コタツととある日の午後
「ねぇ……今って何時?」
「んー? 2じぃ」
「え……? マジで? もうそんな時間なの?」
「そうだよ~。こたつって本当気持ちいいよねぇ」
「そうだよなぁ……ってそうじゃねぇよ! 俺ら今日バイトだろ? 遅刻するじゃん」
「えー、今日はお休みしない~?」
「あ、じゃあお前今日明日の飯無しな!」
「え、ダメだよそういうのは。DVだー!」
「DVじゃねぇよ。働かざる者食うべからず、だ」
そう、こたつでゴロゴロしていたら、バイトの時間が迫っていたのだ。
俺たちはまだ大学生で、ルームシェアというやつとメンバーのバイトでなんとかやっているのだ。
「もー、しょうがないなぁ……」
相方もやっとモゾモゾとこたつから這い出す。
「ほら、給料しょっ引かれるぞ。急げよ」
「分かってるよー。先行ってて良いよ」
「いやいいよ、待ってるから。俺のバイクで飛ばせばなんとかなるだろ」
「ふーん。じゃあ急ぐから待ってて!」
「おぅ」
数分後……着替え終わった相方にヘルメットを投げ、俺は外に出るとバイクに跨がって相方を待った。
急いでいるので相方が俺の後ろに乗るのとほぼ同時にバイクを発進させると、相方は悪態を吐(つ)きながら俺にしがみつく。
「文句言うなよな。よし、とばすぜ!」
「法廷速度守ってねー!」
「当たり前だろ? お巡りに捕まってる隙はねぇよ」
そんなこんなでバイト先に、開始時間ギリギリで滑り込んだ俺たちは、先輩に呆れられながらも庇ってもらうことができ、減給は免れることが出来たのだった。
「今度からアラームセットしような」
「えー、今日も間に合ったし多分もう寝坊しないしー」
「バカ! 今度こそお前は置いて来るかんな!」
「えー、だからそれDVだよー」
「だから……DVじゃねぇって」
ある休日の、ある午後のお話――
Fin.
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