石沢麻衣(2021)『貝に続く場所にて』講談社

例えば頭の中で、遠い異国に旅をしてみる想像をするとして、脳内のイメージを余すことなく繊細に文章化するとこんな小説になるだろう。題名からも感じるかもしれないが、難解である。村上春樹的な要素がある。日本人が何故か好きな要素でもあるので、見事に芥川賞も受賞したのだろう。

テーマは、東日本大震災後の喪失感、しかし生き残った者・直接津波を経験していないものとしての疎外感、過去と現在の複雑な重なり合いと追想。そのどうしようもない、もやもやとした感情を、そっくりそのまま長編小説に落とし込んだ。そんな一冊。

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