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「恋愛」はたくさん描かれているのに…

アセクシャル・アロマンティックを自認する立場から思う、「恋愛」以外の生き方の「参考書」になり得るものがあまりにも少ないのではないか、というお話。

おそらくこの世の中には恋愛を経験し、恋愛…そこから発展する可能性のひとつとしての結婚を軸に人生設計をしていく人が多いのであろう。
幼い頃から、物心ついた頃から私の身の回りにある子供向けのフィクション作品ですら、恋愛物語やラブソングは溢れかえっていたように思う。小学生がメインターゲットの少女漫画誌でさえ掲載・連載している作品のほとんどが恋愛を主軸にした物語だった。
女の子は恋をして、男の子に守ってもらって、結婚をして素敵なお嫁さんになって、子供を産んでお母さんになる…。今となっては少し古い価値観になりつつあるが、私が幼い頃の「女の子とは」という価値観はこんな感じであったと記憶している。
(私自身、この幼い頃に感じていた価値観はもう古いし、"女は男に守られるもの"だとは一概には言えないし、結婚して家庭に入り子供を産み育てること"だけ"が女性として生まれた人の「正解」ではないと思っている)


私自身はアセクシャル・アロマンティック寄りの立場を自認しながら、今まで全く恋愛感情に近いものを身近な人物に抱かなかったかと言われたら、そうではない。ただ、そのどれもが恋愛のようではあるものの恋愛未満に感じられた。
ある時は「これは最近読んだ恋愛物語に感化されて自分が勘違いしているだけだ」と思って実際そのとおり・数日で感化されていた擬似恋愛感情は消失し、またある時は恋愛作品に感化されたわけではなく本当にこの人のことが好きなのかもしれない…と思ったが、その「好き」は「恋愛感情」としての「好き」かと聞かれたら少し違う…と思うこともあった。いずれにせよ私は、幼い頃から今まで、世間に定義され、世の中に溢れかえっている「恋愛感情」と「自分が他人に向ける愛を持った感情」とのズレを感じて生きてきた。


これだ、これで私は困っている。
これは私自身が自分で一応「アセクシャル・アロマンティック(場合によってはフィクトセクシャルの可能性も)」を自認してはいるものの、本当にそうだとは言い切れないし、正直いくらそういった性自認や性的指向の専門家に聞いて回ったとしても完璧に「自分はこうだ」と定義することはできないと感じている。
明日には急に「恋」というものを自分なりに理解するかもしれないし、一生理解しないまま終わるかもしれないからだ。


こういった(恋愛感情が無いと言えば良いのか、分からないと言えば良いのか)人間は少数派であるし、今でこそその少数派による主張や理解が浸透しつつある世の中に変わってきてはいるが、私という人間の自認は、私以外には存在しないし、カテゴリーとして近しい人々の存在も少ない。


人は、特に女の子は幼い頃から慣れ親しむ女児向け・少女向け漫画等でたくさん「恋愛」のパターンを(フィクションも含めて)見る機会がある。フィクションゆえの脚色はあれど、「恋愛」に違和感のない子たちはやがてそれらの作品の参考になる部分を(時には無意識に)参考にしながら、自らの恋愛経験を持っていくのであろう。

でも私のような、恋愛そのものに違和感を感じていて、なおかつ恋愛を現状として必要としていない人の、女性の生き方は、あまりにも「参考書」が少なすぎる。
先述したが、本当に最近になってからようやく、既存の価値観や多数派だけに縛られない少数派にも目が向けられるようになってきた。私は20代を折り返す年齢になってようやく、手探りでそれらの「増えてきつつある参考書」の中から自分の価値観形成の力添えになるものを選び取っていかなければならない。
ここに至るまで、いわゆる10代の「青春」の時期を、他人との間に生じる「愛情の種類のズレ」を感じ、「恋愛感情を抱かない自分」が"おかしい"のではないか、と苦しみながら生きてきて何とか切り抜けて、ようやく…だ。


こういう話を「恋愛」をする人に話しても「いつか分かる時がくるよ」「いつか運命の人に出会うよ」「素敵な人に出会えると良いね」と、私の不確定な未来の中で勝手に「私にも分かる日が来る」「私も恋愛したくなる時が来る」と根拠もなく決めつけられてしまい、とても苦しかった。そうかもしれないけどそうじゃないかもしれないじゃないか。そもそも、恋愛にそこまで固執しないと生きていけないのか…?そんなことは無いはずなのに…。



過去に思いを馳せたところで過去は変わらないのだが、つくづく、私が子供の頃から「恋愛だけが人生の全てではない」と思わせてくれるような作品に触れる機会があれば、またはそう教えてくれる授業が学校であったら……と思ってしまう。

せめて今この瞬間、そしてこれからの未来ではLGBTQとか、ストレートとか、アセクシャルとか、フィクトセクシャルとか良い意味で全て関係なく、恋愛したい人は恋愛して、恋愛に違和感がある人はまた別の考え方で人付き合いをしながら、いずれにせよ対人での最低限の礼儀を忘れずに、そして楽しく日々を過ごしていけるような時間が来ることを祈って…
性的マイノリティに属するのであろう、アセクシャル・アロマンティックの立場の私はここに記しておく。

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