前回
念力ゾウオと念力ヅメガの敗北を見届けた後、ゲジョーは小惑星に帰還した。
そして理不尽にも念力ゾウオに負わされた傷をマダムに治療されながら、考えていた。念力ゾウオに襲われた自分に寄り添った光里に、マダムに似た雰囲気を感じたことについて。
(あいつがマダムと同じくらい慈悲深いとでも言うのか? 邪悪な地球人がか!?)
ゲジョーは過去の記憶を掘り起こし、地球人について考え始めていた。
去年の地球で調査を振り返っていたゲジョーは、少しずつ表情が険しくなっていた。それこそ、彼女を治療するマダムに心配される程度には。
「何か悩んでおるのか? 念力ゾウオに攻撃されたことではないな」
マダムはゲジョーの心中を的確に察していた。取り繕っても仕方ないので、ゲジョーは素直に話した。
「はい。……念力ゾウオに攻撃された時、緑の戦士に介抱されました。その時の緑の戦士が、まるでマダムのように思えまして……。以前、スケイリー将軍が戦闘中に “ 緑の戦士がマダムに似ている ” と仰いましたが、今の私も同じことを思っています」
包み隠さず、自分の胸中を語ったゲジョー。マダムはそれをしっかり聞き、悩むように首を傾げた。
「しかし腑に落ちません。悪しき地球人とマダムが似ているなど」
ゲジョーが地球人、というか地球人の築いた社会に抱いた悪印象は深い。
マダムはゲジョーの困惑を受けて少し唸り声を上げたが、すぐに考えがまとまったようだ。
「まあな。妾も、其方の報告を聞き、地球を救済するべきだと感じた。しかし全ての地球人の全ての面が邪悪、ではないのだろう。誰しも、優しい面と醜い面を持ち併せている。其方はこの度、たまたま緑の戦士の優しい面を目の当たりにした。おそらく、そういう話だろう」
まずマダムは一般論を語った。ゲジョーはマダムを見上げて、一言一言に深く頷く。
そして、マダムは続けた。
「だが、緑の戦士がマ・カ・リヨモに仕えていることは事実。ザイガの話では、マ・カ・リヨモはジュエランドの悪王、マ・スラオンの悪しき思想に染まり、腐った考え方しかできんとのことだ。そのような者に仕えている時点で、緑の戦士は断じて善人ではあり得ん。少しばかり良い面が見えたからとて、惑わされるな」
あくまでも、彼女は悪。マダムはそれを強調した。
ゲジョーはその話を一言一句確かに受け止め、しっかりと己の脳裏に刻んだ。
「畏まりました。絶対に惑わされません。奴は、悪しき者に仕える我らが敵。虐げられる者たちを救うという私たちの目的を忘れず、任務に専念します」
マダムの顔を見上げて、ゲジョーは力強く言った。その熱い視線をマダムは確かに受け止め、頷きながらゲジョーの頭をそっと撫でた。
ゲジョーの顔は綻んだ。
(この温かさこそが本当の愛。私はそれを知っている。絶対に惑わされない!!)
心の中で、ゲジョーは何度もそう叫んだのだった。
次回へ続く!