【院長執筆】美白治療とは、表皮のメラニン色素の量をへらすことです
はじめまして、美容皮膚科医の田宮エリーといいます
当院ではどんな治療を、どんな目的で行っているのか、わりと詳しめにお伝えしたいと思います
ややオタク要素つよめですので、退屈なさるかもしれません、ごめんなさい
ご興味のあるかた、のぞいてみてください
まずは、お肌の色を調整する治療からです
美白治療、などとよくいわれます
美白治療とは、表皮のメラニン色素を減らすこと
当院では、トーニング、ピーリング、プラズマシャワー、内服薬と点滴を組み合わせて効果を出しております
この治療でターゲットとなる部位は、皮膚の表皮です
上の図で、いちばん上、からだのいちばん外側です
こんな構造をしています
厚さは、お顔で約0.2㎜、粘膜に近いほどうすくなり、お目もとや唇近辺では、約0.03mmくらいまで薄くなります
ですから、お目もとや口もとは、小じわや色素沈着が目立ちやすいのです
表皮のいちばん下で角化細胞が分裂し、古いものが上に押し上げられ、だんだん水分を失って、やがて角質となり垢としてはがれおちていきます
黒っぽくて突起のある細胞が、メラノサイトといい、メラニン色素を作って、まわりの角化細胞に分け与えています
シミとは、メラノサイトが必要以上に色素をつくり続け、その付近の角化細胞が大量の色素をうけとってしまっている部位です
でも、メラノサイトは、
わるぎがあってそんなことをしているわけではありません
細胞の中心には、核という、遺伝子情報がつまった大切な部位があります
この核を守るために、メラノサイトはせっせとメラニン色素をつくっては、まわりの細胞たちにわたして、帽子のようにかぶせてあげているのです
核を守るための帽子ということで、メラニンキャップともよばれます
稚拙な絵ですみません
メラノサイトたちは、刺激をうけると危機感を感じて、より多くの色素をつくるという性質があります
とくに、20代~30代の女性ではこの傾向がつよいのです
ヒトを含め、生き物はすべて、種族保存本能に基づいて、核をしっかり保護し、遺伝子を次世代に伝えるようにできています
ですから、妊娠の可能性がある年齢の女性は、少しの刺激でもメラニン色素がすみやかにふえるように、プログラミングされているのです
実際に妊娠すると、このはたらきはさらに強化され、シミが濃くなる傾向にあります
妊娠性肝斑という病名もありますが、これは、日常的に紫外線やまさつなどの刺激を受けやすい、頬骨のあたりにメラニン色素が蓄積した状態です
女性ホルモンのはたらきで過敏になったメラノサイトたちは、ちょっとした刺激にも反応して、いつもよりいっぱいメラニン色素をつくってしまうのです
美白治療とは、表皮のメラニン色素の総量を減らす、ということです
メラニン色素の蓄積量をへらす、ということは、色をいっぱい持っている古い細胞を排除し、新しい細胞になるべく色素を与えないまま上にあげる、ということです
具体的にどうするか、順番におおくりいたします
トーニングとは、黒い細胞だけを破壊すること
ここで、レーザートーニングのご説明をしたいと思います
皮膚の色調が均一に明るくなるように、お顔全体にレーザーを照射する方法をトーニングといいます
当院では、1064nmの波長を使用しています
補足ですが、レーザーとは、
Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation
の頭文字です
直訳すると、輻射の誘導放出による光増幅、です
よくわかりません
なので
自然光には、さまざまな波長の光が含まれていて、それぞれ勝手な方向に散乱していますが、なんらかして、そのうちの一つだけの波長をとりだして、一つの方向に強くあてる
とわたしは理解してます、簡単のために
そうすると、その波長の光の性質を利用することができます
とりだせる波長は、わたしが知っているものですと、このくらいです
↓
それぞれ、一定の化学結合した結晶体から励起される波長で、ルビーやアレキサンドライトは宝飾品としてみなさまご存じの天然石です
YAGは、
Yittrium イットリウム
Aluminium アルミニウム
Ganet ガーネット
の頭文字で、人口の結晶体です
YAG結晶から得られる波長が、1064nmです
ところで 1nm=0.001µm=0.000001mmでして、
