記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

②「思春期・青年期の友達関係による心の成長を観る」、2022年秋アニメ Do It Yourself!! ーどぅー・いっと・ゆあせるふ‼

日陰 匠 (ひかげ たくみ)

眼鏡をかけ長い髪が束ねられているが派手さがなく、後れ毛もあいまって外見から誠実であり、おしゃれより清潔感を大切にする素朴な雰囲気を感じられます。

画像引用元:https://diy-anime.com

本の世界から現実世界の友達作り。


現実世界で実現しなかった友達作り

 匠が小学校・中学校と前思春期を通して特にいじめられた様子もないが一人で過ごしてきた経緯が2話の終わりに明かされます。それは「誰かに誘われることも、何か頼まれることも、誰かと一緒なんて」なかったと言う回想場面でした。本の中の世界の様に素敵な友達関係に憧れながらも自分から話しかけたり積極的に人の輪に入る事もできなかったと考えると、匠の最初の一歩は現実世界で友達関係を作る事と言えます。

友達がいなかったのは不適応な人格だからか

 その後の話で匠がコミュニケーションで深刻な問題を起こすこともありませんでした。むしろ6人の少女たちの中で一番人の気持ちを察し、やさしく思いやりをもって接しています。
 しかし自分の意見をしっかりと伝える時もあり、とりわけ印象に残るのは、部長のクッキーの感想を伝えた時のように自分の意見を角が立たない様に伝えるアサーティブなスキルでしょう。
 友達が作れなかった原因は深刻な不適応ではなく内向的な性格から現実場面での経験不足のために自信がなかった為でしょう。

現実世界の友人にあこがれがないのか

 2話の冒頭で本を読んでいても周りの仲良しグループの他愛ない会話が気になって足を止めて聞いている様子から興味がある事がわかります。そして、その会話を聞いた後にせるふに同じ事を問いかけていることからあこがれていた他愛の無い会話ができる友達の存在が出来た事がむしろ嬉しかったのでしょう。

彼女に取って本の存在は

 匠が友人持つことを経験しなくても適応的に人と接することができたのかが疑問になる所です。
 2話の回想シーンでずっと友達がいなくて本を読んでいた匠です。本の中での体験として起きた事を考えてみました、例えば部活動を通して友情を描いた現在の愛読書「ひまわりの少女たち」のような友情や愛情などが題材の本などを前思春期にも読む事によって登場人物に同一化したり、または大切な友達として心の中で交流したりする事によって「チャムシップの関係」が体験され健全な友達関係を結ぶことができたのでしょう。(参考)

匠が踏み出した最初の一歩

 2話の終盤でせるふと礼と匠が3人で帰路につく、そして別れ際に匠が任せられていたDIY部の看板作りが終わった時に憧れていた「ひまわりの少女たち」のような3人の関係や作る楽しさも終わりと感じて寂しくて、勇気を出して「入部します」と伝えました。礼もせるふも入部していると思っていたので空振りしてしまったと言うオチですが、入部が認められ嬉しくなり「また13時間後に」と明日が待ち遠しく思いながら別れます。この、何気ない場面から匠の大切な「最初一歩」でした。
 匠は自分が他人に受容された実感を得て、部活動でも積極的に意見を伝えられる様になったのではないでしょうか。

自分で踏み出せるか、成否は13時間のタイムリミットだった。


 2話の最後の場面は、昔から人に声かけてもらう事も無く、まして自分から誰かに声を掛けて友達を作ることも無かった匠が現実で初めて自分で入部の意思を伝えて自分で居場所を作ったと言う大切な一歩を2人の後ろ姿を見送りながら「どぅー・いっと・ゆあせるふ」とつぶやいて達成感を噛み締めるような様子でした。
 もし、看板が完成した日の別れ際に入部の意思を伝えなかったらどうなっていたでしょうか。
 2話の終盤で思い切って「入部します」と匠が言ったときに礼も、せるふも「え?入部?してるでしょう?」と言う様な反応でした。もし、そのまま入部を伝えないで次の日になって匠がせるふとの会話や、部の連絡などから「匠は部員」という礼とせるふの間にある共通認識を匠が知ります。そうなれば自主的に入部の意思表示をする必要が無くなってしまい、「自分から仲間に入る」と言う体験は早ければ13時間後に失っていたかも知れません。


参考
ライター:青柳直子、須藤 春佳(2022)「RESEARCH研究がおもしろい思春期の子どもの心を育む"チャムシップ"とイマドキ親子の関係とは.神戸女学院大学 https://wakaomo.kobe-c.ac.jp  (参照 2023年12月19日現在).


この記事が参加している募集

アニメ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?