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「あんた、幽霊みたい」と言われた男は挫折から何を学ぶか

 僕は小、中、高、大学時代とよくテレビドラマを見ていました。
 特に、フジテレビのドラマは食い入るように見ており、僕の青春を彩っていたと言っても過言ではありません。
 最近、福山雅治さん主演の『沈黙のパレード』を観に行ったことから、FODに登録し、フジテレビのドラマを見返すようになりました。
 青春時代に見ていたドラマを見返すと、懐かしさを感じると共に、子供時代には気づかなかった、新しい発見があります。


見逃して泣いた『さよなら小津先生』 

『さよなら小津先生』というドラマは、中学生のときに見ていたドラマですが、今でも記憶に残っているほど、気に入っている作品でした。
 今、見返すと、田村正和演じる、主人公の小津先生は、エリート銀行員から賄賂による逮捕で人生に転落し、出所するも家庭は崩壊し、再就職も難しく、腰掛けで私立高の先生になるという、一人の男を徹底的に痛めつけた、なんともヘビーな設定であったことに驚かされました(子供時代の僕は、ストーリーのみ追いかけて、ただただノンキに見ていたものです)。
 
 その小津先生が、高校で政治経済を教えながら、教員として、バスケ部のコーチとして、子供たちから大切なものを教わっていくという、小津先生と子供たちの成長物語です。
 
 視点の違いによって、同じものでもモノの見え方は変わるとはよく言われますが、私が今、教員ではないですが、子供たちと接している塾の先生として見ると、本当に多くのことに気づかされます。
 
 先程、ただただノンキに見ていたと書きましたが、それでも子供なりに、この作品から感じ取るものは大きいものでした。
 これは余談ですが、1話分リアルタイムで見ることができなかった回があり、録画をしてみようと思っていたのですが、なにかの手違いで録画されていなかったことがあり、とても悲しい想いをしたのを覚えています。それぐらい、当時の自分にとって、思い入れの深い作品でした。

「あんた、幽霊みたいだ 」というセリフ

 小津先生は最初、生徒に対して、きつく指導します。この高校は問題児が多く集まり、授業の体を成しておらず、生徒たちは好き勝手なことをやっています。
 しかし、きつく指導を受けた生徒は反発し、両者の溝は深まっていくばかりです。
 その中で、一人の生徒から「あんた、幽霊みたいだ」と言われます。
 これは実は、出所後、家に戻った小津先生が、高校生の娘に言われた一言と全く同じセリフでした。
 仕事に熱中し、家族を顧みず、さらには収監されて、それでも銀行員として、自分のキャリアを取り戻そうとしていた父親に、娘は「あんた、幽霊みたい」というセリフを吐いたのです。
 
 その言葉を自分の勤める学校の生徒からも言われた小津先生は、自分の存在について、真剣に考え始めます。
 ここからが、小津先生の人生のリスタートが始まります。

小津先生が考えたものはなにか?

 小津先生は、なぜ自分が幽霊みたいに見えるのか。
 その答えを見つけるために、真剣に生徒にぶつかるようになります。

 そして、一つのことに気づきます。

 自分は自分のことしか考えていなかった。
 自分のやりたいことしかやらず、他人のためにはなにもしてこなかった。
 自分のことだけ考え、他人については全く考えてこなかった自分は、他人からしたら、いないも同然の幽霊みたいな存在だったのだと。

 
 これは、私が塾の先生になってから考えている、アドラーが提唱した共同体感覚に通ずるものがあると思いました。
 
 人は共同体のために生きるのが大切で、それが人生の生きる意味であるのだと。
 
 それに気づいた小津先生は、バラバラだった男子バスケ部をまとめ上げ、彼らを鍛え、そして、彼らに大切なことを教えていきます。
 
 小津先生と生徒たちは、大切なものを教え合い、共に成長する関係へと変わっていきます。
 
 また、それは同校にいる、他の先生にも影響していきます。
(ここの学校は、先生もなにかしらの問題を抱えており、ゆがんだ考え方を持った人が集まっています。その先生たちも、自分の中にある問題と和解していき、自分を取り戻していきます)
 
 他人のためになにかをする、ひいては共同体のためになにかをする、それが共同体を成長させ、そして、自分を成長させていく。
 
 自分が考えていたことをまさに表しているドラマだということに気づきました。

 組織や時間という共同体を大切にする

 中学生の少年が見ていたドラマが、今の自分へとこうして繋がっている。
 
 アドラーは共同体とは、組織だけでなく、過去、現在、未来という時間にも当てはまるということを言っています。
 
 このドラマはそうした意味で、共同体感覚を感じさせてくれる、すごく大事な示唆に溢れたドラマです。
 
 あの頃、見逃して泣いていた自分に
「今こうして見返すことができて、そして、あのときより深く、自分の中に届いているよ」
 そう声をかけたい、そういう気持ちになりました。
 
 度々余談ですが、森山未來さんや永山瑛太さん、水川あさみさんなど、今をときめく俳優の新人時代を見ることができるのも、このドラマの面白いところです。
 
 ぜひ皆さんも興味があったら、見てみて下さい。

#最近の学び

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