紫外線の波長が380nm以下、赤外線の波長が780nm以上となってます、ご参考までに
ごらんのように、1064nmの波長に光は、メラニンと酸化ヘモグロビン(血液)に吸収されやすい性質を持っています
これを皮膚にあてると
表皮の、メラニン色素を多くもった細胞が優先的にレーザー光を吸収し、そこで熱が発生し、細胞の水分が蒸発します
低出力で照射すると、これが個々の細胞レベルでおこり、メラニン量を多くもつ細胞から順番に死滅し、古い角質とともに垢となって脱落していきます
黒い細胞ほど、さきに死滅する
これが、トーニングです
1回の照射で除去できるメラニン色素の量と、ほぼ同じ量の色素が約2週間でつくられますから、その手前で次の照射を行います
これをくりかえしていくと、表皮のメラニン色素の総量が減っていきます
もちろん、回数を重ねるごとに色素の量がへっていくので、それに応じてパワーを上げていきます
当院では、お肌を白くしたい時期は、7~10日くらいの間隔で照射するのをおすすめしています
あるていどご満足いただけるくらいの白さになったら、キープのためにハイパワーで月に1~2回の照射をおすすめしています
ダイエットと同じで、へらしたい時期と、キープでいい時期では、照射のしかたがちがいます
IPLなどの光治療はオススメできかねます
この図でいう、IPL(フラッシュランプ)は、波長を幅広くとった光を照射する治療です
有名なものがフォトフェイシャルです
前回のご説明のとおり、レーザー光とは1種類の波長をとりだしたものですので、フォトフェイシャルはレーザー治療ではありません
メラニン色素に吸収されやすい波長が多く含まれた光ですので、色素を多く持った細胞が多数あつまっていると、それがすべて死滅します
すると、残骸が目に見えるレベルになります
濃いシミの部分が、照射後にかさぶたのようになって、しばらくするとはがれる、という反応です
トーニング治療では、レーザー光を低出力で照射しますので、シミの部位でもとりわけ濃い細胞がミクロレベルで死滅する程度ですから、肉眼では確認できません
シミの部位に、レーザー光を高出力で照射すれば、同じように残骸が目に見えるくらいの多数の細胞を死滅させることができます
ですが、この治療は、肌の色をより濃くするかもしれないというリスクがあります
なぜか
これからご説明いたします
メラノサイトはとても心配性なので、余計な刺激は与えないにこしたことはないのです
シミとりレーザーやフォトフェイシャルのリスクについてお話しします
メラノサイトは、表皮の角化細胞にある遺伝子情報を守るために、刺激をうけると、より多くの色素をつくって、まわりに分け与える、という性質があります
とくに、妊娠する可能性のある年齢の女性は、このはたらきがつよく、メラノサイトはとても敏感な状態にあります
よくいわれる肝斑とは、頬骨あたりに肝臓のかたちにできるシミです
この部位は、衣類の着脱のときやタオルで顔をふくときにこすれたり、紫外線がいちばんあたりやすかったり、なにかと刺激をうけやすいところです
ですから、肝斑がある方は、シミとりレーザーやフォトフェイシャルで悪化する、といわれます
ですが、問題なのは、肝斑があるかどうかではありません
日常の、ささいな刺激にすら反応して、いっぱい色素をつくってしまうほど、メラノサイトたちは心配性なのだ
ということです
肝斑は、ある日いきなりできるわけではありません
シミの数が増え、ひとつひとつが大きくなり、お互いにくっつきあって、いつのまにか頬骨あたりが、もやっと薄暗くなっている
ここで、はじめて肝斑という病名がつくだけで、それ以前からずっと、メラニン色素がつくられやすい肌状態なのです
その状態で、多数の細胞が死滅するような刺激をあたえてしまうと、ただでさえ過敏なメラノサイトたちはすごい危機感で、あわててもっと多量のメラニン色素をつくります
これが、シミとりレーザーやフォトフェイシャルで肝斑が悪化した、というときの機序です
おわかりのように、いま肝斑が目にみえてないからといって、メラノサイトが過敏な状態かどうかは、わたしたちにはわかりません
ですので、よけいな刺激は与えないにこしたことはないのです
トーニングで、低出力で、メラノサイトたちをおびやかさないように、すこしずつ色素をへらしていくのが、遠回りのようでじつは近道なのだと、実感しています
もうひとつ、
肝斑とシミはちがうの?
