井上達夫(2019)『普遍の再生:リベラリズムの現代世界論』岩波現代文庫

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普遍性の主張を恣意的に利用する昨今の大国の動向を憂いながら、文庫版として再誕したリベラリズムの教科書。自他の間に隔たりがあることを認識しながらも、取り込もうとしたり逆に閉じ籠ったりするわけでなく、自己を批判的に吟味し続け、対話の中での相互承認から共に立つ普遍の地平を見い出し続けようとする生き方を擁護する。

しかれども、この世界に神はいない。この世に生きる全ての人間と、心の内をさらけ出す時間は私たちには残されていない。普遍が本当に普遍であるのか、永遠に確かめることが出来ないまま、安心することを許されない生き方に我々が耐えられるようになるためには、哲学者のほかに誰のどういった仕事が必要なのか、それを考えることも忘れてはいけない。

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