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【掌編小説】インド亜大陸
仲間と一緒にいた日々は、まるでステンドグラスのように輝いていた。
でも、僕たちは引き裂かれてしまった。
それからは深い孤独にさいなまれた。
広い沖の上にいるのは、僕一人だけだった。
仲間を目指して、僕はひそかに移動を始めた。
それがたとえ亀の歩みのような速度でも。
頭上を颯爽と飛び越す鳥に笑われようとも。
できることは、ただ愚直に前に進むことだけだった。
気が遠くなるような時間がたった。
多くの生物が生まれ、絶滅し、また生まれた。
仲間の姿はまだ見えない。
鳥たちが憐憫か冷やかしか、仲間のその後を教えてくれた。
いち早く流れにのり、他の仲間と出会えた者。
孤独に適応し、一人でいることを選んだ者。
まだ必死になって移動をしているのは僕だけらしい。
不器用でも構わない。
無心で前進を続けた。
栄華を誇っていた恐竜たちが地球からいなくなって暫くたったころ。
ある日、遠くに仲間の姿が見えた。
長かった。
本当に長かった。
手を振ると振りかえしてくれた。それがたまらなく嬉しかった。
実際に会えるまでまだ時間がかかりそうだが、もう迷いはない。
僕は前進を続けた。
これは、小さな積み重ねがやがて大きな成果を生むことを教えてくれるよい事例である。彼はその後なんと世界で一番高いヒマラヤ山脈を作りあげた。
そして、今でも前進を続けている。
孤独や葛藤は、ともすると原動力になるらしい。
ここまでお読みいただいて本当にありがとうございました!
大陸移動説の話でした。
2億年前、1つの大きな大陸である、パンゲア大陸から分裂したインド亜大陸は、最大で年間約18cmのスピードで北上を続けます。そして約4,000万年前までにはユーラシア大陸に衝突。現在も年間約6cmほど動いているそうです。その話を創作してみました。
皆様が今日も心穏やかに眠りにつけますように。
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