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【66日目】 地獄のミニスカちょい飲みデート

"一緒にユニバに行った男に元カノへのピアスを買われる"という地獄のようなイベントを体験した私は、もはや「彼と一緒に飲み歩こう!」なんて気分にはなれなかった。

それでもせっかく東京から来てくれた彼の手前、あからさまな態度は取れなかったので、予定通り大阪駅の真横に位置する"福島"という飲屋街へ行くことにした。

ここには、例の『ちょい飲み手帖』に掲載されている店が15店舗くらいあるし、パンが好きな彼に紹介したい有名なパン屋や、私が久々に食べたい人気のつけ麺屋なんかもある。
何より私はこの街が好きなので、ここで飲み食いしてから梅田に帰ることにした。

でも、この街で交わした些細な会話が、私と彼の感覚のズレを決定的なものにする。

この程度で「チャラい」…?

私「ついた!福島!ここの高架下にね、たくさん飲み屋があるんだけど、どこも美味いし安いんだよ」
ガリヒサ「おー、今から行く店もその高架下のお店だよね」
私「うん、なんか肉寿司とか出してくれるって書いてたね」

肉系の居酒屋を2人でチョイスして、駅から並んで歩いて向かった。

途中、なんかビリヤード場みたいなやつの前を通った。

私「あ…なんかここ、前に来たことあるな」
ガリヒサ「えっ、ビリヤード?」
私「うん、たしかコミュニティの飲み会のあとに、男女6人くらいで。ガリヒサも、会社とか合コンとか何かの飲み会のあとで、ビリヤードとかカラオケに行くことない?」
ガリヒサ「うーん、まぁたまにあるけど…」
私「前はよく、ビリヤードでポカした人とか、カラオケの点数が低い人とか、トランプで負けた人が飲む!みたいなのやってたな〜」
ガリヒサ「…えっ!?チャラ!!!
私「…え?」

この程度で「チャラい」…?

じゃあ出会い求めてクラブやバーに行く女のことや、飲みサーに入る女のことは、一体なんて形容するの?

勝ち負けに関係なく、突然のコールで無意味に飲んでる大学生や、男女混合の合宿に行く人たちは?

会社や学校の飲み会で男女混合になることなんて余裕であるし、二次会がカラオケやスポーツ(ダーツ・ボーリング・ビリヤード等)になることだって当然ある。

流れで採点勝負になることだって普通にあるし、点数が悪いと飲むノリになることだって、これだけ生きてりゃそりゃあるよ。

というか、"何かゲームをして負けた人が飲む!"みたいな遊び、成人した男女なら1度は通る道じゃないですかね…

それって本人の資質に関係なく、シチュエーションによっては避けようがないし。

私「じゃあ、飲み会でのゲームって、何も賭けずにただ淡々とやるの?」
ガリヒサ「いや、男同士ならあるよ!負けた奴が飲むこと!」
私「え、じゃあ一緒じゃん」
ガリヒサ「でも、男女両方いるのはチャラい!そんなの、男が持ち帰ってどうこうするためのやつじゃん」

いや、コイツ中学生か…

なんだか私と彼の精神年齢や価値観に、少しだけズレがあるように感じてきた。


▼ 浮き彫りになってきた、私と彼のズレ(漫画)

私「うーん、でも私はトランプ好きだから、どの勝負でも大体負けなかったし、そういうのはむしろ男子のほうが嫌がってたよ。カラオケも点数が出る曲分かってるから、基本的に負けないし。そんな女だけが負け続けて泥酔したり、"男が持ち帰ってどうこう"みたいな状況、ただの1度も見たことないけど…」
ガリヒサ「でもやっぱ、ゲームして飲むのはチャラいよ」
私「男同士なら許されるのに?」
ガリヒサ「男同士でも、負け飲みはそんなにしない。男同士なら、その場の会計とか、現金を賭ける
私「金賭けるほうがチャラくない?てか賭博って犯罪だし…」

