見出し画像

W・G・ゼーバルト「アウステルリッツ」



 ドイツの現代作家ゼーバルト(1944-2001)は、英国に移住した後も、ドイツ語で小説を書き続けた作家です。ゼーバルトの作品が高く評価されるようになったのは、英語の翻訳が出版され、英語圏で広まったことが大きいので、「アウステルリッツ」を英語の訳で読みましたが、やはり原著で読もうとドイツ語版も購入しました。

 物語性、キャラクターの魅力、比喩のたくみさ、伏線のはり方、語彙の豊富さ・・。ある作家の作品のどこに魅了されるかは、いろんなケースがありますが、ゼーバルトの魅力は、なんといっても、暴力や迫害についてのテーマを掲げているのに、文体が静謐で端正なことではないでしょうか。冷静な文体に、私はかえって、不穏なものを感じます。キャプションのない写真が掲載されたり、改行がない独自の散文文体に初めて触れて、私はすっかりゼーバルトの虜になってしまいました。

 今年の後半、ドイツ文学の原典購読は、古典はゲーテ「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」と、現代文学はゼーバルトの「アウステルリッツ」その他の作品をもう少し追いかけようと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?