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#電車

波の鰭

波の鰭

 十月も半ばを過ぎていた。〈4分ほどお待ちください〉とアナウンスが流れ、彼は窓の向こうに目をやった。電車は成午海岸で停車していた。そこには人気のない風景が広がっていて、伸び放題の草木に、トタン張りの小屋みたいなたばこ屋、その奥に見える竹林には霧が立ち込めていた。朝の五時、外はまだ夜と朝の混じるせいで青白い。
 霧の中に向かって女の子がひとり、歩いて行くのが見えた。形のいいショートヘアに黒のレザージ

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