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CloudCIRCUS Meeup#5〜"良い"を定義する〜

こんにちは!
クラウドサーカス開発部です。
第5回のMeetupは、Ruby言語のコミュニティ(プロダクト)マネジメントを担うまつもとゆきひろさん(以下、Matzさん)、クラウドサーカスのARサービス(LESSAR, COCOAR)のプロダクトマネージャーを務める多田さんとBowNowのプロジェクトマネージャーの馬場さんに登壇いただき、プロダクトマネジメントをテーマにさまざまな視点からディスカッションをさせていただきました。

本記事では、記事を前半と後半に分けてリリースし、今回はプロダクトマネジメントにおける「価値基準」についてお伝えさせていただきます。
※今回、YouTubeは諸事情により非公開とさせていただいております。

<言葉の定義>
※プロダクトマネージャー:PdM
※プロジェクトマネージャー:PM
※コミュニティマネージャー:CM

プロダクトを伸ばすための"良いを定義する"

渋谷:まずはじめに、今回のテーマは、月に一度、BowNow開発メンバーとMatzさんとのMTGで、プロダクトグロースについて話す機会があった際、Rubyのコミュニティリーダーとして活躍されてきたMatzさんがコミュニティを成長させる中で実践してきたことと、今、PdMに求められていることが近しいという話になったことがきっかけでした。

各登壇者の立ち位置としては、MatzさんがCM、多田さんがPdM、馬場さんがPMとして、ディスカッションの中でさまざまな化学反応を起こしていきたいと思います。

プロダクトの価値基準をどのように定義しているのか

渋谷:では早速、最初の本題に入りたいと思います。まず、PdMとしてプロダクトの価値基準をどこに置いているかということについて、多田さんからお願いします。

多田:下図のようにプロダクトマネジメントトライアングルをうまく成り立たせられているかどうかが価値基準になると考えます。本来はMRRや売上、他にはプロダクトビジョンの達成度合いなどを見ながら、開発する機能がうまく作れているかを指標として確認していきます。

出典:https://productlogic.org/2014/06/22/the-product-management-triangle/

しかし、私個人の意見としては、細かい価値基準は各プロダクトによって変わるので、それよりもPdMが「市場をどうしていきたいか?」を考え、意思決定することが重要になると考えます。意思決定を行うという意味では、描いているビジョンをどこまで強く持っているかという点と、その上で、価値基準の達成度合いが重要になるという点で、コミュニティのマネジメントと共通している部分かと思います。

渋谷:プロダクト・コミュニティが目指すビジョンが根底にあり、そのビジョン達成のために様々な指標が派生しているイメージでしょうか?

多田:そうですね。人によっては「お金」の優先順位が高い場合もあるので、それぞれの優先順位を受け入れたうえでビジョン達成を成り立たせることも求められます。

渋谷:Matzさんはいかがでしょうか?

Matz:Rubyの場合は、自分たちがよりよいツールを手にできるかどうかという点が価値基準になります。Rubyはプログラミング言語なので、開発者が使うためのものになります。その一方で、Rubyを作っているのも開発者なので、自分たちのためのツールでもあるという構図になります。作った機能を自分たちが使って、便利にソフトウェア開発をします。最終的にはRubyを使ったソフトウェアがリリースされて世の中に対して価値提供をしていく。この循環が継続されることを目指しております。

ただし、オープンソースソフトウェア(Ruby)の場合は、お金が流れないので、そもそも給料が発生しない環境であることが前提となります。当たり前のように思うかもしれませんが、興味がある人が勝手にやってきて、仲間に対して一緒に頑張りましょう!というのがあっても、お金を払うからこれをやれということは基本ありません。そこは多田さんが担うPdMと決定的に異なるところだと思います。

では、コミュニティが何をモチベーションに成り立っているかというと、1つ「名誉経済」という要素です。つまり、あの人はRubyのこの部分を担当したすごいプログラマーなんだという名誉をいただくことです。

いずれにしても、自発的にプロダクトを良くしたいという気持ちやモチベーションを持っているので、私のようなCMは彼らのモチベーションを阻害しないようにコミュニティを育てるということが価値として認められるかの基準にもなります。

渋谷:たしかに根底の部分は同じようだと思います。それにしても「名誉経済」でコミュニティが成り立つのはすごいですね。

Matz:「良いソフトウェアを作って、世の中に価値を生み出したい」というモチベーションをほとんどの人は持っていると思います。中には違うモチベーションでやっている人もいますが、多くの人は自分が関わるプロダクトを良いモノにして、世に出すことによって価値を創造したいという点ではほとんどの人は合意してくれると思います。

一同:共感….