あぁ、もうこのズレは埋まらないなぁ…って、途中から思ってた。

みんな、自分がやり慣れてることに、背徳感なんて感じないんだよね。

私はトランプやカラオケに酒を賭けることがチャラいと言われても、それは全然分からない。

ただ"飲みの場がダレてきたときに、もう1度盛り上げるツールとして、それがあったほうが便利"としか思ってない。
ムリして喋るより、なんかゲームとかで場をつなぐほうが、ラクだし楽しい。

お金を賭けるのは基本ダメなことだと思っているし、負けた人が嫌な思いをする&全員の酔いが冷めてしまって本末転倒だから、何かゲームをするときは、適量のお酒を賭けるノリになる。

大学のゼミの飲み会とかで、マジメ以外取り柄がないような人たちとも一緒にやったりしてたんだけど、あれってそんなにチャラいことなの?

というか、その負け飲みのおかげで、彼が期待するようなチャラい展開になったことは、人生でただの1度もない。

彼は経験したことがないのに、一体何を言ってるの…?

もしかして、AVの知識?
『宅飲みで酔わせた女を王様ゲームで〜』みたいなあのシリーズですか?

というか一般的に考えて、別れた女と4ヶ月間も一緒に住んでる男のほうが100倍チャれーわ。

異性の体に指一本触れず、ただ健全にお酒を飲みながら大富豪を楽しむ男女、クソほど健全やないか。

いい加減にしろ、どうもありがとうございました…

って帰りたくなったけど、なんとか耐えて居酒屋に入った。

プロポーズエッセイ_006

変なとこで処女性求められても…


▼ そんな人には なっていて欲しくなかった

居酒屋には入ったけど、もう彼と喋ってても楽しくなかった。

こんなにも価値観が違ってしまっている。

たしかに、彼と付き合っていた頃の私は、合コンも相席屋もクラブもバーも行ったことがなかった(本気で存在すら知らなかった)し、マッチングアプリだってやったことがなかったし、男の人に一切免疫のないメンタルバージンだった。

カラオケでクラスの男子の1人が上裸になっただけで、ビックリして泣き出してしまったこともある。

誰かに告白されることもなければ、容姿を褒められることもない、ただの大人しい芋だった。

そしてそれは、ガリヒサも同じだった。

私たちは、よく似ていたから付き合ったんだと思う。
あんなにも会話が噛み合ったのは、同じ性質を持っていたから。

でも今は、変わってしまった。
私だけが変わってしまった。

彼はきっと、いろいろな経験を重ねて、内面も外見も見るからに変わってしまった私のことが、少し嫌だったんだと思う。
その感情は、おそらく"嫉妬"とか"嫌悪"に近い。

だから「チャラい」と言って批判した。
自分が経験していないことを、経験していることを嫌がった。

あぁ、センターパートの件と同じだ。
自分にできないことをやってる他人が嫌いなんだ。

そんな人には なっていて欲しくなかった。

別れた女との同居や、友人たちとの賭博はするのに、自分がやったことのない些細な経験にめくじらを立てるような人にだけは。

▼ めちゃくちゃ萎えながら食べた肉たち

これに肉寿司2貫+酒1杯ついて千円。
安い。店の名前は忘れた。
(『ちょい飲み手帖・大阪』掲載店)

私、一体なんでこんなミニスカで彼と会ってるんだろう。

彼に可愛い格好を見て欲しくて、自分のテンションを上げたくて、こんな格好で会いに来たけど、これすらも「チャラい」って思われてるのかな。

だとしたら、私はもうなにもできない。
彼の前ではなにもできない。

昔はなんでもできたのに。

私は彼が変わっていないことを残念に思い、彼は私が変わってしまったことを残念に思った。

せっかく東京から会いにきてくれたのに、ずっとアプローチを続けてくれたのに、私はもう、彼の期待するような女ではなくなっていた。

阿吽の呼吸は、もう無かった。

人の価値観はどんどんアップデートされていくから、昔は合わなかった相手と合うようになることはあっても、その逆はないんだなと痛感した夜だった。


▼ 次回、意外な人物が登場


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