白石一文(2013)『ほかならぬ人へ』祥伝社文庫

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この世界には、何かが足りないのではなく、求めるものと求められるものの行き違いがほとんど全ての不幸の種である。殊、人付き合いにおいては、人間の全部でもって立ち向かう性質の行為であるから、結末は深刻である。

巡りめぐむ世界の中で、矢印の向かい合う幸運な人たちは果たしてどのくらいいるのだろうか。笑顔の雑踏で家路を急ぐ者たちを見るとき、目に見えないどこか密室の中に留まる人々のあることを忘れてはならない。

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