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『古くてあたらしい仕事』に学ぶ、売れない時代の本づくり/編集者の言葉#23

おはようございます。今日は校了明け。ちょっとホッとして、積ん読してきた本をあれやこれやと、眺めています。その中で手に取ったのが、ひとり出版社夏葉社の島田潤一郎さんの本『古くてあたらしい仕事』。何度も再読した本ですが、今日は、本書についてご紹介したいと思います。

島田さんの本は、以前にも『明日から出版社』を拝読していて、感銘を受けてnoteにも記事を書きました。

『古くてあたらしい仕事』は、『明日から出版社』出版から5年後、つまり夏葉社創業10年の2019年に刊行された作品です。本書では、創業10年までの道のりと、本を読むことについて、本が売れない時代に本を作ることについてが述べられています。

ご紹介したい名言はいろいろあるのですが、まずはこれ。

 思うに、読者はすでに評価が定まっているような既知のものよりも、生活にほんのすこしの風穴を開けてくれるような、あたらしいものを望んでいるのだ。

古くてあたらしい仕事

島田さんによれば、「あたらしい」とは「最新」の意味ではありません。「いまの時代に忘れられがちなもの、いまの時代に光が当たっていないもの」、そこに新鮮さがあるというのです。

そういう目で見ると、島田さんの手がけている復刻本の刊行というのは、古いように見えて「あたらしい」のですね。しかし、ただ復刻するだけでは古いままです。

 本をつくるということは、その作家の、その作品の、いちばん瑞々しいと ころを掬い上げるということなのだと思う。
 古い本を復刊するときだって、それは変わらない。三〇年経っても、五〇年経っても、古びないもの。川の源流のようにキラキラといつまでも輝いているもの。それが伝わるように本の設計を考え、編集をし直し、デザインをする。

古くてあたらしい仕事

これは、復刻本のみならず、書き下ろし本や連載作品をまとめる際にも、効果がありそうです。

島田さんは、本が売れない理由として、人口の減少とインターネットを挙げています。インターネットは、1995年に「Windows95」が発売されたと同時に、みるみるうちに情報を無料にしていきました。そして情報を売っていた本や雑誌は大きな影響を受けました。

その影響はいまもなお続いています。しかし、あたらしい波は出版を変えつつあるかもしれません。たとえば、独立系のセレクトショップ的なあたらしい書店が次々に生まれています。あるいはリアルやオンラインを含めた読書会が数多く行われ、本にまつわるイベントも増えました。このnoteにしても読書について書かれた記事がいくつあることか。

そして、島田さんのような「あたらしい意識」を持った編集者の皆さんの登場。書籍の売上額が息を吹き返すのも、近いかもしれませんね。

最後まで読んでくださりありがとうございました。
よい一日を!

ただいま4刷 構成を担当した書籍が発売されました!








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