#37 生地胴=ジーンズ論 vol.12 完結
■完結 生地胴=ジーンズ論
ダメージを臆せずに使うことを出発点とし、それが共通項といえる生地胴とジーンズは、その後の歩みにおいて普及しながらも徐々に用途を広め、存在をファッションにまで昇華させていった。
インディゴブルーのジーンズはブラックやホワイト、ブラウンなどのカラーが試され、シルエットにも多様性が増した。生地胴も同様に革を拭き漆に仕上げたり、表面は素地のままに下地の布地に色を加えたタイプの物なども出回り、益々楽しめるものとなってきている。このことについては未だに賛否が分かれるところであるが、リーバイスでいえば501モデルのように素地の胴台を最もベーシックな生地胴と位置づけた上で個々が嗜好に合わせた生地胴を選ぶ楽しみが、現時点での面白さといえる。
ただし、生地胴とジーンズが異なる道を歩んでいる側面もある。ジーンズが普遍性を増し続けている一方で、生地胴が却って希少性を極める方向に進み、ある意味で最も低い位置付けにあるはずにも関わらず「実力が伴わないから」「身分不相応」という理由により手を伸ばせないという考えが広まって既に久しくなっていることである。
なぜそうなのか。そもそも生地胴とはなんなのか…その歴史と変遷を知りたいという方にはぜひともこの生地胴=ジーンズ論を「1」から読んでいただきたい。改めて御案内したところで本稿を書き終えることとする。(了)
■生地胴=ジーンズ論のあとがき
毎回通読しリアクションをくださった方、ありがとうございました。
この連載は、私が管理人を務めるFacebookグループ「生地胴倶楽部」で2020年に書き連ねたものを一部改編のうえ再掲したものです。
あえてペダンチックな書きっぷりでそれっぽく表現しているので、読みづらくなっていることについてはお詫び申しあげます。
もういちどまとめてみます。【生地胴とジーンズは似ている】
コストを極力抑えつつ、過酷な状況でダメージを気にせず使い倒す目的でつくられた
一時期停滞を見せるが、あるときにパラダイムシフトが起こった
生地胴でいえば拭き漆。ジーンズでいえばリベット(鋲)の普及
見た目の特長が普遍的なものとして認識されるようになると、存在自体がファッションになった
こんなところでしょうか。
■生地胴か生地胴ではないかの二択の意味
生地胴の風合いが好まれるようになったことで、ファイバーや樹脂の胴台をアレンジして「生地胴風」として売られるものが出てきています。
これはこれで面白いなと思っていますが、いまでも多くは生地胴=天然の牛生革と竹を使った竹胴が99%を占めているといってよいと思います(ごめんなさい、定量的なソースは持ち合わせていません)。
ファイバーや樹脂の化学製品の胴台か、漆塗の竹胴か?という時代から「化学製品か、生地胴か?」の二択になり、その上位に本漆の胴が位置するというような変化が見られます。
私は生地胴を愛好していますが、生地胴に限らず剣道具全般が好きです。
もちろん生地胴ではない黒の呂色や変わり塗の胴も好んで使うので、何が何でも生地胴を!とまでは実は考えていないのです。しかし、生地胴がもともとの目的にあるように、普段の稽古で当たり前のように使い倒されるようになってほしいと願っています。
■「使ってナンボ」の剣道具
高価な道具ほど使うのがもったいないと考えてしまいがちですが、細かいことを気にせずに使い込み、その変化を楽しむことが道具の使い方としては好ましく、そこから道具を大切に使うことも自然と身についていくのではないかなと考えています。
生地胴はいま、その魅力から確固としたひとつのジャンルとなりました。
余計な手間がかかっていない、あくまでも素地のものもあれば、耽美であり至高をうたうものも出てきています。
これも普及してきたことを示唆する現象だといえますが、どんなものであっても生地胴は生地胴です。そこに上下はないものと考えます。
親しみやすく、とっつきやすく、誰でも気軽に使える剣道具としてこれからも広まってくれたらいいなと個人的に強く願っています。
■生地胴なんて恐れ多い????
最後にお願いです。
「私には生地胴なんて恐れ多い」とか「キミには生地胴なんてまだ早い」というような声を聴くことがたびたびあると思います。
真っ向から正論で否定する必要もありませんが「そうではないんだよ」ということは一人でも多くの愛好家に知っておいてもらえたら嬉しいです。
アナタも生地胴を愛用してみませんか?
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