狂気カモをコイに食われて早数年

ごきげんよう。太平洋にコイは潜んでいるのか。見た事もない悪夢の世界に閉じ込められた際、1年後に出してあげますから、その間周りの壁紙を最近のあなたの重い悩み事を具現化したものにしてもよろしいでしょうかと、その世界の神様らしき何かに問われたら、あなたは何と答えるのか。私は気になる。この文章をラップとして歌い上げたとき、果たしてこれは本当にラップとして成立するのかについて。私は気になる。太平洋にコイが潜んでいたとして、そのコイをラップで包んだときに生まれる気泡の数と、この文章に紛れている韻の数の和は、私の誕生日とどれくらい離れた数値になるのか。顔も名前も知らないどこかの誰かを祈るとき、我々は心の中に「顔も名前も知らないどこかの誰か」が住む世界を想像、あるいは創造する。でも、それは実際に我々が住んでいる場所の裏側にある世界とは別物だろう。たとえば情熱的な通学路は、自分が自分である要素以外で構成されていることがほとんどで、それを私が、あなたが想像あるいは創造したところで、永遠に覆せないズレとやらが生じてしまうのである。でも大丈夫、それを悔いる必要などない。花火の中に含まれる人工物を眺めながら、理性を保ちながら射精した。スターマインが自意識で、水面はあなたを裏切った。私があなたに裏切られて、あなたは私に申し訳なさそうな顔をして、それが腹立たしくてアカトンボが咲いた。何にも知らない世界の中心で、狂気カモをコイに食われて早数年。神が見限った悪夢を誰かが、誰かの代わりに噛みしめてくれる夜。

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