【旅行記】おばちゃんのおせっかい
精神がどん底の状態になってしまった前職を辞めてから、一週間ほど旅をしたことがあります。
地元新潟から北海道の知床までの旅でした。
1年たった今でも鮮明に思い出せる言葉があります。
――「一番高いハンドクリームを買いなさい」
という言葉です。
以下、当時の様子を回想して綴っていきたいと思います。
あらすじ:
知床のおいしい食材を食べたいと思った私は、地域の居酒屋に向かいます。
そこで地元のおばちゃんに出会い、新潟から電車で来たとか、少しばかり立ち話をしていました。
おばちゃんはふと私の手を見て、言いました。
おばちゃん:「あんた、手がボロボロじゃん!」
私:「……」
思わず自分の手を見ると、指先はあかぎれで切れているし、手の甲は乾燥してゴワゴワ。
びっくりすることに、私はそこで初めて、手が荒れていたことに気づいたんですよね。
おばちゃん:「痛くないの?」
私:「……いや、痛くはない――ですかね、なんかもう慣れたっていうか……」
おばちゃん:(問答無用で私の手を握り、顔をしかめる)「ねぇちょっと見てよ!(おじちゃんを呼ぶ)」
おじちゃん:(おだやかな顔で)「ありゃ~、これは確かにひどいなぁ」
おばちゃん:「見てごらんよ。歳くった私の手の方があんたよりよっぽどつやつやだよ。ちゃんとハンドクリーム塗ってる?」
私:「……持っては、います」
おばちゃん:「ちゃんといいのを使ってるんでしょうね」
私:「ま、まあドラッグストアの一番安いやつを」
おばちゃんはため息をつきました。
おばちゃん:「私なんか一番高いやつを使ってるよ。そうだ、あんたにあげるよ!」
(ガサゴソと自分のバックを探す)
「あー!なんで今日家に置いてきたんだろう!」
私:「いや、自分にはいいですよ、そんな高いのなんて。」
おばちゃん:「ダメ。あんた新潟に戻ったら絶対に売り場で一番高いハンドクリームを買いなさい」
――と、言い渡されました。
そして地元新潟に戻ってから。
おばちゃんの言葉が頭から離れず、私は新潟で一番のショッピングモールへ訪れました。
一番高いハンドクリームを探すために。
その値段、なんと3000円でした。
……びっくりするほど高い!
無職の私には厳しいと、心が折れそうになりますが、おばちゃんの顔が脳裏に蘇り、購入しました。
その夜、ハンドクリームを塗ってみました。
塗り心地がとても良くて、今までかいだことのないようなとてもいい香りがしました。3000円するだけあるなぁ、と心から感動しました。
そして、何故か幸せな気持ちになれたんですよね。
今から振り返ると、当時、私はやらなければならないことにがんじがらめになっていて、自分を気遣う余裕すらなくなっていたように思います。
正確には「やらなければいけらないこと」ではなく、「やらなければならないと自分が思い込んでいたこと」かもしれません。
生きていると、様々な「やらなければならないこと」が溢れてきますが、もしかしたら自分自身が健やかに暮らすこと以上に大切なことなどないのではないか、とおばちゃんから気づかされました。
おばちゃんに感謝の思いを込めて。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
みなさまが今日の夜、穏やかに眠りにつけますように。
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