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オルハン・パムク「イスタンブール」

 ドイツ紙を読むと、トルコ移民との関連から度々トルコの情報が目にとまります。でも私は昔、世界史で少しかじったくらいでトルコのことをよく知らない。どんな国なんだろうと思って、今月はオルハンパムクの「イスタンブール」にしました。

 「イスタンブール」は、2006年トルコ初のノーベル賞作家オルハン・パムクの自伝的小説。イスタンブールは現在は首都でないものの、昔も今もトルコ最大の都市。欧化政策時代は、フランスとの結びつきが深かったらしい。著書では、オルハンパムクの小年時代、家族の話、イスタンブールが辿ってきた歴史、イスタンブールとゆかりのある芸術家の話、写真家アラ・ギュレルの写真収録など多岐にわたります。トルコ民族主義と西洋への憧れ&劣等感が全体的に見え隠れしていました。

 筆者はイスタンブールの都市の特徴を、「ヒュズン(憂愁)」というトルコ語で繰り返し表現しています。

 「私の子ども時代、夜は、町が貧しくなればなるほどその中に埋め込まれた混沌とした疲労感をーあたかも雪のようにー覆い、詩的にするので美しいものだった」、と。

 筆者は建築の学校に通っていましたが、「絵かきになりたい」と母に言ったところ、「パリはともかくトルコでは絵かきは食べていけない」と諭され、最後は作家の道を志す宣言をしたところで物語が終わります。

 とてもメランコリックで哀しさと美しさが共存したような小説でした。筆者の「私の名前は紅」、「雪」、「僕の違和感」なども読んでみたいです。

BGM音楽は、RavelーShéhérazade。
歌手は大好きなVéronique Gensの歌声で。

https://www.youtube.com/watch?v=gOq3nMNM2Ic

注)2020年1月14日の過去記事です。

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