とよく聞かれますが、肝斑はシミのひとつの種類です
表皮にあるメラニン色素が濃くなった部位をシミといいますし、肝斑は、それが肝臓のかたちにみえることから病名がついたものです
ほかに、そばかすは雀卵斑と病名がついていますが、これも、すずめの卵のもように似ているからついたということです
わたしは、個人的には、すべてシミで統一していて、気にするのは形ではありません
シミの境界が明瞭かどうか、ほかの部位との色の差がどの程度か、面積や数からどのくらいメラニン色素が蓄積していそうか?というところに注目しています
そして、患者様がどの程度の改善をお望みなのか、治療ペースや期間、服薬可能か、ご予算は?などなどの要素で、治療方針をご相談します
メラニン色素はホコリのように日々つくられたまっていきますから、毎日のケアが大切なのです
トーニングは、お肌のもっているメラニン色素の総量をへらす治療です
レーザーで、メラニン色素を多く持った細胞を蒸発させます
そして、このあと詳しくご説明しますがトラネキサム酸というお薬を飲んでいただくことで、つくられるメラニンの量をへらすことができます
そうしますと、今日うまれた新しい細胞がいちばん表面にくるころには、すべての細胞が入れ替わっていますから、色素のうすい細胞ばかりになります
お肌の色味が均一に透明感が出て、シミはうすくなっているはずです
できてしまったメラニン色素を除去するのが、レーザーの役割
これからできるメラニン量をへらす役割をしてくれるのが、トラネキサム酸の内服治療です
トラネキサム酸は肝斑の治療薬としてよく処方されています
止血剤や抗炎症剤でもあります
日常の微細な炎症を抑えることで、メラノサイトへの刺激を減少し、そのはたらきを抑制するため、つくられる色素の量が減り、肝斑がうすくなるのだと、推測されます
図でいう、いちばん下の細胞がいちばん上にくるまで、
週1回の照射を10回前後くりかえすのが1クールの治療の目安です
つまり、約3ヶ月かかります
黒くて古い細胞をどんどん除去し、新しい細胞を白いまま上にあげる
簡単にいうと、これが美白治療です
わたしは、白くて明るいお肌が好きなので、
ずっと週1でレーザーあびてます
みなさまも、ぜひどうぞ
トーニング治療で毛穴も目立たなくなりますが、一時的な効果です
トーニング治療にいらした方で
毛穴が気になって、改善したくてうけてみたい
と、おっしゃる方が、わりといらっしゃいます
がっかりさせたくないので、前もってちゃんと申し上げますが、トーニングをうけると、皮膚にハリがでて、毛穴も目立たなくなりますが、一時的なもので、効果の持続も短いです
トーニングは、表皮をターゲットにした治療です
表皮のメラニン色素にレーザー光が吸収されて、熱が発生します
メラニン色素の量が多いほど、発生する熱量も大きいので、トーニング治療は初回から数回目までがお痛みも感じやすいです
このとき発生する熱で、表皮と真皮のさかいめあたりのあたりのコラーゲンが収縮します
このため、照射直後から、ハリがでて毛穴が目立たなくなったようにみえます
コラーゲンもたんぱく質ですから、熱で収縮するのです
けれど、このときの熱量は、たんぱく質が変性をおこすほどのものではありません
しかも、非常に浅い層、毛穴の開口部付近でだけおこる収縮です
ごらんのように、毛穴の深さは、5㎜ほどあるのですが、表皮の厚みは0.2㎜のうすさです
表皮に接している、真皮の浅い層にあるコラーゲンが収縮し、またもとにもどります
ヘアアイロンで、朝まいた髪が、夕方にはもどる、みたいなイメージです
なので、毛穴を目立たなくしたいときは、トーニングではなく別な治療が向いています
それについては、また次回にいたしますね
よろしくおねがいいたします
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CLINIC EMMA the ginza (クリニックエマザギンザ)
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美容皮膚科・美容形成外科
院長 田宮エリー
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