星の出ているうちに帰っておいで*覚醒*he said epi51
高揚感と不安が交じり合う。
カコは俺の事が好きだという絶対的な感情と、もしかしたら俺以外の幸せをつかんでいるかもしれないという妄想。
軍配は妄想が勝つことが多い。でも、どっちにしろカコが幸せなら良いことなんだと思うことにしていた。
それでも、なかなかカコに会うための一歩の決心がつかない。早く会いたいのに!それでも怖いと言う感情はなんなんだろう。
そんな時に、ふとネットでツインレイの記事を探していると、ある言葉に行きついた。
「星の出ているうちに帰っておいで」
この言葉は…。俺が離婚の相談をしに帰ってきた時、アルツハイマーの父親が言った、何の脈略もない言葉だった。でも、なぜか俺の意識の片隅に残っていて気になっていた。響きも素敵で、なんかほっとするような気もしないでもない。
何となくしか感じていなかった言葉に導かれるように俺は、その記事を読んでみた。
ツインレイの二人の物語。
女性の目線で、ツインレイ男性に対しての出逢いから統合までが書き綴られたエッセイのような小説のような…。不思議な文体で書いてある物語。
怒りも執着もみじめさも、全てがそのままに綴られていて切ない愛のカタチ…。不器用な二人が俺たちに似ていた。
日曜日。一人身になって自由気ままにぶらぶらとあてもなく車でドライブする。これまでは、何かないと家から出ていなかったが気持ちがいいもんだ。今日は、何となく美術館に行きたくなって、この辺で唯一の美術館に来てみた。
(絵なんて、久しぶりだな)
地方の美術館なんて、そんな有名な画家の絵があるわけではない。
でも、静寂な空気と整えられた景観。一つひとつ目を通しながら、頭の中はクリアになっていく。
ひときわ大きな青い絵画。その前にカコがいた。
一人でたたずむその姿。そこだけ光って見えていた。目が釘付けになる。
ゆっくりと隣に立つ。カコが顔を向けた。
そして、微笑む。
「おかえり」カコが優しく俺を見た。
「ただいま」俺は当たり前に答える。
まるで今の今まで一緒にいた二人のように、俺たちは手を繋いで続けて絵画を見て回った。絵画の感想を言い合いながら、いつも通りの空気でいつものように飾らない言葉で…。これまでのことなんて今話すことではない。数年ぶりに会ったのに、そんな時間はどこにもなかった。
秋晴れの暖かい日だった。美術館の前は、綺麗な公園になっていた。銀杏の木には、黄色く色づいた葉が風に揺れている。
俺はコーヒーを買いに行くついでに、車のダッシュボードに入れてあった指輪をポケットの中に入れた。
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