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「読書酒紀」 4回目 放送後記

※番組が終わるたびに、パーソナリティが番組の感想を語り、番組中に取り上げた本のリンクと紹介をしていきます。

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「読書酒紀」第4回の放送後記です。パーソナリティの野中です。
「手紙」というテーマで本の紹介をさせてもらいました。いやー、手紙って良いですよね(圧)ww。番組ないでは、好きすぎてちょっとテンションを上げ過ぎてしまいました💦
番組でも紹介しましたが、SNSにみんなが慣れきってしまっている昨今、手紙というメディアがどう考えても時代錯誤なものになってしまっている感は否めないでしょう。それでも、手紙に付随する情緒や文学性といった言葉に対する敏感さは、生きていくうえで大切なテーマであるとも思います。大切な人に、時折送る手紙。そういう非日常もたまには良いのかもしれないと思います。

今回紹介した3冊の本

・『ボヴァリー夫人の手紙』、フロベール、訳  工藤 庸子
 
一言で言うとディープな本です。フロベール研究の専門家が手にとるような専門書と言っても過言ではないと思います。けれど、この中でフロベールが展開している熱量も情緒もほとばしっている手紙に、何も感じない人はいないでしょう。途中で展開されているフロベールの芳醇な文学論も、訳者の工藤さんの愛に溢れる脚注も必見です。『ボヴァリー夫人』について、未読で、知識が全くなくとも、問題なく読めるので、ぜひ手にとって欲しい一冊です。

・『辺境の思想 日本と香港から考える』、福嶋 亮大・張 彧暋
 この本の魅力については、自分がどうこう書くより、以下の福嶋氏の引用で基本的な部分は伝わると思います。下記の文章を読んでピンと来た皆さん、ぜひ買って読んでみてください。

日本では往復書簡はメジャーな出版形態ではありません。しかし、対談よりもじっくりと時間を使って相手の言葉を咀嚼しながら、思考を練り直せるという利点があります。残念ながら、昨今の日本の出版会はインスタントな対談本を乱発しがちです。だからこそ、地理的制約を超え、時間を費やしてお互いの思考に働きかけながら、「私」と「我々」を再創造していくーー、そのようなセッションこそが真に生産的なコミュニケーションだという前提を改めて共有すべきでしょう。本書は往復書簡のもつ時間性を実り豊かなものとして差し出したいのです。

『辺境の思想』、2018年、文藝春秋、17頁より

・『十頁だけ読んでごらんなさい。十頁たって飽いたらこの本を捨てて下さって宜しい。』、遠藤周作
 
遠藤の本には、故里庵先生シリーズというものがあり、優しい言葉遣いで深い人生論を語っているのでおすすめです。この本もそのシリーズに似たものがありますが、読みやすい平易な言葉のなかに、手紙について悩み抜いた遠藤の背中をぼんやりと感じることができる書物です。まずは騙されたと思って10頁読むことをお勧めします。

『読書酒紀』番組URL
https://open.spotify.com/show/36X5GlyHQcAavgvrcUvIf2

お便りフォーム(いただいたお便りは必ず番組で紹介します)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf5FXfc1gEew5YN27tg3rdPEa-AZgViEM0khg_QiHzSCQukVw/viewform

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