Matz:ただ、「良い」の定義はされていません。人によってそれぞれ「良い」は異なります。だからこそ、チーム全体としてソフトウェアはこうあるモノだと定義する人が必要です。チームで頭突き合わせて決めるのではなく、みんなの意見を聞きながら、最終的に誰か1人による決断が行われる必要があると思っています。それがPdM、CMだと思っています。

馬場:その点で言うと、Matzさんは不特定多数のメンバーにビジョンや自らの意思決定を共有すると思います。それほど多くないプロダクト開発メンバーであれば、共有できるイメージが湧きますが、対象が不特定多数になるRubyのコミュニティに対してはどのようにビジョンの共有をしているのでしょうか?

Mtaz:オープンソースも規模によって違うので一般的な話が難しいのですが、Rubyの場合、比較的顔を合わせて議論したりするチームが100人ぐらいいます。アクティブな人はだいたい20人ぐらいいて、そこで「良い」の定義をします。もっと広い対象だと年にカンファレンスが年に数回開かれているので、そのカンファレンスのキーノートスピーチで未来のRubyについて発表することによって、全体に対してロードマップ、方向性や目指しているものを提示していくことでビジョンを提示しています。

個別のカンファレンスが開かれないような小さいオープンソースソフトウェアの場合は、開発している人たち数人の意見交換によってビジョンが共有されていくでしょう。Linuxのような巨大なシステムだとメーリングリストのような所で意見交換を通じてビジョンが共有されている。コミュニティの運営の仕方や規模はそれぞれ違いますが、誰かコアとなる人がビジョンを提示していくべきだと考えます。逆に誰か1人が決まっていないと迷走してしまう可能性があります。

多田:意思決定に関して、PdMも同じだと考えます。最終的なビジョンはPdMが作っていくべきだと思うので、そこに責任を持っているのはCMと同じかなと思います。
PMはプロダクトのビジョンを決めることは少ないと思います。開発環境などにおいて定義されているモノはありますか?

馬場:開発環境においては、BowNowはもともと大きいシステムであり、歴史もあるので、決められたモノを使い続けるというのがベースにはあります。ツールや体制などについては、常にアップデートが必要になるなと思っております。その中での基準でいくと、開発者が使いやすいモノ生産性が高くなるモノになるかと思っております。

多田:なるほど。その基準をPdMに意見として持っていったり、認識をすり合わせをしたりしているんですか?

馬場:正直、そこまではなかなか行き着けていないのが現状です。いずれにしても、決めた期間の中で、開発として成果を上げられたかというのはPdMから求められます。PMとしても月次のスプリントで実際に実装した機能が使われているのかみたいなところは開発目線から共有してるので、開発側の取り組みをビジネス側にも理解してもらえるように努めています。

Matz:今の話で面白かったのが、馬場さんはPMで、多田さんはPdMじゃないですか?

馬場さんの話を聞いているとPMのポジションが開発側に寄っている認識です。会社によってはPMはビジネス寄りに取られることもありますが、クラウドサーカス(以下、CC)でのPdMとPMの立ち位置とはどんな感じですかね?

多田:本来、PMはビジネスよりかなと思っております。PMって目標に対して期間が決まっているモノを成功に導くポジションだと思っているので、本来は開発とかビジネスとしての取り決めは必要ないかもしれませんが、CCの場合は、歴史的に開発を取り纏めることができるメンバーがいなかったので、PMが開発側に寄っているという背景かと思います。

馬場:PMは何をいつまでにどのように作るか?という観点からプロダクトの成長を促すことが求められます。PdMは、その前段として、誰にどんな価値を届けるのか?なんでその機能を作るのか?を考えて、プロダクトの成長を導くことが求められます。

型にはめすぎるのも一概にいいとは言いませんが、そういった定義があり、私はPMとしてのミッションを意識しています。ただ、PdMと同様の目線が必要だと感じているのも事実です。いったんは自分の責務は、開発寄りであることを意識して、PdMにお願いできるところは担ってもらうというのがいいのではないかと思います


前半まとめ

渋谷:いかがでしたでしょうか?良いプロダクトとしていくために定義するべき「良い」についてお話していただきました。
後半はPdMに欠かせないプロダクト愛をテーマに熱く議論していただいた内容を公開します。

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