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書評

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2022年6月の記事一覧

篠田節子(2019)『冬の光』文春文庫

大学闘争やその後の高度成長期を生きた一人の男の人生を描いた物語。切っても切り離せない男女の関係のどうしようもなさと、人生の夢と現実の折り合いのつけ方の二大テーマを綿密に書き上げる。

この世界には絶対の悪意は滅多になくて、それでも誰かのやむにやまれぬ行動は、別の誰かを深刻なまでに裏切ることになってしまう。仕事も恋愛も、皆が皆、望みの通り果実を手に入れられる世の中は実現しようがないのであろうか。