看護師賠償責任保険の重要性について②/虐待の冤罪/精神科病棟にて。

 対面している虐待防止委員会のスタッフは公認心理士であるとのことだった。委員会は設立されて間もない。武山病院の事件の報道があった後くらいに設立された。回覧にて知っていたが、自分には正直関わりがないことだと思っていたため、関心が無かった。
 公認心理士(以降スタッフA)が言うには、病棟にて勤務しているスタッフが、写真の女性患者(以降患者A)の腕に内出血が見られた、と。そして患者Aに事情を聞いたところ、スタッフに叩かれてできたものであると話したことからヒアリングを行なっているとのことであった。その時は状況を全て把握できていなかったが、患者Aについては、精神科ではあるものの妄想幻聴などの症状はなく、認知症ではない、状態によっては不安焦燥感は強く虚言癖はあるものの、自分に危害を加えてスタッフのことなら言える程度の能力がある、との評価から、「まず、本人に聞いてみたらいいとおもいます。」と返答した。
 スタッフAは「分かりました。」と言い、その日は終了した。

 後日、看護部長より電話があり、本来2連休であるはずの日に職場に来るようにと指示があった。貴重な連休で予定を入れており、どうしても無理であることを伝えると、次回日勤の日に看護部長室に来るように指示があった。決して暇な病棟での勤務ではなく、人手不足な現状で、それでも病棟ではなく看護部長室に来るように指示があったことから、患者Aの内出血をさせたのが自分ではないかと思われていることを推察した。混乱はしたが、とにかく正直で誠実な対応こそが自身の身を守り、問題の早期解決につながると思っていた。自分が万が一内出血をさせた、であるのならいつ、どんな時であろうかと考えた。

 後日、看護部長室にて。対面したのは看護部長ではなく、以前と同じスタッフAと、リスク委員会の部長であった。そこで、「実は患者Aが君に叩かれて内出血ができたと言っている。」とスタッフAが言ってきた。予想した通りだった。虐待したのか?と聞かれたため、否定し、仮に内出血が起こるとしたらこのような場面が考えられる、と気切処置やおむつ交換など患者に触れる場面を挙げた。
 リスク委員会部長が、「君の普段の患者への接遇など、病棟スタッフ集め聞いたよ。」と。見に覚えがない患者への不適切な対応、受けたことのない接遇指導、などミーティング形式のヒアリングで他スタッフが意見を出し合ったとのことだった。病棟スタッフの中に看護学校の同級生がおり、その時の様子を後日聞いた。腹立たしかった。ただ、実際に患者Aの腕に内出血は出来ていることから、原因究明などの協力はしなければいけないという思いはあった。とにかく聞かれたことに答えた。
 対面したいたリスク委員部長、スタッフAが退室し、看護部長が入室してきた。
「話は聞いたよ。君の看護技術の未熟さが招いたことだ。まず反省しなさい。接遇についても、これまで指導されているんじゃないか?。とにかく患者と家族に謝罪しないと。警察が入り、傷害事件になったら君の看護師免許にも傷がつくかもしれないからね。これからも看護師としてのキャリアを積んでいくつもりだろ?」

 どうやら、自分がやったという認識は覆らないようだった。

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