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ベンチャーマインド

20年以上前のある日。ある人の紹介で神保町の雑居ビルに設立したての会社を訪問しました。社長を入れてメンバーは3人。
全員エンジニアのその会社に始めてエンジニア以外のジョインが決まった瞬間です。

当時はスタートアップなんて素敵な言葉を使う人はおらず、ただのどベンチャー。
私はと言えば、子供が生まれたばかりで、妻には内緒の転職(いつもですが)でした。そこには根拠のない楽観と、文字通り会社を作っていくという変な高揚(だけ)がありました。

その後、正式な入社までの間に再びその社長に呼び出され、「この会社にいくらくらいお金出せますか?」という、全く予想していなかったことを聞かれます。
会社というのは労働の対価としてお金を頂けるものだとばかり考えていた私が、初めてこれは労働ではなく、自分の時間を含めた出資なんだと理解した瞬間でした。
社長からは「生活に無理のない範囲で出せる金額」と言われたので、またしても妻に内緒で、将来家を買うときの頭金にするはずだった貯金の一部を取り崩して、設立3か月目の、エンジニア3人だけの、売上0の会社の銀行口座に100万円振り込みました。
ATMに並んでいる時、生まれたばかりの子供の顔が浮かんだのを覚えています。大丈夫なのか。

今の時代、このような話はそぐわないのかもしれません。
だけどこの経験により、ごく一端ではありますが、多くの起業家たちが背負っているプレッシャーを肌で感じることができたかなと思っています。

この100万円、その後上場してそこそこのお金になりました。(結果論ですが)
頭金になるはずだったお金で自宅を購入することもできました。(結果論ですが)
それ以上にこの社長のおかげで、なにか本質的なものに触れることができた気がしていて、今でも大切な思い出になっています。
すべて結果論ですけどね。

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