

 唐津市では18日15:00ごろから風速が増加、同日19~20時を除いて翌日早朝まで風速が10m/sを超える状況が続き、日付が変わるころには18m/sを超えた。唐津市では18日に、ともに観測史上最大となる最大瞬間風速44.1m/s、最大風速19.2m/sを記録、翌19日にも観測史上2位の最大瞬間風速、最大風速を記録した。福岡市からの距離が最も遠い一方、台風の進行方向の右側に位置した中津市でも唐津市と同様の傾向がみられ、18日15:00から19日朝まで福岡市を上回る風速を記録し続けたが、一部時間を除き風速の値は唐津市までには達していない。台風自体が通過した可能性が考えられる飯塚市では、風速の増加は福岡市と同水準にとどまったほか、19日午後は福岡市のような風速の増加はみられない。
 降水量に関しては、唐津市では19日20~21時に、中津市では18日15時に、時間雨量18㎜を超えるピークがみられるが、福岡市や飯塚市では、10㎜を超える時間はあったにせよ、こうした顕著なピークはみられなかった。
全体に、一番影響が大きかったのは唐津市だ。唐津市は、比較的安全とされる台風の進路の左側にあったにも関わらずだ。

まとめ


 福岡市は、唐津市や中津市と比較して、台風が近くを通過したにも関わらず影響が比較的小さく済んだことがうかがえる。同様のことは、飯塚市にも当てはまる。なぜか?台風の目に入ったことや台風の進路の左右だけでは説明できない。地形と風向が合わさった影響があるのではないか。台風だけでなく、梅雨前線や秋雨前線、さらに猛暑に関しても、データを整理すれば地形と風向の影響が出てきそうだ。

(※)
気圧には現地気圧と海面気圧がある。2つの相違は以下の通り。
現地気圧:気象台や測候所のある高さ(標高)で観測する気圧で、観測場所によって値が異なる。
海面気圧:現地気圧を海面(海抜0m)の値に補正した気圧。 新聞の天気図などに使われる気圧はこの海面気圧である。

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